魔法設定の暴力
「…………え 冗談?」
「事実であーる
第1に魔法を扱うにはある二つの道具が必要で、それが『器』と『水』なのだ
わかりやすく言うと、
人の内部にある魔力を貯める器に水が溜まっていって、
その水を消費して魔法を使う、って感じね!
『器』は《《シフ》》、『水』は《《シャフト》》とそれぞれ言いことが多いな!
まず初めに、魔力を貯める役割のシフはだなぁ……
完全完璧に才能だ!遺伝だ!血筋だ!」
「あ……あばば」
夢が砕ける音がした
僕がもらった未来予知というチート能力(笑)
は今のところ不便極まりなく
これからも共に二人三脚で寄り添って、
墓場まで愛用していくのは現状結構難しいと思う
だ、か、ら、こ、そ!
例え僕に才能がなくとも、
魔法という分野でコツコツ努力し続け、最強になり
超一発逆転、大ツモを引こうとしたのに……
才能至上主義であることをこうも面と向かって言われてしまうと……
それ相応のショックと不安が僕に取り憑いてしまう
「でもでもでーーも
本当に大事なのは2つ目の、
水の役割を担うシャフトなんだよ!
シャフトは才能関係なしに
日々の努力、地道な鍛錬、自身の気概に完全に依存するのだよ!!」
僕のげんなりした顔を見て、慰めるように
夢がありポジティブなことを言ってくれる
「お!! なんとかライフが回復しました!
それでそれで、それぞれにはどんな役割が?」
「よくぞ!!
シフはさっきも言ったように、魔力を貯めるためのおぼん。
シャフトは魔法をぶっ放すための原料,
と考えれば良し!
おぼんから溢れ出した
水は魔法には使えなくなるって特徴があって
過剰に溢れ出しすぎると、魔法の練度が大幅に下がっちゃう……
だーからシフからお水が溢れないように、
優秀な魔法使いは定期的になんらかの魔法を使う必要があ〜る
シャフトは自身の意思関係なく、自動供給だから!
心臓がシャフトを生成する役割を担っているからね」
プラティさまはハキハキと喋りながら、
円形の広場の端にある東屋のベンチに腰掛ける
さっきの落胆を覆してくれる、
新情報のオンパレードでテンションはマックスになっている
そりゃぁ情報の開示速度は速いが、
大学の鬼みたいな授業進度に比べたら赤ちゃんみたいなものだ
水の役割を担うシャフトはいわば
RPGで出てくる《マナ》のようなものなのだろう
「そーんで、
心臓で作られるシャフトの供給速度が努力によって増やせるのだ!!」
東屋のベンチに体を預け、
両足を上下にぶらぶらとさせている
「え? でもそしたらすぐに水が溢れ出しちゃうようになって、
逆効果になりませんか?
溢れちゃったら魔法の練度が下がるんですよね?」
「うーむ、いい質問だ!
よき生徒を持って先生は鼻が高いぞ!
その質問の回答は心配ご無用、だ!
なぜならば、
努力によって変わるのは供給速度だけではなーい
同時にシャフトの濃度、
つーまり砂糖水で言う砂糖の濃度が濃くなるのだ」
「え、それってつまるところ……
元々器が小さい人でも、努力して水の濃度を上げていけば
打てる魔法の頭数が増えるってことですか!?」
「大正解!」
僕の方を向いて、不細工ながらもウインクをしてきた
多分さっきまで目に見えてがっかりしていた
僕に対する祝福の意だろう
「いよっしゃーーーー!!」
正座から思いっきり姿勢を崩し
胡座よりもずっと楽な体勢をとる
したら、僕は嬉しさのあまり天高く拳を突き上げる
突き上げた拳はビルよりも、山よりも……
果てには太陽よりも高い自信がある
「まぁ気持ち程度だけど」
プラティさまは衝撃の事実を叩きつけて、
一瞬にしてさっきまでの僕の歓喜を糠喜びへと変えてしまう
それを聞き、僕はいじけた子供のように体育座りをする
まーたガッカリしてしまった
期待→落胆→期待→落胆………
このループの心的負担は
五月病にも十分に勝るうる力を持っている
「しょうがないでしょ!!
努力が才能に勝てる例なんてそうそうないんだからさ!」
人差し指を顔の周りで
ヒュンヒュンと円を描くように振り回す
「まぁ…… まぁ……
今までの話をざっくりとまとめると、
シフは才能依存、シャフトは努力依存で
シフの中に溜まってるシャフトを
魔法として使うことができる……と」
「そそ まっここいらで座学は終了!
それでは本題!!
さそくフウマの魔法適正見るわね」
彼女はベンチから立ち上がり、広場の中央に向かって
テクテク歩いていく
そして、噴水の縁の段差に再び座り込む
大分段差の前目に座っているから、
おそらく誤って転倒して、水に濡れるのを怖がっているのだろう
「魔法適正?? それはなんぞやで」
「そっかそこもか
おっほん……
魔法には生まれつき向いている《《属性》》ってのが決まっててね
それが『火 水 氷 雷 石 風 他』、の7つで構成されてるの
まぁ”その他”ってのは中々にいないけど……」
「ん? その他って具体的にはどんなのが?」
「本当に色々あるぞ 例えばだな〜
身体能力強化とか、瞬間移動とか、……あとは魔力探知とかだな!」
「いや、カッコいいな! 僕もそれのどれかの可能性はあるの?」
「ある! 測ってみないと分からないけど」
プラティさまが何気なく発したその言葉に
僕は大いに励まされた
自分が特別な人間なのかもしれないという期待は
たとえ望みが薄くても僕にとっては楽しみに値することだ
「なーるほど
では今からはその属性を一緒に見ていこうのコーナー、と」
「そう! はいじゃあ今から適性測るからシャフト出してみて〜」
プラティさまは小さな拳を僕の前へ差し伸べてくる
「え、えーーーと え……ごめんなさい……
その、シャフトってどうやって出すんですか?」
「なるほどなるほど笑
分かんないか笑
まぁ出来ないものはしょうがないから、
初めに俺様がフウマの体の中にシャフトを流し込むね〜
言ってなかったけどシャフトは他者へと流し込むこともできるからね!
体内のシフが流れ込んできたシャフトを感知したら、
そん後は自動で供給されてくから!」
「ちなむとみーんな子供の時とかに
誰かにシャフトを流し込んで貰わないと
自動供給もされないし、魔法も使えないからね
だいじょぶ、だいじょぶ
フウマはそれがちょっと遅れただけ〜」
そう慰めながら
プラティさまは僕の頭の額に指先を優しく当てる
「ほーい これでいいよ
どうどう? なんか感覚違くない??」
ほんとだ 直前と触感がまるで違う
五臓六腑をなにか不思議な感覚が駆け巡る
感覚的に近いのは……
なんだろなぁ……
辛い辛い学校を乗り越えてようやっと夏休みに入ったばっかの時
特有の全能感に近い気がする
「そしたら、ちょいと力入れてみ〜」
素直に指示に従う以外、
他に選択肢はないので言われるがまま腹あたりに力を込める
「うぉ?! なんにこれ!?
腹からなんか出てきとる!」
ちょうどへそのあたりから服を貫通してきて、
何か薄黒いモヤのようなものが漂ってきた
そして、そのモヤはその場で滞留して
少しすると色や密度が薄くなり、10秒もしたら完全に消え失せてしまった
「それがシフから出てきたシャフトね
魔法の原型〜
……っていうか
シャフトの色が薄灰色ってことはっっ………!」
僕の手を両手でぎゅっと握り込み
驚きと喜びが入り混じったような表情を浮かべる
「え!? ってことは?! ってことはなんですか??」
「フウマの魔法適性は……
俺様とおんなじ《《石》》だ!!!」




