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女神の彼氏は死霊使い?  作者: き・そ・あ
本編 神も悪魔も幽霊嫌い
14/63

11 求む!!我が城!

「ここは・・・また」


「古そう・・・ですね。」


 市街区のはずれにある明らかに古めかしい建物。

 言い方を変えれば、ぼろい。

 俺は空き家の前にあったチラシを見てみる。

 場所といい、間違いないのだが。なんせ建物に入る勇気がない。


(こんな建物、魔界にもないぞ)


 俺は改めて建物を見上げた。突風が来れば飛んでいきそうだ。


「なんか、魔族のいる魔界の建物みたいですねぇ・・・ぼろくて汚い」


「なに?魔界の建物はこんな汚いのか?」


「えぇ、そう思いませんか?魔族なんて野蛮なものが住んでいるんです。きっと廃墟みたいなとこだわ」


 まぁ、確かに先代魔王様の時まではそのように言われても仕方ない。

 だが、今は違う。

 人間界のように整備され、俺にしたら大事な故郷だ。

 それを見たこともない人間風情にバカにされるとは、不愉快だった。


「見てもいないものを、決めつけるな。魔界と言えど、人間界、天界と変わらぬはずだ」


「そうですかぁ?ぜぇったいに汚いですよ!なんで魔族の味方をするんですか?」


「み、味方などしておらぬ。ただ、その、なんだ。先入観はよくない。と言いたいのだ。」


「先入観・・・ですかぁ」


 2人がボロ屋を眺めながら話し込んでいると、急に目の前にあるボロ屋の扉が開いた。


「なんだい?客か?ようがねぇなら消えな」


「あ・・」


「すまぬ。客だ。この張り紙を見てきた」


 中から出てくる態度の悪い老人。

 自分の家がボロいことを気にしているのか、俺たちが家の前で立ち止まっていたこととが気に入らないようだった。


「あぁ。あの家かい。・・・まぁ。中に入りな」


 老人はそう言うとボロ屋の中に消えていった。


「だ、大丈夫かな。ここ」


「まぁ、相手はじいさんだからな。どうにもならんだろうよ」


 俺は特に何も考えずに、老人のあとを追った。



「現物は見たのかい?」


「あぁ、もう見てきた。中は手入れされているようだが?」


「そうだな、あそこはちと変わっているんだ」


「か・・・かわってる?」


 ルナは俺にくっつきながら恐る恐る老人に聞いた。

 なにも、そこまで警戒しなくてもいきなり食われたりせんだろうに。

 俺たちは入口のそばにある応接セットらしきもの通された。

 よくよく見てみると、中は本棚で埋め尽くされ、クモの巣が張り、カーテンで窓も遮られ、頼みの電気の光も薄暗くなんとも不気味な雰囲気を醸し出していた。


(一昔前の魔王城の書庫がこんな感じだったな。書庫の整理を任せれていた魔道士がグーたらで毎年怒られていたのを思い出す。)


 よくよく見てみると、今にも死にそうな老人の姿はどことなく魔王城の魔道士に似ている。

 都市をとると、魔族も、人間も似てくるのか?

 そんな疑問を抱きながら、老人の話を簡単に聞き流していた。


「ふぅ。これが契約書だ。家賃は毎月5,000F。安いじゃろ?」


「た、確かに安いですけど・・・私には」


「なんだ、安いじゃないか。よし、借りよう!いつから入れるんだ?」


「ちょちょ、いきなり決めるの!?私はまだ賛成してないのに」


「こんなに安いんだ。毎月5,000Fだぞ?昨日のバイトの半額以下じゃないか。人間住むところがないと困るしな」


「おぉ!まいどありがとうよ。今日からでも、いつからでもよいさ。ほれ、鍵じゃ」


 老人は俺が契約書にサインをすると棚から鍵を2本持ってきた。


「スペアキーはないのでな。両方なくしたら終わりじゃぞ」


「あぁ。わかった。世話になったな」


 俺はルナの手を引っ張り老人と別れて荷物を取りに納屋へ戻った。



「もう、信じられない!なんで契約しちゃうのよ!」


 納屋でルナは怒っていた。

 正確に言えば、帰り道嬉しく、楽しみな俺とは対照的に彼女はずっと暗かった。


「何を、そんなに怒っているんだ?」


 俺はルナのまとめた荷物をまとめて担ぐ。

 彼女から返事はない。黙々と片付けと荷物をまとめている。

 たった一晩とはいえ、文無しの俺達を無償で止めてくれて本当に助かった。


「あいさつに行ってくる」


 牧場の中にいる家主に、お礼の言葉と、次の住まいが決まったことを報告する。

 この辺のことは、魔界と変わらない。

 新しく居を構えたり、移転するときは隣近所に今までの礼と、次の行き先を伝えて行く。そして、また再開しようと、契りを交わす。

 魔族の移転は、死が付きまとうのだ。

 移転=出動の場合もある。勇者が世界を蹂躙していた頃は前線で戦うために近所に住んでいた部隊長なんかは次に勇者が攻めて来るであろう場所へ行かなければいけないのだ。

 その時の名残で、魔界では引越しの場合はまた再開する契りを交わしている。


「世話になった。さらばだ」


 俺はルナの待つ納屋に戻り、彼女と部屋の掃除をするとそのまま荷物をもって新居へと向かった。



 鍵を回し、玄関のドアを開けると、そこには誰も住んでいなかった。とは思えないような手入れのされた空間が広がっていた。

 埃臭くない空気。

 曇りのない窓ガラス。

 床も綺麗だ。


「きれいだな。ここ」


「そうね、予想とはだいぶ違うけど・・。」


 荷物を置いて、二人で外の張り紙を剥がしながらここに来て初めて会話した。


「その、なんだ。なぜ怒っているかわからないのだが、とりあえずすまない。決して、ルナと喧嘩をしたかったわけではない。・・・わかってほしい」


「はいはい。まぁ、もういいわよ。予想よりも綺麗だし、なんだかんだ、家があるんだからっ!」


 さっきまでのふてくされた顔が嘘のように彼女は笑っている。

 よかった。怒っていないようだ。

 しかし、何をそんなに怒っていたのだろう?結局、納屋では聞けなかったな・・・。

 まぁ、今更聞いてまた不機嫌になっても仕方ない。ここはこのまま黙っておくほうが無難だろう。


「さぁ!買い出しも行かなきゃ!」


 浮き足立っている彼女を後ろで見ながら、なんともこそばゆい気持ちになった。

 俺も仕事して、金稼がなきゃな。

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