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女神の彼氏は死霊使い?  作者: き・そ・あ
本編 神も悪魔も幽霊嫌い
50/63

47 幽霊屋敷 ファイナル ファーストキスは、故意的に

「見ろ・・・。化けの皮が剥がれるぞ」


 先生の顔の下から、土色になった血色の悪い干からびた肌が見える。

 一度崩れ始めた皮膚は止まるところを知らず、ポロポロと剥がれてくる。


「ど、どうしちゃったの?」


「禁呪を使ったんだ。自我が崩壊し始めてるんだろう。自分が死んだことも認めずに、自分の殻に閉じこもっていた人間の末路だ。」


「うううぅぅぅぅ・・・」


 唸るような声を上げて、その場に苦しみもがく先生。

 楽しげなクラスは暗転し、電気の切れた、また薄暗い空間に戻った。

 子供たちの姿はうすらボヤけ、淡い白い煙のような存在になっている。


「くるしいぃ」


「助けて・・・死にたくない」


「苦しいよ」


「いたい・・・いたいぃ」


「パパ、迎えに来てよ」


「お腹へったよぉ・・・」


 子供たちの声が空間に響く。

 重なり合い、とても重く響く声になっている。


「リア!マナ!!聞こえるか!?」


 二人に声をかけるも、瞬きすらしないでその場から動こうとしない。


(魂が、肉体に戻りかけている・・・)


 もう1人の少女も、ルナたちと同じような症状だった。


「邪魔をするな・・・。俺は、俺は・・・」


「お前がやりたかったことは、子供を殺して、自分の玩具にすることだったのか?!」


「違う!」


「見てみろ!苦しむ子供たちの姿を。お前は、この子供たちの未来を奪ったのだ!」


「違う!」


「天界へ行き輪廻することも叶わず、魔族の手に落ぬよう影のように生活し、なにが楽しい!現実を受け入れろ!」


 俺は日記の部屋で拾ったメモ紙を先生へと投げつけた。


「覚えているか?これは、この屋敷で拾ったんだ。お前はそんな人間ではなかっただろう」


「あああ・・アンジェ・・・。すまない・・。すまない・・・。あれほど楽しみにしていたのに・・・」


 アンジェ?あの少女の名前か?


「何があった?なにがそこまでお前を突き動かすのだ?」


「俺は、俺は子供が好きだった・・・。見てられなかった。虐待を受ける子供、空腹に耐える子供、病気に倒れる姿、路頭で生活する子供・・・。俺はそんな子供を助けたかった。施設を作ろうとした。そんな考えに賛同してくれる貴族がいた。俺は、俺は、・・・。」


「ヴァネット・・・。あの人、嘘は言ってないよ。すごく優しくていい人なのに・・・。なんで」


 胸を押さえながらマナは辛そうに立っている。


「大丈夫か?」


「うん。あの人の魂の汚れが・・・。魂の重みがね。」


「俺は馬車を借りた日に、借りた日に・・・。」


 皮膚がこぼれ落ち、土色の肌、ギョロッとした大きな瞳。髪はそのほとんどが抜け落ち、歯も残らないような不気味な姿に変貌した先生。マナはその姿を見て言葉を失った。


「マナ、あいつ。浄化できるか?」


「無理よ。女神の力はほとんど使えなくなってるんだから。」


「使えれば、できるか?」


「あの先生が魔族でなくて、人間の魂、幽霊であれば多分・・・」


「よし、上出来だ」


「俺は、血を流して倒れている自分を見たんだ!血を流して、森に捨てられた自分を!俺はひとりぼっちなんだよぉ!!」


 子供たちの霊体?をかき分けて先生は恐ろしく早い勢いで迫ってきた。

 俺がマナを抱き寄せ、キスをしようとした矢先、俺は先生に首を捕まれそのまま壁に激しく打ち付けられてしまう。


「ぐぁっ!」


「わかるか?わかるか?俺は死んだんだ。死んだよ。血が出て、気がついたら死んでた。」


「な、なぜ、死んだくらいで禁呪が使える?お前は、誰に子供の魂を集める方法を聞いた?」


「俺は、牧師だ、そう、牧師なんだ!騎士様から哀れな子供の魂を集めるように頼まれただけなんだ・・・。僕は、世界の子供を幸せにする義務があるんだぁ!」


「き、騎士?」


 騎士が、人間の魂に禁呪を?

 なんのことだ?


「教師だと言ったり、牧師になったり。お前は忙しいな」


 馬鹿にしたような笑みを浮かべると、俺を掴む腕にさらに力が加わる。


「僕は強いんだ・・・つよい・・・つよい・・・ひひひ、ひゃはは!!」


 ボトッ


 俺は先生の腕を切り落とした。

 まだ、剣は使っていない。使わないで良かった。マナの前で魔力を使った攻撃はできないからな。


「なんだ?これ?」


 先生は不思議そうな顔で切断された腕を見ている。

 切断された腕からはウジが湧き出し、床にボタボタと落ちる。

 ダメだ・・・。魂が腐っている。


「う、うぎゃあややあっ!!?な、ななななんだこれ!?」


「おい・・・」


 ごふ・・・


 振り向いた先生を、俺は力いっぱい殴り飛ばした。

 壁際にまで派手に飛ばされる先生。

 その先生を見ても、姿を維持することが精一杯の子供たちはまるで親に寄り添うかのように先生のもとに集まっていく。


「この子達・・・」


 マナが悲しそうな顔でその光景を見ていた。

 俺の目にも、それは、無理やり連れてこられたわけではなく、子供たちは苦しみから解放されたことを感謝している、まるで先生を本当の親として下っている姿に見えた。


「マナ・・・子供たちは、どうなるんだ?」


「わからない・・・。普通は死んでしまったら天界へ魂が行くのだけど・・・。」


「子供たちは、罪があるのか?」


「うんうん。ないわ。ルナと2人で選定をしているとしたら、みんな天使か、すぐに輪廻させてあげたい。」


「そうか・・・。先生は?」


「先生は・・・あそこまで魂の腐敗が進んでしまうと難しいかも知れない。不浄な魂は輪廻ができない。浄化されるまで天界にいるか、魔界へ落とされるか・・・。」


 神は、救いを求めるものを見捨てるのか。

 この男は、何も悪くない。

 なぜだ。この光景を見ていると、胸がモヤモヤする。


「マナっ」


「・・・っ」


 俺はモヤモヤする気持ちを隠すように、考えることをやめると彼女を抱き寄せ、そのまま何も理解できてない彼女の唇にキスをした。


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