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異世界の歩き方!  作者: Sakaishi-Nihonshi
第2章, 信頼関係構築イベント
21/33

煮えたぎる鍋ども

***


「ささっ これで私含め6人、全員揃ったネ

我の冗談で十二分にこの場も

あったまったところでお食事……の前に!

そこのお客人のお二方……

せっかくみんないるんだし

改めて、自己紹介をしてもらってもいいかネ?」


カルシュ様は鍋の蓋を3つとも開けて、中の具材の様子を確認する

湯気が立ち込めて、

具材がいい感じに出汁に染み込んでいた

そして場の空気感を変えようと僕らにそう催促をしてきた

おそらくお客人のお二方とは

僕といましがた入ってきたこの少女のことだろう


「では、私から」


少女はすっと立ち上がり

僕含めた5人を見渡す

そしてほっと一息

ため息をついて口をひらく


「私の名前はマヤです

マ、ヤ

先月、両親と一緒に山に山菜取りに行っていた時

偶然《《火牛》》の襲撃に遭ってしまい……

死にかけていたところを

ルナーシュ様に救助していただき……

今は怪我の治療と、

里親を見つけてもらうために

この屋敷にお邪魔させてもらってます」


この5人の中で僕だけが知っていないからなのか

少女__マヤは僕の方だけを向いて

淡白に教えてくれた


「え、えっとぉ……

そのさっき言ってた

”かぎゅう”ってなんですか?

そ、それに! 

里親探しってことは、あなたのご両親は……?」


マヤが一通り喋り終えた後

僕は驚きによって掌を机に突き、椅子から勢いよく立ち上がる

そしてやや早口でまくしたてて、マヤに問いをぶつける


「はぁ…… 困りますよ

同時に2つも質問をしないでください

それって意思疎通の基本ではないですか??」


マヤは呆れたような口調と表情を僕にだけに浮かべる

取り敢えず、

初対面でのマヤの印象は

なんとも最低の状態でのスタートとなった


だがしかし、

美少女が無表情のまま、容赦無く毒を吐いてくるのは……

思春期の頃の性教育がほんの少しでも間違ってたら

性癖に刺さっていたので、結構危うかった


「まぁ,あなたの質問に答えましょう

第1、両親はどうなったのか

答えは死にました。

火牛に襲われた時に、

私のことを守ろうとして焼け死にました


第2、《《火牛》》とはなにか

答えは……

話すと長くなるので端的に言うと、

物凄く強い魔獣です

常に業火に身を包んでる、超巨大な牛なんです

もう一度ですが、

私はそれに両親を殺されました……」


マヤはその場に立ち尽くしたまま、少し下へ俯く

浮かべる表情には隠しきれない程の憎悪と恨みでいっぱいいっぱいだ


当然か……

肉親が殺されてまだ一周忌も迎えていないのに

元凶への憤怒を抑えろ、というのは無理な話であろう


「……はぁ、私の両親のことはいいとして,

あなたって火牛を知らないんですか?

一般常識ですよね 

少し学が足りないのでは?」


既に綺麗な顔にはマイナスな感情はもうなく、

冷静さを取り戻したようだ

そして僕の目を見ながら再び毒を吐いてきた


「そうそう!!

フウマったらティピカルさんのことも知らなかったのよ!?

この世界の英雄だってのに!

まだ遅くないから、

これから私たちと一緒に勉強していきましょうね?」


突然、ルナーシュ様が横から割り込んで話をしてきた

多分寝室にて彼女に渡された《《全魔法編纂》》についてのことだろう


「そうなんですか?ルナーシュ様?

火牛に飽き足らず、ティピカルさんまで知らないって…………

本当に無知なんですね、あなた」


「あはは、これからは毒を吐いてくるかどうかで

あなたの体調が測れそうですね

学がないのはもう”ごめん”の一辺倒しか出来ないので、

ルナーシュ様の言う通りにこれから勉強していきますね

まぁ……質問に答えてくれて、ありがとうございました」


「最低限の礼儀がなっているのは

まだ良いですね ほんの最低限の」


「えぇぇ………

では次は僕の番ということで……

僕の名前はカガミ=フウマです

奴隷商人に誘拐され、他国に売られてしまうところを

同じくルナーシュ様に助けてもらって……」


マヤによる強烈な毒舌による右ストレートの応酬に、

僕は完全に意気消沈してしまう

なのでテンション爆下げのまま自己紹介をしてしまった


「んもう

それもそうだけど、

私はフウマに助けてももらったんだから!

暴言を吐いてきたり、吐血を私にかけたけど

一応私の恩人なんだからね!!」


またもやルナーシュ様が口を開いた

そしてマヤに訴えかけるように、

やや必死に僕の名誉を守るための弁護をしてくれる

それに合わせるように

横で傍観している

プラティさまとテリウムが2回ほど小さく頷き、彼女の意見に同調してくれた


「ははっ 

いくら恩人とは言っても、

その前で随分とルナーシュ様に醜い姿を見せになったようですね

カガミさん……でしたっけ?」


ルナーシュ様の弁明をひとしきり聴き終わった後、

マヤは表情をぴくりとも変えずに

またもや平然とストレートパンチを打ち込んできた


「ううぅ……

こいつなぁ……」


「さぁさぁ!!

これで互いの自己紹介も終わったことだし、

今度こそ夕食といこうかネ!

あんまり長くしすぎると鍋が冷めちゃうしネ〜」


僕のマヤに対する怒りを遮るように

カルシュ様____

いやもうこんなセクハラオジサンに様付けはなくてもいいか……

カルシュは場を仕切り、皆に夕食を食べることをすすめる


「旦那の言う通りだぜ!

今は鍋を囲うために集まってるんだしな

ピリピリしてても仕方がねぇ」


カルシュに同意するために、すぐさまテリウムが口を開いた

僕が知っているあいつらしく

彼は傲岸不遜に腕を組む

そして首を傾げて睨みの意を込めながら、僕を軽く見つめてくる


「おおぉーー

よーやーっと食べれるのか!

待ちくたびれたぞ!!」


続いてプラティさまが間を置かずに喋る

既に不器用ながらも箸を持ち、

鍋をつつく用意は万全のように思われる


「そーネ

皆もこう言っているんだしネ

いただこうとするかネ」


カルシュはそう言い切り、

静かに箸をお茶碗の上に並べて置く


「……では」


カルシュは全員に聞こえるようにそう呟き,

両手を肘掛けから、机の上へ移す

そして手をグーの形にして机の縁に乗せた

背筋は先ほどと比べれば、ピンとまっすぐ伸びている


それに合わせるように

他の4人もタイミングよく全く同じ動作を行う

まるで事前に示し合わせたように…

奇妙に感じてしまうほど…

動きが一致している


「えぇ?? そぇぇっと……

こ、これはぁ な、な、なにこれぇ??」


意外さの極み故に

過去一レベルのどもりを披露してしまった

そりゃそうさ、と僕は主義主張をしたい

だってさっきのさっきまで

座りながらてんでバラバラの姿勢をとっていた5人全員が

突然規律を整えて、背筋を伸ばし

握り拳を丁寧に机の上に置いているのだから


「うるさい

常識知らずのカガミは黙ってなさい」


姿勢は整えたままマヤは僕に釘を刺してきた

それを聞きビビった僕は

不器用ながらも素早く5人と同じポーズを取る

かなりこそばゆくて、

少々動きはぎこちなかったが

なんとか周りと姿勢を合わせることはできた


***


10数秒の沈黙が流れる

沈黙と言っても

その間も鍋のグツグツと煮える音は居間中に響いているが……

そんな中でも5人みんなは体勢1つ変えないでいる

時々僕が我慢ならず、

体を横へぶらぶらさせてしまう

そのたんびにマヤは視線を鍋から僕へ移し、鋭く睨んでくる

怖い


***


唐突にカルシュが握り拳を解いた

そして素早く、手元に置いてあった箸を右手に持ち

中央に構える土鍋に向かって

勢いよく箸を伸ばしていく!


その動きを目視で確認した

僕以外の他の4人も同じく、手元の箸を持ち

鍋に向かい箸を伸ばしていく!


***


あくまでこっからは予想だが……

これはこの異世界の風習とか文化やらで、

家長の人が食べ始めるまでは

なにがあっても黙って、行儀良く待ち続ける

そして家長者が食べようとしてから、やっと一斉にみんなで食事を始める……

と言うのが僕なりの考察だ


まぁその考え方が正しい前提で行かせてもらうと……

僕、

ルナーシュ様、

プラティさま、

カルシュ、

テリウム、

マヤの6人による

お鍋の具材を巡る激しい争奪戦の火蓋が

今!切って落とされた!!


……って感じ?

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