31 ヤサグレ女神がもうひとり
「なんだ?あれ」
俺はルナの背後に迫る白い光を見ていた。
空から、一直線にこっちへ来ているように見える。
「ほんと、なんでしょうね」
ルナは若干違う方向を見ているような気もするが・・・。
無事に魔族は撃退できた。だが、いろいろとお互い言わないといけないことがある。
なんと言えばいいのか・・・。俺たちは何も言えずにそのまま時間が止まっているかのように無言だった。
「ねぇ、・・・ヴァネット?」
言いにくそうに、彼女は重たい口を開いた。
俺の隣に座った彼女は、視線をわざと離しながら続けた。
「その、私女神なんだけど」
「そうだな。ヤサグレた女神だな。家出してきて」
「う・・・。そんな風に言わなくても」
天界での仕事が嫌になったから地上に降りました。
とは、なかなかない告白だな。
「それで?そのヤサグレ女神がどうした?俺になにか言うことがあるのか?」
「う・・うん。その・・まだ、一緒にいてもいいかな?」
「なぜ?女神なんだ。天界に戻ろうとはしないのか?」
「なぜって・・・。その。・・・あなたといたいから。」
きたー!。この言葉、魔界では一回も言われたことないぞ!これは、もう一度キスしてもいいような雰囲気なのか?もう一回、今度は俺からキスしても・・・。
「あぁ、俺も、・・・ルナといたい。」
俺は体を起こし、ルナの目を見ながらそっと顔を近づけた。
ルナも、それに抵抗はなかった。
ゆっくりと近づくルナの顔・・・。と、後ろの光。
「・・・・て・・・ま・・・てまてぇ!!」
遠くの方から女の子の声がする。
ルナと、それほど変わらない年頃の女の声だ。だが、こんなところに少女がいるわけがない。魔族との戦いで避難しているはず。
(気のせいか?)
俺は気にせずにもう一度ルナに近づく。
「待てって言ってんのよ!このクソにんげぇん!!」
(ん?なんだ?)
今度は、はっきりと聞こえた。
「えっ?マナ?」
(マナ?)
ルナの背後の発光体は次第に大きくなり、俺たちのいる高台の真上に来ると止まり、発光体の中にはルナとそっくりの女の子がいた。ルナはそれを驚いていた。マナと呼ばれた方は、怒り心頭といった具合で俺を睨みつけている。
「マナっ!なんで人間界にいるの?!」
「お姉ちゃんがいなくなって、あんな量の魂選定できないよ!!だから、お姉ちゃん心配だし、うちも天界から脱走してきた!!」
こいつ、ルナが心配で脱走してきた。の前に、ちゃっかり文句と仕事したくないって言ってんじゃないかよ。すごいやつだな。それより、今なんて言った?
「お、おねえちゃん?」
「うん、彼女はマナ。星の女神よ。月の女神の私の妹、ってことで神様に創られたわ」
「ほ、星の女神・・・」
「様をつけないさい!このくそ人間!」
な、なんて口の悪い女神だ・・・。
「星の女神・・・さま」
「コラッ!マナ、ヴァネットをそんな風に言わないで!私の!・・・」
・・・私の?
そこでルナの勢いが止まってしまう。
なんだ。
私の?そこが一番大事だ。もう一声、行こう!
「なによ?お姉ちゃん。まさか、こいつにたぶらかされたんじゃ・・・。許せない」
おいおいおい、まて、まってくれ。なんだ?この危ない妹は。
「神の名のもとに、神罰を下す!」
右手に巨大な光の玉を作り上げ、今にも落としそうな雰囲気・・・。
初めて見る生の女神は攻撃的すぎるぞ。
しかも、お前さっき天界脱走してきたとか言っておいて神の名のもとにっておかしくないか?
「待ちなさい!マナっ!この人はいいの!私と一緒に住んでるの!!仲間なの!!」
一緒に住んでいる。の言葉に異常なまでに反応を示すマナ。
天を羽ばたく力もなくなってきたようでその体はゆっくりと地上に降りてくる。
「いいいい、一緒に住んでる!?同じベッドで、一緒にお風呂入って・・・。ご飯食べて、そんな事してたのお姉ちゃん!!だからさっきもこんな天界から丸見えのところでそんな人間と卑猥なことを始めようと・・・」
「な、何もしないわよ!ねぇ!?って、それよりも一緒に寝てないし!お風呂も別!!」
「あ。あぁ・・・。そうだな」
実際には、今ここでキ、キスをしたかったのだが・・・。
「うそよ!さっき、そいつお姉ちゃんに近づくときエッチな顔してたもん!!」
おいおい、お前はどんだけ目がいいんだ。俺はお前の姿すら認識できなかったのにお前は俺の表情まで見えるとは・・・。
「いいや!してない!断じて、そんな、卑猥な顔しとらん!」
「そうよ、ヴァネットは私についたゴミでも払おうとしてたのよ!」
うわー。すまない、ルナ。俺は今お前の気持ちは大きく裏切ってるぞー。
「ふぅーん。・・・人間の男なんて、みんなただ盛ってるだけの変態よ!騙されてるのよ!」
それはどう言う偏見だ?
天界の女神たちは人間の男を性欲の塊くらいにしか思っていないのか?
でも、人間作ったの神だろ?
「そんなことない!いいから、マナは帰りなさいよ!」
「やだっ!!」
マナはゆっくりと地上に降り立った。
大きな翼を広げ、俺に威嚇している。
小動物のようだな。こいつは。
「うち、もう天界に帰れないし、お姉ちゃんといる!!」
『えぇえぇ!!?』
「しょうがないから、ペット位にはしてあげていいよ?ヴァンちゃん?」
見た目はルナと瓜二つな少女は、俺たちの生活に波乱を起こしそうだった・・・。
(波乱といえば・・爆弾娘はもうひとり・・・)
俺が視線をやると、横に寝かされていたリアの姿はなかった。
せっかくルナといい雰囲気になれたのに、こんな邪魔者が入るとは。今日はこのまま手をつないで帰るってのが流れじゃないのか?




