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女神の彼氏は死霊使い?  作者: き・そ・あ
本編 神も悪魔も幽霊嫌い
17/63

14 欲望に勝てずに・・・

「どうした?寝ぼけているのか?」


 俺の声は、ルナに届いているのだろうか?

 口で呼吸するルナの吐息が、妙に艶かしく聞こえる。


「お前らしくないぞ。飲みすぎだ。今日は早く寝ろ。」


 俺はルナを抱き上げると、ベッドまで運び、そのままもう一度寝かしつける。

 大人しく布団に入る彼女。


「いい子だ。明日はまた、ギルドへ行ってみような」


 彼女の頭に触れ、そっとなでてみる。

 シャボン玉を触るように。

 あまり強く触ると殺しかねないからな。


「・・・まって」


 俺が振り返ると、ローブの端をルナが掴んでいた。

 その瞳には涙がうっすらと浮かんでいて、うるんだ瞳はまた綺麗だった。

 俺の作り物の青い瞳ではなく、本当に青い瞳がうっすらと滲みながら俺を見ている。


「ど、・・・どうした?」


「怖いわ・・・」


「こわい?何がだ」


「・・・一緒にいて。」


 彼女は俺のローブを強く引っ張る。俺も、抵抗する気持ちが少ないのか、引かれるがままそのまま彼女のベッドの横に足を折る。


「寝付くまで、ここにいてやる」


「うん・・・。」


 彼女の小さな手は、俺の手を握ったまま動かなくなった。

 温かいぬくもり。

 静かに脈打つその鼓動。

 静寂が世界を制する中で、彼女の鼓動と、吐息だけが俺の聴覚を刺激していた。

 作り物の手が、彼女の熱を俺に伝える。

 本当の手で、彼女に触りたい。

 しかし、それは叶わぬ夢。そんなことして、万が一招待がバレれば一緒にすら入れなくなる。

 この、名も知らぬ人間の仮面をつけたまま、俺は彼女に接しなければならない。

 それが、この世に神がいるならば、俺に与えた贖罪なのだろう。


「小さな、手だな」


 座り込む俺は、彼女をここまで近くで見たことがなかったのでマジマジと観察している。

 よく見ると、首元にほくろがある。白い肌には目立ってしまう。髪の毛で今まで見えなかったのだろう。


(俺は、ルナのことを何も知らんな)


 ただ、一緒にいたいと子供みたいな感情をもっていたが、この娘のことを俺は何も知らない。

 彼女も、俺のことを聞こうとはしない。

 これが、人間というものだろうか・・・。


「・・・」


 言葉にならない寝言なのか、うなされているのか何かを発するルナ。

 悪い夢ではないだろうが、だいぶ寝苦しそうだ・・・。

 俺が空いた手で布団をどかしてやると、彼女の手が俺を掴んだ。


「っ!」


 急なことにびっくりして、一瞬身構えたが、ルナは片目を開いて恥ずかしそうに笑っていた。


「どうした。いきなり」


「えへへぇ。」


(どうした?様子がおかしい)


 俺が考える間もなく、ルナは俺の腕を力強く引っ張り、俺を自分の体の上に引き込む。


「私、あなたのこと嫌いじゃないわ」


「あ、あぁ。俺も、・・・いつものお前なら嫌いじゃない」


 俺は両手を伸ばしてルナの真上から、彼女を見下ろす。

 彼女は、俺の言葉が聞こえているのか、いないのか。返事をしないでそのまま自分の洋服のボタンに手をかけた。


「おい、何する気だ?」


 無言で、ボタンを一つ、・・・また一つゆっくりと外すルナ。

 俺は、口ではやめろ、だの、何するんだ?、だの言っておきながらその姿をただ見ていた。

 これでは、聖都のときと同じだ。

 俺は、何かを望んでいる。

 俺は自分に勝てない、弱い男なのだ。

 目の前で、人間の娘がしている行動一つ止めることができない。


「ヴァネット。右の胸が少し痛いの・・・。触って、みて?」


 彼女は上着のボタンをすべて外すと、決して、大きいとは言えないがそれでも形のいい胸が、下着の下で呼吸に合わせゆっくりと上下していた。


「右の胸って・・・特に、怪我も何もないぞ?」


 俺は、彼女の胸に視線を送るも、そこには傷一つないきれいな白い肌が見えた。


「ダメよ・・・。触らないと、わからないこともあるでしょ?」


 ルナは、俺の左手を触ってくる。

 そして、ゆっくりと左手を絡めるように取ると、そのまま自分の右胸に近づけていく。


(ど、どうしたんだ?こないだ、ガストが変身した人間の女の胸を揉んだじゃないか。あの時と、一体何が

 違うって言うんだ?)


「ほら、はやくぅ・・・」


 ルナは頬を赤らめ、まるで昼間とは別人のようだった。


「ほ、ほんとにいいのか?」


「ん、いいの」


 彼女に引っ張られるまま、俺は彼女の右の胸に触れる。

 その感触は、ガストのモノとは似て非なるものだった。

 柔らかく、なにか、いい匂いもした。錯覚なのか分からないが、それは俺の五感を刺激し冷たい体を熱くさせる。


「んぁ・・。い、いたいよ・・・」


 目を閉じ、両手で口元を隠しながら彼女は小さく囁くように言った。


「すっ!すまない・・・」


 俺は左手を彼女から離した。


(な、何をやっているのだ?我は、このようなことをするために人間界にいるのでは・・・。)


 自分の左手と、横になり、こちらを見上げるようにしているルナの顔を交互にも比べてしまう。


「ふふふっ、あなたは、もう逃げられないわ」


 ルナの口が、異様なまでに歪む。

 その瞬間、部屋の景色が一変した。

 次第に空間が歪み、真っ暗な世界へと落ちていく。


「な、なんだこれは!?」


「ふふふ、・・・」


 暗闇に不気味に笑い声が響く。ルナの体は床に崩れ落ち、その声はもはやルナの声ではなかった。


「だ、大丈夫か?ルナ・・・ルナ!」


 俺の問い掛けに力なくうなだれる彼女。


(みゃ、脈はある。呼吸もある。・・・でも、なんだ。すごく衰弱しきっている)


「その娘、いい魔力をもっていたわぁ。しばらく起きないわよ。私が魔力を吸い尽くしちゃったから」


 目の前に黒いコウモリの翼を持った女が現れる。

 こいつは、見たことがある。魔界に似たやつがいる。


「サ、サキュバス・・・貴様、どうしてここにいる!?」


「あら?私を知っているなんて珍しい人間もいたわね。」


 サキュバス。魔族の中でもそれほど強くない。どちらかといえば、弱い。

 ただ、あいつには他にない特殊能力といってもいい能力がある。

 男にしか効かない能力。それは、今まさに俺が実践したが、男をたぶらかし、野生の肉食獣のように自分の巣に連れ込み、じわじわと魔力を吸い続け殺すこと。

 ・・・情けない。まさか、同族に騙されていたとは・・・。しかも色魔に。


「こんなとこ、リーヴァイやガストに見られたり、耳に入ったら魔王軍の復帰は見込めないな。」


「何をブツブツ行っているの?あなたはこれからどうなるか知ってるの?」


「なぁに、お前にいたぶられながら、魔力を吸い続けられて、飽きられたら殺すんだろ?」


 呆れた顔の俺がそう言うと、サキュバスは手負いの獲物を見るような顔で俺を見ていた。

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