28 仲魔
俺は森の中を走っていた。
ユニコーンが来た高台へと場所を移す。
正直、あんな奴の相手をするとは思っていなかった。
すでに、だいぶ陽は落ちてきている。辺りが暗くなり、魔族の力が強くなる時間だ。そんな中、奴は突然現れた。
街の入口で骸骨兵をただ切り崩しているだけの簡単作業を行っていたのだが、大地が隆起し、木々が倒れながらスカルライダーが現れた。
スカルライダー。名前からしてゴーストライダーの弟分か何かと持っていて、勝手に馬に乗る死霊騎士と想像していたが全く違った。
ワイバーンのゾンビ。つまり、死んだでかい肉食鳥だ。あんなやつ、俺は死霊軍に加えた覚えはない。俺がいなくなった数日の間に、明らかに我が軍団に何かが起こっている。
「ああぁぁぁぁぁっ!!」
スカルライダーは耳障りな声を上げて上空を羽ばたいでている。
森の中には雑兵がウジャウジャと湧いてくる。
「くらえっ!ダークフレア!」
高台に出た俺は、上空に舞うスカルライダーへと攻撃をするも、すべて避けられてしまう。
機動性は向こうの方が上のようだ
(まいったな。攻撃が当たらんぞ)
スカルライダーを相手にしていれば地上の雑兵どもが群がってくる。
地上ばかり相手にしていれば上空からスカルライダーが攻めて来る。
せめてどちらかいなくなればいいんだが・・。
「なに?もしかして困ってる??」
「だっ!!だれだ!」
背後から急に声が聞こえた。
「ふふぅーん。密偵のスキルが使えるのはあんただけじゃないのよ。」
俺の背後にいたのは少女ではなく、魔族サキュバスの姿をしたリアだった。
「リア!お前、なんでここに」
驚く俺みて一瞬ニヤッと笑うと、右胸を出し、契約の印を指さす。
「なんでって、・・・ほら。私の胸にはまだ契約の印が残っているわ。だから、生きてるなら様子ぐらい見ようかと思って」
「そ、そんなことで・・・。そうだ、ルナはどうした?!無事だろうな!」
胸を服から躊躇なく出すその姿に、俺は目のやり場に困ってしまう。
「大丈夫じゃないかしら?ティグに預けてきたわ。隣の宿場町へ行くそうよ。ほかの避難民にも追いついていたわ」
「そうか・・。」
とりあえず、ルナは無事らしい。
俺がここで戦っていたことは無駄ではない。
それがわかっただけでだいぶ救われるな。
「リア、お前も逃げろ。様子見はもういいだろう」
「・・・イヤよ」
「無茶を言うな、この数、見ればわかるだろう」
「えぇ、見てたわ。あなたがあのワイバーンのゾンビ相手に攻撃が当たらない所とか」
「あ、当たらないのではない。地上の兵が邪魔で気が散るのだ」
こんな時に、笑える仲間が居るというのは心地よいものだな。
以前の俺は、この死霊兵に紛れ、ただ殺戮と破壊を繰り返すだけのつまらない存在だったというのに。
「じゃあ、私が地上の下っ端は相手してあげるわ!」
「無理だ!お前ごときが相手をできる数でもレベルでもないぞ!」
「あぁ~ら?ご主人は、私のことが信用できない・・・と?」
「お前が死ぬと、ルナも悲しむだろ」
「じゃあ、私が死なないうちにさっさとあの鳥倒して迎えに来てよっ!」
リアは鼻で笑うと10本の爪を伸ばし、魔力を帯びた爪で骸骨兵の体を砕き崩しながら進んでいった。
彼女のためにも少しでも早くあのスカルライダーを倒さなければいけない。
リアめ、いつも通りむちゃくちゃな要求ばかり押し付けやがって。
(さて、どうしたものか・・・)
剣は使えない。
魔法も当たらなかった。
ここから剣を矢のごとくあいつに放ってもよけられるだろう。
いくら俺でも、せいぜい3本くらいしか撃てないからな。
魔法も、そうポンポン連発するわけには行かない。
魔力が完全になくなればこの体を維持できなくなる。今の俺は制限が多いのだ。
しかし、分が悪い状況は変わらない。リアも頑張ってくれている以上どうにかしないといけない。
「シャドウ・ボム!」
右手の指先に5つの赤黒い火種が生まれる。先ほど、スカルナイトを焼き殺したものと同じだ。ダークフレアより威力は落ちるが当たらないことには話にならない。
5つの火種はスカルライダーに襲いかかるも、あっけなく避けられて終わった。
やはり、あいつとの距離もあり、地上から一人魔法を打ち続けるだけではらちがあかない。
・・・一人?。
そうか。1人でやるからいけないのだ。
「地獄の底より我が声に応えよ!我が魔力を糧に再び戦場へ参れ、黄泉の戦士よ!!」
そう、召喚魔法はおそらく使える。見た目が違うなんて関係ない。我が魔力を素に死霊軍を今、再編すればいい。答えはシンプルで簡単だった。
大地から俺の魔力を受け、何体もの死霊兵が蘇る。
死霊にも特徴がある。
目の前にいる骸骨兵のように生前剣士だったもの。
魔法使いが使えるもの、神官は闇神官となる。
弓が得意なものもいた。
俺は今回魔法使いと射撃手を召喚した。
死霊使い(ネクロマンサー)と呼ばれた我が魔力。死の軍団長としてこのような偽物の死霊軍に負けるわけにはいかない。
「あらっ、本当に死霊を召喚したわね。死霊使いってのは嘘じゃないみたい」
「だからずっと言ってきただろう!」
「でも、魔王軍最強なら私がいなくてもこんな奴ら一瞬で倒して欲しいわ」
「うぬぬ・・・。」
悔しいが、こんな雑魚相手に確かに情けない。
今の力はどうやら通常の半分程度のようだ。
獣王など幹部クラスが出てこなくて本当によかった。
「でも、こっちもいい加減しんどいから、早くどうにかしてっ!」
「あぁ、ここからが反撃だ!」
俺は両手の指にシャドウ・ボムを造り、10個の燃える火種をスカルライダーへ向かって投げつけた。




