49 エピローグ 死霊使いと3角関係の女神様?
「お兄ちゃん!あった!あったよ!」
「う・・。」
「こりゃひどいや」
「ほら、そんなこと言わないで女神が2人もいるんだ。祈ってやってくれ」
顔を見合わせると2人の女神は遺体に向かって祈りの言葉をあげている。
俺たちは、森を散策していた。
先生の遺体。マナと話し合ったがリアとルナにも事の顛末を伝え、先生の遺体を埋葬することに決めた。
人知れずに朽ちるよりも、人の手で葬るべきだ。との結論になったのだ。
まぁ、ここにいる4人は誰ひとり人間ではないのだが。
「私、全く記憶にないんだけど・・・」
「だろうな」
俺の隣にリアがやって来る。昨日は1日休み、ルナもリアも魂を抜かれたが以上はないようだった。
そして、先生に拉致られた後のことは記憶にないようだった。
リアも、操られていた時からさっぱり記憶がなく、なんか楽しい夢を見ていた。と言っている。
「結局、相手は人間だったの?」
「そのようだ。人間の怨念、思念とでも言うのか?意志の力。俺たち魔族にはないものだな。」
「その様子だと、ご主人様はまた力が発揮できなかったのね」
「あぁ。そうだな。・・・」
「ちょっと、もう少し何か言いなさいよ?張り合いないじゃない」
「俺たちは、魔界から出ると力を失うのか?」
「はぁ?しらないわよ!そんなこと言ったら私なんて遥か昔に無力じゃない?」
「あぁ、そうか」
確かに・・・。魔界から出たせいで無力になっているのであればリアは俺より人間界歴が長いんだ。もう魔族としての能力が失われていてもおかしくはないはず。
人間界にいるから弱体化している。
そう仮説を出したがそれはリアによって否定された。
・・・では、なぜ?
ふたりの女神を後ろから眺めていると、祈りが終わったのかルナがこちらに振り向いて手を振っている。
「行きますか」
「はいはい。私がいないうちに一気にマナとも仲良くなったみたいで・・・。なんだか楽しそうですね?」
「なんだよ、リア。お前今日はやけに突っかかるじゃないか」
つまらなそうに歩いてついてくるリア。幽霊屋敷の一件からやたらにマナのことを敵視しているようだった。
「別にぃ?私には興味なくて女神2人にはご興味があるようですのでぇ。あーつまらない!」
なんだ?焼いてるのか?・・・まさか、俺がそんなにモテるはずはない。
自分で言って笑ってしまうのが情けない。
「何話してるの?2人して楽しそう!」
「へへーっ!内緒!後で教えてあげるね!ルナお姉ちゃん!」
「あの樹の下がいいと思うのだけど・・・」
ルナとリアを無視し、マナが俺に少し先にある赤い実の付いている樹を指差す。
「あぁ、いいんじゃないか。先生なら、食物連鎖、とか言うんじゃないのか?」
「なにそれ?教師ギャグなの?」
「・・・一応な」
「っふ、ふふ。あははっ!変なの!似合わないよ!」
「ほっとけ」
俺は言ったはいいが恥ずかしくなり、持ってきた麻布に先生の亡骸を包むと担ぎ上げ、樹へと運び、根元に穴を掘る。
「ねぇリアちゃん?なんだかあの2人、仲良くなったよね?」
「そうだねー。リア、遊び相手がいなくてつまんなーい」
【あまり変なことを吹き込むなよ】
【・・・】
リアからの返事はなかった。
「マナ、今日はルナの方に行かなくていいのか?」
「なんで?」
「なんでって・・・」
お前がシスコンだからだ。いつもルナ、ルナ、ルナ!と言っていたじゃないか。人を害虫みたいに扱っていたくせに。
「うちは、・・・今あんたといようかと思って」
「殴るためにか?」
「な、なによそれー!」
「今までさんざん殴ってきただろう。いままで。・・・ほら、そっちもて。足」
「え、えぇー!!お、お姉ちゃーん」
ほら、言った。
結局、俺とマナ、ルナの3人で先生を持ち上げ穴の中へ寝かせた。
リアはまだ腕が本調子でないので見物。万が一ここで腕がとれたらシャレにならないからな。
「結局、一番の被害者はこいつだったのかもな」
遺体に土をかぶせながら俺は誰かに言うわけでもなく言った。
それに、誰も答えなかった。
ただ、無言で各々が土に埋もれいく亡骸を見つめていた。
「ふ、ふざけるんじゃない!!」
ギルドに俺の声が響いた。
声を荒げる俺の姿にギルドの中は静まり返ってしまう。
「そ、そんなこと言ったって・・・無理なんだよ。お兄さん」
カウンターの向こう側で耳を折りたたんで小さくなっているティグ。
「なぜだ!?クエストの幽霊退治はクリアしただろう!?」
「だ、だから受注しないで勝手にクリアされても困るんだよ。依頼、受けてないだろう?」
「・・・~っ!!」
やり場のない怒りがこみ上げる。
あれほどの苦労をしたのに、報酬ゼロ。話には聞いたが、契約を交わしていない以上ギルド経由とはみなされずタダ働き。それがティグの言い分だった。
「し、しかし。ルナとマナはお前から話を聞いたって」
「確かに行ったけど、パーティーのリーダーはお兄さんだから、正式に受けるにはお兄さんのサインが必要なんだよ。いつも、お兄さんが依頼受けに来てるし、立ち上げたのもお兄さんだろ?」
「もういいよヴァネット、今回はうちたちが悪かったよ」
「そうよ。ティグも困ってるじゃない」
「お、お姉ちゃん達・・・」
「し、しかし・・・」
丸め込まれているようで納得ができない俺は怒りで体が震えるのがわかる。
「ねぇ?」
マナが俺を呼ぶ。
「ねぇ?」
・・・
「ねぇってば!」
「・・・っ!!」
マナの両手で顔を挟まれ、俺は無理やりマナの方へ振り向かされる。
その瞬間、マナの顔が近くに見えた。
唇に生暖かい感触が、マナの髪に残るいい匂いが嗅覚を刺激する。
「わぁ・・・」
「ま、まな?」
『おぉーー!!』
驚くルナとティグ。ギルドにいるメンツ。
そして・・俺。
「はいっ。・・・その、報酬・・・だから、帰るよ!ティグもごめんね!ほら、早く!」
「ちょ、離せ、まだ話は終わってない!!」
「ごめんね、ティグ。今日はヴァネットが怒り出しちゃって。また今度来るから!」
「う、うん。僕は大丈夫だけど・・・」
ルナがティグに遠くで謝っているのがわかる。
俺はマナに引っ張られてギルドの外へでた。
「いきなり、どうしたんだ?」
「・・・答えよ」
「こたえ?」
キスが、なんの答えなんだ?
「幽霊屋敷で、言ってたじゃない?あの答え!」
幽霊屋敷で、キスしろ!なんて言った覚えはないんだが。
「もぉ!鈍いわね!愛するうちを守るんでしょ!?だから、OKの返事よ!!」
「・・・」
「・・・」
なに?
愛する?
マナを?
守る?
俺が?
OKの返事?
キス?
何を言っているんだ?
「マナっ!何してるのよ!驚くじゃない!」
ギルドから走ってルナも出てきた。
驚いたのは俺だ。
急にキスされると、こんな気分なのだな。
「あははっ、だって、ヴァネットが怒ってるから・・・。こうでもしないと暴れだしそうだったから。でも、うまくいったでしょ?」
「ま、まぁ、騒動にならないですんだけど」
「だから、結果オーライってことで!」
「ことで。じゃないわよ!女の子が人前でいきなりキスするなんて!もっと自分を大事にしなさい!」
「はぁ~い、まぁ、今回は大目に見てよ。家に帰ろう?リアちゃんも待ってるし!」
ルナの手を取るとマナは先に歩き出してしまう。
振り向いたマナの顔が、夕焼けで赤く染まっていたのかどうかは、今の俺には判断できなかった。
ルナはまだマナを怒っているようだ。
俺は、正直殴られるよりはマシだが、マナの変化に驚きを隠せない。
確かに、あの幽霊屋敷では金で買えないものがだいぶ手に入ったような気がするな。
先生に禁呪を教えたものも気になるが、今は2人の女神と1人の小悪魔との生活を楽しみたい。




