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女神の彼氏は死霊使い?  作者: き・そ・あ
本編 神も悪魔も幽霊嫌い
15/63

12 武器より団子

 暗くなると、町はまた違う顔を見せる。


 メイン通りから一本入った路地裏には足跡の酒飲み場ができたり、昼間はいなかった仕事帰りの汗臭い人間で溢れている。通りにならぶ灯りも、風に揺れてきれいだ。

 今日で3度目の夜。

 だいぶ俺も人間界に馴染んできたと思う。


 近所の人間との会話。

 商店での買物。

 人間に何かを依頼するときの言い方。

 初日にティグより注意された話し方。

 どれをみても、魔王軍にいるときの俺では想像もできない。


「ルナ。夜は美しいな」


「うんっ、今日も月が綺麗」


「お前の名前は、月の女神と同じだからな」


 大きな月を見上げながら、俺の隣を歩くルナ。

 いつまでも、このまま続けばいいな。この生活が。

 彼女の銀色に輝く髪の毛が、月明かりを浴びてさらに輝いて見える。


「ねぇ!ヴァネットの武器買おうよ!」


「ひ、必要ない。無駄だ。他に買うものがあるだろう」


「無駄なんかじゃないよ!戦士なんでしょ?戦う男が丸腰じゃ、困るじゃない?」


 戦士とは仮の姿で、本来は違うのだが・・・。


「ルナには、必要なものがないのか?」


「私?うーん・・・。必要なもの。そうねぇ。特にないかなぁ。」


「何もないのか?人間とは、欲深いものだと思ったのだが・・・」


「なぁにそれ?ヴァネットが人間じゃないみたい!へんなのー!」


 しまった。また、思ったことが出てしまった・・・。

 どうも、人間のことを上手く呼べないな。ずっと人間は人間だったからな。今更言い方を変えるなんて不可能に近そうだが。

 笑うルナは、急に真面目な顔になり、俺の両手をその小さな手で掴んだ。


「私は、ヴァネットがちゃんと、毎日、返ってくればいいよ!初めてパーチー組んだ相手が死亡だなんて、最悪だもん!」


「あぁ、そうだな。わかった。武具屋へ行ってみよう」


 俺はルナの好意をそのまま受け入れた。

 この手のタイプは、何を言っても無理だろう。

 まぁ、死霊使いの俺が死ぬことはほぼ有り得ないがな。



 どれも、人間の武器だ。すぐに壊れるだろう。

 そう思うと、俺には何が必要なのかわからなかった。

 剣が、俺の力に耐えられないのだ。

 そこそこの名匠が作った物、伝説の武具クラスになれば使えるが、仮にも魔王軍最強の俺に人間の作った名もない武器を使うことが不可能だ。力の加減がわからず、一瞬で折れる。

 魔力の膜でその武器を覆えば数回は使えるだろうが、それでも数回。魔法で攻撃したほうが早い。


「ヴァネットは、そんなにマッチョじゃないから細身の普通の剣がいいわね!」


 なぜだろう。俺よりも彼女のほうが張り切って物色している。

 確かに、見た目はたいしたことないかもしれんが。

 彼女はいくつか値段を見ながら俺に剣を持ってくると、どうもしっくりこないようだ。首をかしげて戻してしまう。


「ルナは、なにか気になるものがあるのか?」


「うん・・・あれ」


「あ、あれか?」


 彼女が指差す方向には先ほどの言葉からは想像もできないくらいの剣が置かれている。


「あれは、少々でかすぎないか?」


「戦士って言うからには、このくらいがちょうどいいかと思って・・・」


 お前さっき細身の普通の剣がいいって言ってただろう!?

 声にならない声を俺は眼力で伝える。

 まぁ、背後から睨んでいるというとわかりやすいだろうが聞こえが悪いので言い方を変えてみた。


「すまぬ、それをくれ」


 俺は武具屋の男に一番安いブロードソードを指さした。


「いいのかい?そんな剣で」


「かまわぬ。」


「ちょっと、ダメよヴァネット!ちゃんと選ばないと」


「いいんだ。」


 俺は代金を払うと、ベルトに差し、そのまま歩き出した。


「ちょっと!待ってよ!せっかくの買い物なのに。そんな決め方って」


「いいんだよ。どの武器を使っても同じだ」


 そう、どの武器を買ってもあの武器屋に置いてある剣ではすぐに壊れる。

 ならば、他の物を買った方がいいだろう。どうせ俺は死なないのだ。剣がなくとも、攻撃はできる。


「なにか、他の物を買おう。今日の晩飯もまだ買ってないしな」


 少し先の広場に出ている露店を見つけると、俺はルナを露店へ連れて行った。



「いい匂い。ここ、なに?」


「露店だ。うまい食い物があってな。昨日、仕事に行くときに見つけたんだ」


 少ししか店はないが、昨日牧場の息子と遭遇し、少し付き合った。その時に、旨い!と皆が絶賛していたからな。おそらく旨いのだと思う。


「今日は家ができた記念だ。ルナが食べたいもの買っていくとしよう」


「いいの!?私、何もしてないのに」


「なに、俺が誘った道だ。明日から一緒に頑張ればどうにでもなるだろう」


 ルナの喜ぶ顔が見たい。

 この瞬間が楽しく、愛おしい。

 俺の中に渦巻く気持ちはドンドンと大きくなっていった。

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