13 だれかいる?
俺は、夜中に目を覚ました。
眠らないでも行動できる俺は、すっかりと油断していたのか迂闊にも意識を失っていた。
普段であれば瞑想をしたり、周囲の気配を探って近づく怪しいものがいないかを調べるのだが、気がたるんでいるな。
広場の露店から戻ってきた俺たち。
ルナは2階に。俺は1階で夜を過ごしている。
ルナは、初めて食べるものが多いらしく、露店を満喫しているようだった。アルコールも初めてだったのか、最後は立つことができないほどに酔っ払っていた。
2階のベッドに横にさせ、そのまま俺は下に降りてきた。
玄関は俺の視界に入っている。
誰かがこの家に侵入した形跡はない。
そして、俺たち二人以外がこの家にいる形跡もなかった。
昼も、今も。
それが、今になって急に背後を取られたような不思議な感覚が俺を襲った。
「だれか、いるのか?」
静かな部屋に、俺の声が響いた。
返事は、当然ながらない。
誰もいないはずなのだから。
俺は立ち上がり、ゆっくりと家の中を歩く。
まずは、1階だ。全ての扉、窓に鍵が掛かっているか調べるも、問題はなさそうだ。
クローゼットの中、引き出し、台所や風呂場もみたが、誰もいない。
(気のせいか?)
一瞬、俺の気が緩んだ瞬間に、そいつは動いた。
わずかな負の感情。間違いない。魔族だ。
俺は追っ手が近くに来ているのか?偵察なのか?
相手を捕まえて吐かせることを決意し、相手の存在を探す。
集中し、相手の魔力を探る。
確かに、このそばに来ているのは間違いない。
ルナもいる手前、魔法を使ったり、元の姿に戻ることはできない。
あくまでも、相手から放出される魔力を感じるしかないのだ。
「どこだ・・・。どこにいる?」
針に糸を通すような感覚の中、俺は2階に魔族の気配を感じた。
俺は相手に気配を悟られないように密偵のスキルで階段を上り、気配のあった場所へ向かう。
(・・・ルナの部屋か?)
俺は静かに扉を開いた。
薄暗い部屋。
ルナの寝息だけが聞こえる。
部屋には月明かりが差し込み、特におかしなところはなかった。
(確かに気配は感じたのだが・・・。変わったところはなしか)
俺は部屋を一周すると、そのまま部屋を出た。
「おかしい・・・」
俺が、敵の気配を読み間違えるはずがない。
この家の、2階のどこかに隠れているはずなんだ。
再び廊下で精神集中をする。
かならず、絶対にどこかにいる。
俺はそう確信し、意地でも見つけてやりたくなった。
魔王軍最強の男たるもの、得体の知れない相手に遅れを取るわけには行かない。
「っいた!」
やはり気配はルナの部屋からだった。
俺は密偵のスキルを使うことも忘れ、扉を開けた。
「・・・」
いない。
先程と変わらない部屋。でも、なにかがおかしい。
俺は部屋の中をゆっくりと調べてみる。
雲が通り過ぎ、月明かりが部屋に差し込む。
キィィィィ・・・
扉が閉まる音がした。
俺は振り返るも、誰もいない。
風・・・だろうか。
部屋には、異常がなかった。俺は、立ち上がり、ルナの寝ている顔を見て、今はこの部屋を出ていこうと決めた。
「・・・ヴァネット?」
ゆっくりとその体を起こし、ベッドに座りながらこちらを見ている。
「あ、あぁ。すまない。物音が聞こえてな。念の為に見廻りに来た。特に何もなかったから-」
ルナはゆっくりと立ち上がり、足取りもふらつく中俺の前まで来ると、崩れるように俺に抱きついてきた。
「だ、大丈夫か?」
「・・・」
無言で首を縦に振る彼女。
しばらく、どのくらいの時間だろうか。一瞬にも、数時間にも思える間彼女は俺にしがみつくと、ゆっくりと顔を上げた。
そこに見たルナの顔は、アルコールのせいなのか恍惚としていて、初めて見る女の顔だった。




