34 バブルスライム
「うわぁ・・・。おおきい」
ルナが草原に弾むバブルスライムを見上げながら言った。
確かに・・・でかい。
俺が知っているバブルスライムの倍くらいはあるぞ・・・。
「マナお姉ちゃん、だいぶ大きいけど・・・これ。」
リアはマナにしがみつきながら気持ち悪そうにやつを見ていた。
「う・・うん。でかいね。これは。私も初めて見るけど・・・」
ぶよんぶよんと全体が揺れながら動く姿はまるででっかい水風船。
体はスケルトンで緑のボディ・・・。
一定のリズムでポヨンポヨンと動くその姿。なんとも気持ち悪い。中年の太ったおじさんがジャンプして揺れるお腹・・・。のように波打つところがまた気色悪いのだ。
「どうする?2体いるが・・・。みんなで1体ずつ倒すか?」
「えぇー?めんどくさくない?ささっと二手に分かれて倒せばいいじゃない。」
「り、リアは何もできなから、向こうの方で見てるねぇ?」
見た目が受け付けないのか、リアは早々に離れていく。
まぁ、腕も切り離されているからここにいても役には立たないが。
「そしたら、私がヴァネットのサポートをするわ」
「えぇえー!!お姉ちゃんうちのチームじゃないのぉ?!?」
「だって、人間のヴァネットの方が明らかに不利じゃない。女神として、人間を守らなくてはいけないでしょ?」
「そうだけどぉ・・・死ねばいいのに」
ルナに言われてしぶしぶ引き下がるも、最後にはルナに聞こえないようにぼそっと女神の口から出た言葉とは思えないようなセリフを吐き捨てる。
し、死ねばいいって・・・。魔族の間でもそうそう言わない言葉だぞ。
天界に相手を呪い殺す方法が存在したら間違いなく俺は殺されていたろうな。
「マナ、頑張ってねぇ!!」
悪気はないのだろう。ルナは無神経にもそのまま一人バブルスライムへ向かうルナを見送っている。
一人歩く背中には哀愁が漂っている。そして、手に持つ剣からは殺意を感じる。
あぁ、マナはギルドに魔法剣士。として登録している。女神とはさすがにかけないからな。どっかのバカ魔族のようにサキュバスと書かれても困る。人間として、魔法も使える剣士。と表面上はなっている。
彼女が持つのは天界の剣。俺はその剣にいくらか興味があるのだが・・・。
(あいつは、本当に姉が好きなんだな。)
マナを作った神はクソだな。
シスコンで男嫌いで性格難有りって。どんな性格を想定したんだ?
離れていく彼女の姿を見ながら心底そう思った。
「さて、しかしどうしたらいいものかね。これは」
目の前にそびえ立つ緑のスライムを見上げながらため息がこぼれる。
こいつは、炎に強く、防御力もそこそこある。
ずっと同じ魔族だったからな。いざ倒せ、と言われても困るものだな。
今は俺の全ステータスが下がっている。このままじゃいくら攻撃してもらちがあかないだろう。
「どうすれば、たおせますかねぇ?」
俺の隣で上を見上げながら口を半開きにして見上げるルナ。
「ルナは、女神なのにあまり魔族のことは知らないのか?」
「わ、私はいつも仕事ばかりでしたから。魂の選定しかやったことないですし・・。魔族との戦闘などはもっと上の女神様が決めるものでして・・・」
「女神にも階級があるのか?」
「階級というほど厳しいものではないのですが・・・。やはり力の差によってはいくつか・・・。私たちみたいな女神よりも、エレメントを司る女神様は魔力も違いますし・・・。」
「女神にも、いろいろあるのだな」
俺は天界でのんびりとお茶でもすすっているのが女神だったと思ったが、実際にはだいぶ違うようだ。
下っ端女神は苦労するものなのだな・・・。
「あっ・・・」
「ん?どうした?」
ルナが口を開けて遠くを見ていた。
(何をそんなバカな顔してみているんだ?)
俺は視線の先に目を送るとマナが今まさに緑のネバネバを浴び終えたところだった。
バブルスライムの排泄物・・・なのか?緑のネバネバした気色の悪い液体がマナへドボドボとかけられ、彼女は立つことすら困難な状態に陥った。
ヤツの体のネバネバはローションのようになっていてバランスを取ることが難しい。この草原、緩やかな傾斜になっているせいで余計に難しいだろう。
マナは立てないのか?それともショックで立てないのかその場にひざまずき、動かなくなっていしまう。
「だ、大丈夫ですかね?あれ・・・」
「まぁ毒などはないから死ぬことはないと思うが・・・。」
最初からなんと不運なやつ。
そうか、こいつらはこういう攻撃?もしてくるのか。勉強になるな。
それはそれとして、とりあえずこのままって訳にもいくまい。
「助けに行くか?」
「い、一応・・・。あれでも妹なので」
まったく、世話が焼ける。
しかし、あの泣きそうな顔はルナによく似ている。黙っていれば可愛いのだがな。




