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日々が、瞬く間に過ぎ去ってゆく。
時間の流れは、私の手のひらに収まったかと思えば、わずかな隙間から簡単に抜け出してしまう。それは、ひとりでいるよりも誰かといることで引き起こされることが圧倒的に多かった。時間が流れる間隔を呼吸で測っている時と、私の隣で呼吸を刻むみんながいる時を比べてみると、違いは瞭然だった。どんなに気を張り、過ぎ去るものを掴もうとしても、結果は変わらなかった。
それに対して『パパの日』だけは、まるで永遠とも称するほどに時の流れがぐんと遅くなる。その行為が終わり、自室に戻ってきたとしても、みんなに会うその時まで、流れはゆっくりのまま、元には戻らない。
時間とはどうやら、不平等なものであるらしい。
この不平等さが逆だったらいいのに、と思う。『パパの日』はすぐに終わり、みんなと話をする時間が永遠に続く。そんなふうになってほしい。そうすれば、何も言うことはないのに——。
ベッドから起き上がる。首筋がズキズキとする。太ももが握られているような感触がする。鏡の前に立つと、頬に切り傷があった。細く赤い糸が横に一本伸びている。そこに触ると、鋭い痛みが走った。指先には赤い血が付いていた。その色はもしかしたら、造花の赤いバラと同じではないかとひらめき、窓辺に駆け寄ってバラに指を伸ばした。比べてみると、わずかに血の方が濃い色をしていた。私は指先をバラの花びらに擦り付けた。太い赤線が花びらににじんだ。何度も擦り付けているうちに、バラと血はひとつに溶け合っていった。頬の痛みはまだするが、その頃にはもう気にならなくなっていた。
昼食を済ませてから食器を洗い、歯を磨き、トイレを済ませ、手を洗い、絵本を読むことにした。三人の黒い男たちが町中の子どもたちをさらうという、不気味な表紙をした絵本だ。
食後の眠気とともに本を読みながら、私は先日ムウと世界を作った際に「塔」を三つ建てればよかったな、と思った。あの羊飼いの生活に足りなかったのは「他人への慈愛」だったのかもしれない。今度は人々が暮らす大きな街をムウと造ろう、と思う。
私は毛布を背中に纏い、頭に赤い表紙の絵本を開いてかぶった。そのまま、もう一度この絵本を読むことにした。
もし彼らが実在していたら、彼らは私たちをさらいに来るだろうか。
それとも、さらいに来ることなく、私たちはこのままなのだろうか?




