58・ボス戦突入です
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真っ先に飛び出し、押し寄せる『小鬼』の群れに飛び込みながら、この場に居るメンバーへと、若干無理やりながらも指示を出して行く。
「べリスのおっちゃんは、タツとレオと一緒に前衛で斬り込んで!
アストさんとウェパルさんは魔法火力で範囲攻撃!くれぐれも、味方は巻き込まない様にお願いします!
レライエさんはお二人の護衛を!一体も通さない様にお願いしますよ!ついでに、前衛の援護が出来そうだったらそっちもお願いしますね!!
カーラとリンドヴルムは遊撃で!何体かヤバめな奴らも混ざっているから、くれぐれも気を付けるんだぞ!!」
そう指示を出しつつ、取り敢えず他の面子が動き出すまで戦線を維持する為に暴れる俺の横を、まず二人がすり抜ける。
「……了解した」
「タカも~、頑張ってね~?」
そう返事をしながら、俺の指示を実行に移そうとして斬り込んだのは、言わずと知れたタツとレオ。
まぁ、こいつらならば、下手な指示なんて出さなくても、自分達が何をしなきゃ不味いのか、なんて事は自分達で判断して勝手に行動するのだが、こうしてある程度指示出ししておけば、この後の行動も予想し易くなるので、一応出しておいた訳だ。
「結局、お前が指示出しするんだったら、最初っからお前がリーダーやりゃ良かったじゃあねぇか!」
そんなことを言いながらも、俺の指示が正しいと理解しているからか、渋々と言った体で在りながらも何だかんだで従ってくれているべリスとおっちゃんが、前線へと飛び込んで来た勢いのままに、手近にいた『小鬼』を、その手に持っている盾を鈍器として使用するシールドバッシュによって、何体か纏めて吹き飛ばす。
「……!」
『妾を誰じゃと思っておる!それは無用な心配と言う奴じゃよ!何なら、あそこのデカブツの首でも獲って来ようかのぅ?』
了承の合図の様に一鳴きしながら移動を開始したカーラと、半ばふざけた様な事を口にしながらも、俺からの指示にはきちんと従ってくれているリンドヴルムが、主に『将軍クラス』の奴らを狙って上空から奇襲を仕掛け始める。
まぁ、リンドヴルムであれば、現在の状態でも『総帥クラス』程度ならば、どうにでも出来るのだろうから特には心配していないが、それでもあのデカブツ相手はちとキツそうなので、やっぱり強襲と撹乱に専念してもらえると有難いのだけれどもね?
俺の指示に従って一緒に前に出てきてくれた三人と共に、極力戦場をかき回す様に行動し、俺達へと意識を集中させるべく、暫し前線で暴れていると、後方から待っていた声が漸く掛けられる。
「タカナシ殿!準備出来ましたので、一旦引いてください!」
「私の方も用意出来たわ!あなたも早くこっちへ!」
「援護するから、後ろは気にしないで良いよ!」
その声に従って、一緒に戦っていた三人と同時に反転し、先程まで休憩していた辺りを目指して走り出すと、いきなり背を向けた俺達へと直前まで戦っていた『小鬼』共が襲い掛かって来るが、先程の言葉と通りに、俺達を援護する目的で飛来した矢によって次々に射抜かれ、一撃では絶命まではしないながらも確実にその次足を止めさせられて行く。
流石はレライエさん、ナイスショットです。
そうやって援護を貰いながら後退するついでに、カーラとリンドヴルムにも後退するように合図を送っておく。空にいれば大丈夫だとは思うが、一応念のために一旦下がらせておく。
そして、俺達四人と二頭がある程度まで下がれた処で、女性陣二人にお願いしていた範囲攻撃が完成し、逃げる俺達を追ってきていた『小鬼』共の処へと炸裂する。
「これでも喰らいなさい!『ダイダルウェイブ』!!!」
「タカナシ殿が肯定して下さったこの力、存分に味わうが良い!『スポイルレイン!!!』」
『小鬼』共の左右から大質量の水壁が立ち上がる。
中央部に当たる場所に居た俺達には当たらない様に計算されていたのか、その壁が崩壊して発生した波頭では、俺達は巻き込まれる処か飛沫によって濡れる事すら無いままに、ただ『小鬼』共だけがその濁流に呑み込まれ、押し流されて行く。
当然、その広範囲かつ大質量による攻撃でも、効果範囲の中に居なかったり、ギリギリの処で回避されてしまったりすれば、必然的に討ち漏らしが出てきてしまう他、ボスと思われる個体や、まだ俺達が倒していなかった『総帥クラス』の上位種と言った戦闘力の高い個体の殆どと、それ以外の約半分程が未だに健在であった。
そして、それらの内、奇跡的に割合と俺達に接近していたにも関わらず、生き残っていた連中が、見目麗しき女性である事も含めて『優先的に攻撃するべき対象である』と判断し、アストさんとウェパルさんへと襲い掛かろうとしたのだが、そんな生き残りの連中へと、黒みを帯びた自然ではあり得ない緑色をした『雨』が、周辺へと唐突に降り注ぐ。
そんな、今の今まで目にする事の無かった現象に『小鬼』共も戸惑いの表情を浮かべるが、自身や仲間がその雨に触れても『平気そう』にしている様子を見て、ただの虚仮脅しだったのだろう、と判断して、それまでと変わらずに俺達を攻撃しようと、こちらへと駆け出そうとする。
そして、その『雨』に濡れたモノ全員が、不自然に足を滑らせてその場で転んでしまう。
何事か!と視線を足元へと向けてみると、そこには
腐れ崩れて肉が溶け落ち、その下から覗いている骨すらも砕けつつある脛から下と、徐々にその状態が腿へ腰へと広がって行く様であった。
その状態に怯えて転げ回り、遅れて来た激痛によって半ば発狂しながらのたうち回る、と言った光景と、それに付随した叫び声等が暫く響いていたが、降り出した時と同じ様に唐突に雨が止んだ時には、既にソコには『小鬼』共は残っておらず、ただ魔核だけが鈍い光と共に残されていただけであった。
それを目の当たりにした俺達三人は呆然とした表情を浮かべるが、そんなことはお構い無し!とでも言いたげな雰囲気を纏いながら、どうです?凄いでしょう!?とでも言いたげな視線を俺へと向けてくるアストさん。
半ば反射でサムズアップを行い、視線でも『ありがとうございます』と伝えておいたが、内心では流石にやり過ぎとちゃうかな?何て思いつつも、それでも上位種のみで構成され、下手をしなくても一国が更地にされたであろう戦力の内、既に全体の2/3程度を削る事に成功しており、ほぼ後一歩の処まで来ていると言っても良いだろう。
……但し、敵方はまだ主力となる『総帥クラス』が殆ど残っている上に、トップであり、恐らくは敵陣営で最強の戦力であろう『大公クラス』であると思われる個体も今だ健在であるのに比べ、こちらは人数は減ってはいないモノの、先程の様な大技は、アストさんはともかくとしても、ウェパルさんはもう撃てなさそうだし、レライエさんも既に矢が尽きたらしく、こちら側の戦力バランスで見ると、著しく後衛力が衰えている形となってしまう為、些か不利な状況であると言っても良いだろう。
唯一の救いは、敵陣営の数自体は、これまでの奮戦によってかなり削る事に成功しているため、最初期に心配されていた『群れの分裂』は気にしなくても良さそうな点であろう。
そんなことを脳裏で考えていると、どうやら似たような事を考えていたらしきべリスのおっちゃんが俺へと声を掛けてくる。
「……状況は不利、だが撤退等は出来そうにない。そんな状態でも、そうやって落ち着いてるってことは、何かしらの手は考え付いてんだろう?なら、さっさと指示出ししねぇと敵さんが動き出すぞ?」
「なら、基本的にさっきの陣形で、レライエさんとおっちゃんを入れ換えるだけで、『俺以外』そのままで。基本方針も、出来るだけ数倒す方向で考えて下さいな」
「んじゃ、お前はどうすんだ?まさか、一人だけ逃げようってんじゃ無いだろうな?」
そんなことを半ばふざけながら聞いてくるおっちゃんに対して、鎧の上から軽く肩パンしてやりつつ、『小鬼』共の中心でまだ悠然と構えているデカブツを、まだ脇に構えたままだった相棒で指しながらおっちゃんへと返事をしておく。
「俺はあのデカブツと、楽しい愉しい殺し合いでもしてくるさ。もっとも、あいつは最初から俺をご指名だったみたいだけどね」
そう言いながら、何処か呆れた様な表情を浮かべるおっちゃんから視線をずらし、『小鬼』共の居る方へと向けると、軽く100mは離れているハズなのに、何故か俺とデカブツの視線が絡み合った様に感じられたのであった。
******
「よぉ、待たせたか?」
周囲でタツやレオ、アストさんやカーラにリンドヴルム、それとべリスのおっちゃん達と言った仲間が『小鬼』と戦闘している音を聞きながら、唯一最初に号令らしきモノを掛けてから動いていなかったデカブツへと一人で歩み寄り、声を掛けてみる。
もっとも、最初から返事を期待しての行動ではなく、何となくやってみた、程度のものでしか無いけれど。
……だが、そんな俺からの声掛けに反応したのか、それとも『お目当て』だった俺が漸く目の前に来たからかは不明だが、それまで右手で持っていただけだった槍斧の石突き部分で地面を一突きすると、自身の身長を越える程の長さを誇る柄の中程を両手で握り、明らかに武術的意味合いを孕んだ構えを取ってくる。
それを見ただけで、背筋をゾクゾクとした悪寒が走り、肌が粟立つ様な感覚を覚えさせられる。
その全身を覆う鎧は、一目見ただけでこの世界特有のモノであろう事を容易に予測させる様に、何やら意味有り気な紋様が全身に施され、淡い光を放っているのが見てとれる。
それと同時に、その手に持っている得物たる槍斧も、並々ならぬ逸品であろう事は、タツの様に鑑定系の『技能』を持ち合わせていなかったとしても、容易に理解することが出来るだろう。
そして、その堂々たる構えからは、目の前の敵が『武の高み』に於いて、俺達と同じかそれ以上の地点に在ると言う事が、否応なしに理解させられる。
あの時、絶対的な超生物として相対したリンドヴルムとは異なる、自身の能力を限界まで高め、それを一切の無駄無く運用出来うる戦闘技術を修めた、言わば俺達の先に在るモノを前にして、今回は流石に死ぬかも知れない、と言う絶望感と、そんな『高み』に在るモノと戦える、と言う高揚感から、思わず凄絶な笑みが顔面に貼り付けられる。
そして、この場に居る中で一番強いと感じたからか、それとも俺達の纏め役だと見抜かれていたからかは不明だが、とにかく最初から俺を対戦相手として指名していた節のあった『小鬼』共のボスたる眼前の化物は、そんな笑みを浮かべた俺を見て、嬉しそうに楽しそうに俺と同じ様な笑みをその顔に浮かべるのであった。
そんな俺達は何か合図があった訳でも無いのに、まるで示し合わせたかの様に同時に動き出す。
互いに長柄の得物を使ってはいたものの、それを加味しても些か開き気味であった距離を詰めるべく互いに踏み込んで行く。
そして、互いに相手の間合いに入るかどうか、と言った距離まで近付いた時、『練気』によって生成した『気』を足に回して脚力を強化し、相手の目を誤魔化す為についでに『縮地』も併用して一気に間合いへと踏み入り、半ば強引に初撃をもぎ取りに行く。
牽制の意味合いも強いが、それでも命中すればそれだけで落命しかねないだけの威力を込めた一撃に、驚愕したように目を見開いたボスだったが、それでも冷静さを失う事の無いままに、俺からの一撃を受け止めるべく得物を差し向けてくる。
俺の突き上げる様なやや上向きな突きに対して、左手を柄から離し、右腕全体と脇の絞めつけによって間合いを広く保ちながら槍斧を操作し、槍の穂先の下に付いている斧刃が下に、スパイクが上に来る形で、互いの得物が交差する様に受け止めるボス。
そして、その次の瞬間には、交差していたハズの相棒が地面に向けて押し下げられ、それと同時に下を向いていたハズの斧刃が、俺の命を刈り取ろうと、俺の首へと迫り来る。
瞬間的に感じた極大の悪寒に従い、咄嗟に回避を試みた結果として、どうにか首は無事に俺の胴体と繋がったままで居ることが出来ているが、それも反射で行った左腕によるパリィと、装甲による受け流しのお陰である事は、まず間違いないだろう。
もっとも、その受け流しにしても、完全には決められなかったらしく、流血こそはしていない様だけど、それでも鈍い痛みを放つ程度のダメージは貰ってしまっている。
そんな強烈な一撃を貰い掛けた為に、一旦ボスの間合いから逃れる為に、殆ど全力でバックステップを行い、強制的に距離を離す。
……恐らくは、得物が交差していた時に、斧刃の反対側に付いていたスパイクで僅かに俺の相棒を引っ掛け、手首の返しで上下を入れ換えた後、一旦下に押し下げてから振り上げる形で俺の首を狙いに来ていたのだろうと予測は出来るが、実際に見えていた訳ではないので合っているかどうかは不明だけど。
そんなことを考えながら、一瞬でも濃厚に『死』を意識させられた為、精神的に披露に襲われていた俺へと追撃を仕掛けるでもなく、ただ立ち尽くしていたボスだったが、その表情には油断や隙、傲りや愉悦と言った色は既に無く、こちらの一挙手一倒足を最大限に警戒する真剣な表情のみが浮かべられている。
まぁ、それも当然と言えば当然の話なのだろう。
何せ、やや初撃の速度には面喰らう形となったものの、自身の放った必殺の一撃を直前でとは言え回避して見せた上に、こうして『反撃』までして来たのだから、警戒して当然と言うモノであろう。
だが、それと同時に勝てる相手である、と。
自身に届きうる刃では無い、とも思っていると、その瞳が雄弁に語っている。
そんなことを考えながら、自身の頬に付けられた一筋を裂傷から滴る血液を、俺から視線をずらすこと無く舐め取っているボスを眺め、やはり使い処はここしか有るまい、と覚悟を決める。
そうして、見た目の変化によって判断出来ない『練気』の特性を利用し、全身への強化を秘密利に施した俺は、先程と同じ様に、されども確実に上回る速度にてボスの間合いへと踏み込み、相棒に致命の威力を乗せた状態で、一切の手加減をすること無く攻撃を仕掛ける。
そうした俺の動きに刮目しながらも、冷静に俺を迎撃すべくその手に持った槍斧を差し向けてくるボスだったが、先程と同じ様に互いの得物が交差した直後に俺が槍斧を叩き落とした事に驚愕し、その表情を強張らせる。
そして、さっきのお礼だ!と言う意思も込めた一撃を必死に回避するボスだったが、俺の動きを読みきれなかった動揺からか、その鎧の胸甲部分を貫通する程に重い一撃を貰ってしまう。
そうして、俺の攻撃によって胸甲部分に穴を空けられてしまったボスだったが、その一撃を貰う代わりに俺から一旦距離を取る事に成功する。
……さっきとは、状況が真逆になったな……。
何て事を考えながら、俺の間合いの外まで逃れたボスを観察していると胸に受けた傷を止血しようと押さえつつも、それでも俺から視線を外そうとはしないその目には、既に先程までのある種の侮りや見下しの色は微塵も残っておらず、俺の事を自身を害しうる存在であると認識し、その上で、この場に於いて俺さえ倒せたならば、高確率でどうにか切り抜ける事が出来る、と判断している事が見てとれる。
しかし、そんな考えを改めたボスに対して俺は、右腕で相棒を構え、左手を前に突き出すと、掛かってこい、との言う意味を込めて指だけで手招きしてやりながら、顔には嘲笑を浮かべて全力で挑発を仕掛けてやる。
すると、流石にそこまでやられては、群れのボスとしては看過出来なかったのか、忌々しげな表情を浮かべながら俺へと突っ込んで来るのであった。
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俺が、ボスへと攻撃を命中させ、戦闘の『流れ』を無理矢理にこちら側へと引き寄せてから数分後、俺とボスとの戦況は膠着状態に近いモノとなってしまっていた。
あの後からは、基本的に俺が攻め、時折カウンター狙いでボスが攻撃してきたり、『流れ』を取り戻そうと負傷覚悟で突っ込んで来たりを繰り返していた為に、負傷や流血と言った点ではボスの方が余程大きなダメージを受けていると言っても良いだろう。
だが、それでもこちらも完璧に全ての攻撃を回避出来ていた訳ではないし、何より『練気』による全身強化を継続して行っている以上、何もしなかったとしてもこの後支払う事になる負債は膨らんで行く故の心理的な疲労感と、立ち回りからして非常に動き回る事になる為に、肉体的な疲労感も蓄積してしまっているので、どちらが優位に立っているのか、と言われても、ハッキリとした答えは返せそうに無い。
かと言って、時間がボスの味方をするのか、と言われても、必ずしもそうとは限らない。
確かに、放って置けば、この場での最大戦力(推定)である俺は、勝手に戦闘不能になるため、引き延ばし作戦は有効だろう。
現に、ボスの方も、俺の戦闘力が強化されたことに驚きはしていたが、同時に制限時間が有るとも見抜いている節が有るからね。
だが、だからと言ってあまり長引かせ過ぎると、今度は残り少なくなってしまっている配下の『小鬼』共が、他の面子に全滅させられかねないし、もしそうなってしまえば、確実にタツとレオの二人掛かりで袋叩きにされる事になるだろうからね。
それに、『俺達を倒した後』の事も考えているとするのなら、確実に短期決戦、多分次の一撃に賭けて来るんじゃないだろうか?
そんな事を予想していると、睨み合いに焦れたのか、それとも主戦力たる『総帥クラス』が、また一体タツの手によって討たれた事による戦力低下に苛立ったのかは不明だが、確実に俺を討ち取る!との意気込みが聞こえて来そうな咆哮と共に、槍斧を振りかざしたボスが殺気全開で突っ込んで来る。
それに対応し駆け出した俺も、空気を弾き飛ばす位の気合いを入れた掛け声と共にボスへと反撃を行って行く。
「#※∇∵∇@⊿!!!!」
「おおおおぉぉぉぉぉぉお!!!!!」
回避し、防御し、時には攻撃自体を迎撃し、隙を見付けては反撃し、フェイントに引っ掛かっては反撃され、防御しきれずにダメージを負う。
そうやって何度も武器を打ち付け合っていると、偶然にも同じタイミングで互いの武器を弾き合い、両者共に手から武器が離されてしまう。
咄嗟に、『武器創造』の『技術』で何かしらの得物を造り出そうとするが、既にボスが近距離まで踏み込んで来てしまっており、得意の槍では迎撃出来ない距離まで詰められてしまっている為、逆に戦況を不利に傾けかねないので脳内で選択肢を廃棄。
同様に、小太刀や短剣の類いでも、下手をすればボスの筋肉を貫けない可能性が有るために却下。
……ならば、どうすれば……。
そんな事を考えながらも、ボスから叩き付けられる様に繰り出させた左の拳を籠手で流し、腰の回転によって繰り出された右のフックを痛みの残る左腕でパリィした時、最初の一撃で破れていた服の切れ目から覗いていた肌を目の当たりにし、これならば!と思い立って早速実行に移す。
左手でボスの右フックをパリィした体勢のままに左肩から体当たりを仕掛け、一旦ボスの体勢を崩させた後、左手の指を揃えて手刀を作り、既に壊されている胸甲を目掛けて真っ直ぐ突き出す。
すると、そんな徒手の一撃なんぞ効きはしない、と高を括っているのか、防御する素振りすら見せずに、全力で攻撃するために足を止め、腰溜めにした拳で俺を粉砕しようと待ち構える。
そして、俺がボスの元へと到達し、自信満々に構えていたボスの胸元へと貫手を放つと、その左腕は何の抵抗も無かったかの様にアッサリと、その胸板を突き破り、ボスの心臓まで到達し、俺が腕を引き抜くのに追随するかの様に簡単にまだ鼓動を続けていた心臓を引きずり出した。
その光景を、信じられないモノを見るような目で見ていたボスだったが、俺が完全に身体から心臓を引き離すと、まるで抵抗を諦めた犯罪者の如く膝から崩れ落ち、自らの作り出した真っ赤な水溜まりに倒れ込むと、二度と起き上がって来る事は無かったのである。
……左腕、リンドヴルムに治して貰っておいて良かったぜぃ……。
そんな事を考えながら、貫手を放った際の衝撃で破れ、もうその機能を果たせなくなっていた手袋から覗く、爬虫類のソレと同じ様な付き方になっている左腕の爪に目を向けつつも、まだ残っている『小鬼』相手に奮戦している仲間に加勢するべく、離れた処に落ちている相棒を拾いに行くのであった。
これにて対ゴブリン戦は終了となります
次回から数話挟んでこの『魔王国偏』を終わらせて、次の長編を始める予定です。お付き合いお願い致しますm(__)m
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