未来上映会、終わり
エウステノプテロン・デュプテルスという男が
行使する能力、その対象は……
プラティの亡骸だった
彼女の体が不自然に捩れていき、
限界を迎えた彼女の胴体は亡き別れを迎えた
胴が胸を境に真っ二つにされており、
断面からは夥しい量の血が噴き出している
そして2つに分かれた彼女の身体は
抱えていたルナーシュの腕から滑り落ち、ぐしゃっと地面に落下する
前回の未来予知で確認できた、
上半身と下半身が切断されていたあの痛々しい遺体の状態
その原因__その根源はこの男、
エウステノプテロン・デュプテルスであったのだろう
『え……………?』
ルナーシュは今起きたことに頭の処理が追いついていないようだ
慌てて腕を見てみると、
皮膚には暗い赤褐色の血が大量にこびりついていた
プラティの血であろう
『あーあ
可哀想ですね〜??
でーも、これでこの可愛げな少女は安心して
「あの地」へ旅立つことが出来たし……
結果的に良かったですね???』
デュプテルスはこの世に常在している悪意をありったけ
集めたような声色でケタケタと嗤う
『……ッッッッッッッッッツ
こぉぉぉぉぉろしてやるぅぅぅぅぅ!!!!!』
声にならないほどの憤怒と憎悪を込めて
そうルナーシュはそう叫ぶ
その声にはカガミ=フウマが彼女に若干ではあるが抱いていた
恋慕の情を全て振り払ってしまうような、
それほどまでに可憐な少女には
到底似合わない怨嗟と恨みがこもっている重低音であった
『死ね!!!
フル!!アァクアリウム!!!』
そう魔法名を唱えた瞬間、
この一直線の長い長い回廊が水で満たされた
床から天井までもが1つの水の塊によって満たされ
デュプテルスもルナーシュ自身もそれに飲み込まれる
『留まれ!!』
続いてこう叫ぶと、
水が重力に従わずにその場に留まった
まるで水の端に《《見えない壁》》があるみたいに……
その巨大な水の檻にデュプテルスは為す術なく
ただ酸素を消費し、溺れ足掻くのみだ
『おぼぼ……
あなたぁぁぁぁぁぁ おぼっっっ』
『そのまま溺れ死ね!!!!!』
ただ唯一、水の魔法の発動者であるルナーシュのみは
窒息も水による抵抗も一切受けずにいる
以上の特性はこの世界の普遍のルールである
なので水属性は密室戦闘に於いて相手を一方的に溺死させられるため
無類の強さを誇っている、とのことだ
因むと自分で生成していない自然にある水は適応外だ
『あっばばばば……
で……も……
む……だ…………ですね?』
デュプテルスの口の中に大量の水が入り込み、上手く発声できていない
ただその渦中にいても彼は変わらぬ余裕を見せ、
水の抵抗を感じながらも両手を前に出す
そして”ものを捩るジェスチャー”を取った
『………え? なん……で………』
『ふぅ……
残念でしたね〜??
これも、私の「あの地」への想いが
あなたの「あの地」への想いを上回った……
たったそれだけのことです?』
……エウステノプテロン・デュプテルスは「水」を捩った。
多分そういうことだろう
彼が水自体を捩ったから
さっきまでこの空間を満たしていた水の塊が弾け飛び、
まとまりを失って床へ次々に流れ込んでいった
そのおかげでこの空間には再び空気が入り込んでいき、
デュプテルスも不足した酸素を補うように、深く深呼吸をしている
『私は個体でも液体でも気体でもあろうと
捩ることができる……のですか?』
デュプテルスは喉に溜まった水をぺっぺと吐き出す
したらば高らかに勝利宣言をして、
絶望し怯えるルナーシュに歩み、詰め寄っていく
『や………いや 来ないで!!!』
『ごめんなさいね?
でも、そんなに怖がらないでくださいよ?
確かに……確かに死ぬ時、
ちょっとは痛いかもしれませんよ!?
ただそれさえ乗り越えられたのなら……なら!
全てが完璧な「あの地」へ行くことができるのですよ?』
理解不能な理屈を並べ立てて、尚もルナーシュに歩み寄っていく
そしてあの、ものを捩るポーズを取りかける
『だから…… だから
来ないでって!!!!!!』
そう嘆きを含めた叫びをすると、
彼女は咄嗟にすぐ横の飾り台の上に置かれている花瓶を
手に取りデュプテルスに向けて投げつける
『あゝ……』
彼が能力を発動した
捩じられたのはルナーシュの身体ではなく、
デュプテルスの視界に入っていたあの花瓶だった
その花瓶は割れて陶器は無数の欠片となる
したらば運動エネルギーを完全に失ってしまい、
そのまま地面へと落下する
『あーあ
私の能力、万能ですけど
捩る対象を正確に視認してないといけないんですよ〜?
途中で何かに視界を遮られると、狙いがブレてしまってね?……
玉に瑕……
ってやつですか?
まぁ、こーんな私の弱点もあなたが今まで善良に生きてきて、
「あの地」に行く資格があるから特別に教えてあげたのですよ?』
『あ……あぁ………………………あ』
『はぁ…… あなたのその《《親殺し》》の大罪。
神の使者である私によって赦しをお与えしましょう……
では、改めまして…………
「あの地」へ行ってらっしゃい?』
エウステノプテロン・デュプテルスは
床に散らばる割れた花瓶をパリパリと音を立てながら踏み越える
そして彼は再び、ものを捩るジェスチャーを取った
その瞬間
ルナーシュの胴が胸を境に真っ二つに捩られて、
絶命した
***
その後、テリウムが遅れてその現場に到着した時には、全てが手遅れだった
朗々と嗤い続けるデュプテルスの姿と
プラティ、そしてルナーシュの死体が
床に転がっているのみだった
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これにて私、█ █ █ = █ █ █
による能力名『未来予知』で視認することのできた
情報の開示を終了する




