8ー12
「……試合が終わったあとのサポートですよ。選手の控え室案内の為、私はここで待機を。それよりも教団所属の方がどうしてここに?」
ーー裏切ったか、金の亡者。
まあいい、もとより杜撰な計画ではあった。
それに目的を遂げられることに変わりはない。
「下手な誤魔化しはいい。質問を変えよう。お前の名前は?」
「随分と高圧的だ。教団関係者に名前を明かす義務が?」
「ある。私はあそこにいる少年の警護を任されている身だ。こうした見回りもギルドの許可を得ている。それで、さっさと答えろ。お前は誰だ?」
「……モーガン・レイエル。シルバから派遣されたギルド、」
「モーガン・レイエルは確かにいる。但し彼の年齢は四十歳だ。随分と若返りしているな?」
「…………」
「ここにいるギルド職員の顔と名前は全て把握している。私の記憶にお前の容貌と一致する人物はいない」
訪れる沈黙。
下手な演技は無理かと男は諦め、声色を普段通りに戻す。
「どうやってマネー・マネーを懐柔した?」
自白を前にしてアイザックに動揺はない。
確信を得てここにいることは明白だった。
「奴にはお前が来る前に手紙を送っている」
「手紙?」
「もし協力を求められたら、その提案額の倍を支払うと」
アイザックの言葉に納得した男は「成程」と返す。
教団が保有している金が動いている等の情報は得ていない。おそらくこれは奴の独断だ。
「結構な額を支払ったつもりだったが、隊長一人の判断で教団の財を好き勝手するとは中々に横暴だな」
「何を言っている?」
心底蔑むような目。
「奴に支払ったのは私財だ。何も問題はない」
イカれた返事に男は思わず笑ってしまう。
アイザックは教団の為にではなく、エディ・ウォーカーの為に動いている。それが男には到底理解できない。吐き気を催すほどに気持ちが悪くて仕方なかった。
「お前の疑問には答えた。名前はーーいや、もうどうでもいい。私が本当に聞きたいことは一つだけだ」
青筋を立てながらも口調は冷静さを努めている。
「エディを殺したのはお前か?」
言葉に纏わりつく殺意。
どんな返事をしたところで結末に変わりがないのなら、本心で接しようと男は口を開いた。
「ようやく辿り着いた訳だ。おめでとう、アイザック」
無意味なことに時間を費やす。
その愚かさに、心からの拍手を。
「次はもう少し腕の立つものを部下にするといい」
静寂の後に、怒号。
アイザック・ギガンテスは叫ぶ。
部下の仇を討つために、憎き罪人へと魔力を解き放つ。
それを受けて男もまた、アイザックと同じ魔術を選択した。
「解錠ッ!!」
「解錠」




