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女神の彼氏は死霊使い?  作者: き・そ・あ
本編 神も悪魔も幽霊嫌い
11/63

8 女神像の前で魔族の俺は運命の出会いを手に入れた

 誰だ。

 人間のお節介も、いいものだと思ったバカは・・・。


「おいっ!バイトぉ!気合い入れろ!終わんねーぞ!!」


 現場には怒号が飛び交っている。

 街の外にある橋、老朽化で修理をすることになった為、人員募集。との内容だった。

 今までデスクワークだった俺がいきなり肉体労働とは・・・。


(辛すぎるぞ!人間!!)


 魔王軍の活動の方がよっぽど楽なんじゃないか?

 昨日も、その前も、町を壊してきたが、壊すのはあれほど楽なのに、作り出すことはこれほどまでに大変とは・・・。

 初めて理解したぞ。

 今日の仕事は橋の土台にある腐ってきた木材の交換、補修、そして新たに新しい骨組みを組み強度を上げるといったものだった。

 前日、川の水を減らすために迂回の水路を掘り進んだらしいが、それでも結構な水が流れていて、足が川底に沈むような感覚で動きにくい。


「こっち人が足りねぇよ!」


「新人!悪いがこっちは任せた!少し耐えててくれ!」


「わかった」


 隣の柱が倒れそうな状態になり、人手が割かれていく。

 当然、今度はこっちが危うくなる。

 全体的に人手が足りないだろ。これ。


「石を積め!岩もってこい!」


 川底に岩が積まれ、岩と柱となる木材を固定し、少しづつ形を作っていく。

 俺はその間、

 柱を抑える。

 岩を運ぶ。

 縛る。

 荷物を移動させる。

 などの雑用を命じられるがままに行った。

 物を作り出すことは、大変なことのようだ。



 朝が来ると、作業は少し落ち着きを見せていた。

 土台の柱は岩に縛られ、腐っていた木材は取り除かれている。


「明日には、終わりそうですね」


 ひとりの人間が俺に声をかけてきた。

 若い、男だった。


「あぁ。そうだな。意外と重労働なんだな。」


「あんた。見かけない顔だけど・・・この町の人?」


 俺は疲れてその場に大の字に倒れ込んだ。

 魔法が使えれば。死霊兵を呼び出さればこのような作業直ぐに終わるのだが・・・。

 さすがに人間の前でそんなことができる訳もなく、肉体はではない俺が肉体労働に汗を流していた。


「いや、昨日この町に来た。しばらく居座ろうかと思うのだが・・・。昨日ギルドの猫耳にここを紹介され

 てな・・・。もう少し依頼内容は考えるべきだと反省している」


「なにいってんすか!めっちゃ活躍してたくせに!俺、作業中見てて終わったら絶対に話しかけてみようと思ってたんだから!」


「活躍?」


「一人で重たい岩持ったり、でっかい柱を抑えるのもめっちゃパワーあったし。誰が見ても活躍してたでしょ!?」


 あぁ、そうか。人間のレベルに合わせないといけないのか。

 いくらデスクワーク主体の俺でも、仮にも魔王軍。普通の人間なんかよりは力はあるだろう。

 獣王がいれば、あのくらいすぐにできそうだけどな。

 人間は非力なくせに、群がって苦労して作り上げるものなんだな。



 ひと仕事終えて戻った街は、昨日とは違う一面を見せていた。昨日初めて通ったメイン通りには露店が並び、市のようになっていた。


「すごいな、昨日はなかったのに」


「ここ、朝方は市場になるんすよ!この町の名物にもなるくらいで」


 俺は職場で報酬を受け取ると、街に戻った。行き先は同じだからと、先ほどの男もついてくる。


「毎日、こんなふうになるのか?」


「そりゃ、毎日!季節によって並ぶ商品も違うし、飽きないっすよ!」


 俺は、端から露店を見ながらゆっくりと歩いた。

 基本的には着るもの。食べ物が多い。


「おばちゃん!これちょうだい!」


 あいつは、何かを買っていた。

 これが、人間なのか。

 いや、俺も国や街を滅ぼしたあとは地獄鍋をつついた。それと同じか。


「すまん、俺にもくれ」


 俺も、人間界で初めて買い物をしてみる。

 あいつと同じように、もらった賃金袋から同じ金を出し、買う。


「ここの牛乳とりんご、朝飯の変わりにちょうどいいんですよ!」


「そ、そうか・・・」


 人間界の食べ物は天界に近いところがあり、正直苦手だ。

 昔から、人間界で食事なんてしたことがない。

 俺は両手で持つ牛乳とりんごを見ながら少し考えて歩いていた。


「俺んち、こっちなんすよ!また今夜職場で!」


「あ、あぁ・・・」


 俺が言い終わる前にあいつは人混みに飲まれながら市街区へと消えていった。

 この街に家がある、普通の若者のようだ。

 ひとり取り残された俺は、昨日と同じように女神の噴水まで歩くことにした。



「まだ、いたのか?」


 俺の言葉聞こえているのか、いないのか。そこには昨日と同じ銀髪の女が座っていた。


「聞こえているか?」


 俺はため息をしながら隣に座る。

 俺には全く関係のないことだが、これが、人間の言うところの『お節介』なのだろう。

 普通の人間がひと晩同じところから動かないなど、ティグの言葉を使えば『異常』だ。


「おい!」


 俺が女の肩を叩くと、女の瞳はゆっくりと輝きを取り戻し、ゼンマイが回された人形のように動き出した。


「あ、あなたは?」


「俺はヴァネット。その・・・なんだ。昨日お前を見かけてな。まだここにいたから、人間で言うところのお節介というやつをしている」


「は、はい?・・・」


 彼女は不思議そうな顔をしていた。

 人間で言うところのお節介。じゃあお前はなんだ?とでも言いそうな顔をしている。


「いや、その、・・・なんだ、腹減ってないか?」


 俺は両手に持っている牛乳とりんごを彼女に差し出した。


「さっき、そこの露店で買ったんだ。腹が減っていたら、食ってくれ」


「ど、どうも。・・・ありがとうございます」


 彼女は俺の手から受け取ると、りんごをひとかじり。

 俺は、黙ってその姿を見ていた。


(俺が、人間を助けるとはな・・・。いや、人間に助けられたからな。)


 目の前の女と、猫耳のティグをダブらせてしまう。

 少しは、だれかの役に立てただろうか・・。


「なぜ、こんなところで?」


「はぁ・・・。あ、すいません!ヴァネット様でしたね。私はルナです。あの・・・。女神・・・。」


「あぁ、月の女神と同じ名前だな。よほど親が信心深かったようだな」


「そ、そうなんですよ!女神様と同じ名前で!!なんとなく、この女神の噴水の前にいたらいいことあるかなって思って」


 ルナ、と名乗ったまだ10代くらいの女は、愛想笑いを浮かべながらなにか言いたくなさそうな、何かを隠しているような面持ちだった。人間とは、知られたくないことがある生き物だからな。悪逆非道なこともやっているはず。内面は魔族に近いのだから。


「ヴァネットでいい」


「いえいえ、そんな」


「目上に見られるのは嫌いでな。同じ、平等でいたい」


「は、はぁ。・・・」


 沈黙。

 もともと、コミュニケーション障害がある俺が、いきなり誰か知らない人間に声をかけるなんて、無謀すぎたか?これは、どうしたらいいのだ?


「そ、空が・・・よく晴れてるな」


「はい。そうですね。とっても気持ちいいです。」


「・・・」


 会話が終わってしまった。

 通り過ぎていく街の人間を見ながら、特に何か話すわけでもなく、2人は噴水の前に座っていた。

 気の利いた言葉もかけられない自分がはがゆい・・・。


「どうして・・・」


 次に、口を開いたのはルナだった。


「どうして、見ず知らずの私に手を差し伸べてくれたんですか?」


 彼女の純粋な青い瞳に・・・。俺は体が熱くなるのを感じた。

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