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女神の彼氏は死霊使い?  作者: き・そ・あ
本編 神も悪魔も幽霊嫌い
36/63

33 シスコン女神

「どこ行ってたんですか?」


 家に帰った俺をルナが迎えてくれた。

 どうやら、ルナとリアはいないようだ。


「ギルドへな、仕事を探しに」


 言いながらソファーに座り込む。

 いつ以来だろう・・・。ルナとこうしてのんびりしているのは。


「言ってくれれば、一緒に行くのに」


 ルナはソファーの肘置きへと腰掛けた。

 そりゃ俺だって一緒に行きたかったけど、お前には今SPがいるだろう?うっかり手を出した時には女神の力で攻撃されかねないぞ?あのシスコン・・。


「マナがいたからな。声をかけたらあいつがまた小動物みたいに怒るだろう。」


「あの子は、少し姉離れが出来ていないんです。ずっと天界で一緒にいたから」


「天界か・・・。」


 俺にしたら最大の敵。倒すべき相手なのだな。この2人は。

 俺はそっとルナの手を握る。


「その、なんだ。仕事の話は2人が帰ってきたらするから、なにか、今はお前のことを教えてくれないか?」


「わ、わたしのことですか?」


「あぁ、なんでもいい」


 俺は窓の外をみながら、ルナの手を握る。ここで見ていれば、少なくともルナが帰ってきたらすぐにわかるからな・・・。

 こんなときに目を見つめたらチッスのひとつくらいできるのかもしれんな。

 無意識に、俺が彼女の手を握る力は強くなる。


(なんでこんなコソコソしないといけないのだ)


「そうですねぇ。私は―」


「ただいまぁ!!お姉ちゃーん!!」


 ルナが口を開いた途端、勢いよく扉が開き、驚いたルナが肘置きからお尻を滑らせ俺の乗っかる。

 ルナの心地よい重さが、髪のいい匂いが、柔らかい身体が俺の5感を刺激した。


「お、おかえり・・・」


「・・・」


 扉の前で立ち止まるマナ。

 動けない俺。

 マナの後ろで笑いをこらえるリア。

 ・・・気まずそうに笑うルナ。


【リア、どうにかできないか?】


【無理ね。女神様の罰を受けることね】


【おまえ、そんな他人事な―】


「・・・これは、どういう事?」


 俺とリアのテレパシーを遮り、ルナが怒りに震えている。


「こ、これは。いきなりドアが開くから驚いちゃって」


「そ、そうだ。やましいことなんか何もしていないぞ!?」


 ドンっ!!


 床が抜けるんじゃないか?ってくらいの足音で、マナが近づいてくる。


「この変態!!そこで何しようとしてたのよ!?離れなさいよ!!」


 ルナの手を引っ張り俺から引き離すと、獣か汚物か、生理的に受け付けないモノを見るような顔で俺を睨みつけてくる。


「マナ、さっきのは本当に私が滑っただけよ。ヴァネットは悪くないの。だから、そんな言い方しないで?」


「いやよ!お姉ちゃんが天界に帰りたくないのはこいつのせいだもん!こいつがいなければ、大天使さまにお願いしてまた天界で仲良く暮らせるのに!」


「私は、私の意思で帰らないの。人間界の方が、天界よりもよっぽど素晴らしいわ。」


 ほほぉ。魔界も天界も人間界より環境が悪いのか。

 やはりどっちも同じようなものなのだな。


「じゃあお姉ちゃんは、人間界でこいつと一緒に暮らすって言うの!?」


「そう・・・ね。ヴァネットがよかったらだけど・・・」


 ルナはそう言うと俺の顔を恥じらいながら見てくる。

 そして、その向こうで魔族よりも恐ろしい、般若の顔をしたマナが睨んでくる。


「お、俺は、べつ―」


 別にかまわない。と言おうとしたがマナの顔がさらに怖くなったところで言葉が出なくなった。

 まるでメデューサに睨まれているかのようだ・・・。


【どうしたの?】


【いや、魔界の森に居る魔女を思い出してな・・・もぉいいからどうにかしてくれ】


 まさか、女神が怖い。とは言えたものではない。

 とにかく、この状況をどうにかしなくては。


「あぁ、そうだ。」


「なによ?変態ジジィ!!」


 ルナのお尻をはたきながら不愉快そうにマナが言う。


「マナお姉ちゃん、何してるの?」


「これはね、お姉ちゃんについた不潔菌を叩き落としてるの。きれいなお姉ちゃんが汚れちゃうから」


 このシスコンやろう・・・。

 リアは嬉しそうに笑ってこっちを見るが、もう流石に相手にしてられない。


「仕事だ。」


「どんなお仕事?」


「私、今回何もできないよ?」


 わかっている。リアは今回役には立たないだろう。

 マナはどこまで協力的かわからないが・・・。ルナは女神の力が封印されて使えない。


「モンスター討伐だ。今日まだ陽も高いからな。今から行こうかともうんだが」


「私は構わないよ。マナもいいでしょ?」


「お姉ちゃんが行くなら、うちはいつでもついてくよぉ~?」


「リアも、いつでもいいよっ!」


「じゃあ、とりあえず行くか。詳しいことは歩きながら話そう」


 俺は新しい愛刀、なまくらソードと前回壊れなかったそこそこ強かった剣をもち、討伐ポイントへ向かうことにした。




「ターゲットはバブルスライム。敵は2体。先日の魔族の襲撃で勢いづいている残党みたいなものだ」


「バブル・・・スライム?」


「泡みたいなやつだな。リアは、知っているのか?」


「うんうん、そんなのしらなぁい」


 森の中の街道を歩きながら、俺たちは目標地点の草原へと向かう。


「バブルスライムは、天に向かう魂を捕食する習性を持つ魔界の低級魔族だって聞いたことがあるわ。」


「さすが、女神様は物知りだな」


 マナを褒めたつもりだったのだが、うかつだった。


(あっ・・・)


 振り返った俺には、どこか悔しそうで、ほっぺたを膨らませているルナの姿があった。


「私も、・・・女神ですけど?」


「あ、あぁ。すまない、どうしてもルナは人間に見えてしまって・・・」


「そうですか、一応わたしも女神なので。よろしく!」


 マナと比べると、ルナはどうにも女神に見えない。

 おっちょこちょいというか、人間くさいというか・・・。力を封印されているからなのだろうか?


「まぁまぁ、そのバブルスライムを倒せばいいの?でも、リアたちに出来るの?」


「バブルスライムは動きも遅く、決して強くないから人間でも倒せると思うわ。天界でも、バブルスライム

 の強さは低級中の低級と言われていたし。仮にも女神が二人いるんだから。それほど苦労しないと思うよ?」


「そうなんだ。よわっちぃなら今回は楽勝だね!マナお姉ちゃん強いし!!」


 ・・・


【バカ。ルナが・・・】


 俺の声を聞いてリアが慌てて振り向いた頃には、ルナは涙を浮かべながら顔を赤らめていた。


「ひどい・・・。リアちゃんまで・・・」


「ち、ちがうよ!?マナお姉ちゃんは強くて、・・その・・あの。ルナお姉ちゃんはその、強くはないけど・・・あの・・・う、うわぁ~~ん!!」


 フォローに困り果てる、涙を流して泣き始めるリア。

 マナを立てれば、ルナが落ち込む。

 ルナを立てれば、マナがキレる。

 この二人。扱いにくい・・・。

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