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異世界の歩き方!  作者: Sakaishi-Nihonshi
第2章, 信頼関係構築イベント
16/33

魔法への期待と落胆

「ちょっと!! お待ちくださいプラティさま!

まだ僕にはルナーシュ様に聞きたいことがあるのです!!」


女の子は僕の手を強引に引っ張り、走り出す 

その脚力は凄まじく

一緒に手を繋いでいるせいで何度も転びかけたし、

持っていた杖も道中で落としてしまった

尚もその少女には僕のために力を加減をする

気遣いは微塵もないのか、変わらずに大股で歩みを進める


「そーの、聞くべきことは代わりにこの俺様が答えて差し上げるから!!

だからはよう外に出よ!」


振り返った女の子の目には晴れ渡る空のように

ただ一点の曇りもない 

瞳孔は綺麗で鮮やかな栗皮色をしている 

よく日本人の目の色は黒という人がいるが

それは見間違えで本当は茶色であるという小話をよく耳にする

でも、これは誰がどう見ても間違わずに

黒ではなく茶色と即答するであろう

それほどまでに濃く、澄み切った茶色の瞳であった



女の子の歩き方は1歩1歩の速さは平均的だが、

歩幅が尋常じゃないくらい大きく感じる

この特徴は僕の、足の回転数は高いが1歩が比較的小さめという

と非常に相性が悪くなっている


兎にも角にもその噛み合いが悪くて、

僕は頻繁に転びそうになる

そのたびに女の子は僕の手を強く握って、置いてかれないようにしてくれる


その手助けと、

幼い女の子如きに足の速さもとい持久力で負けてはならない、という

僕のパシリプロフェッショナルとの相乗効果で

なんとかその女の子の脚力にくらい続けることができた


***


彼女に連れられながら廊下を爆走してる僕。

時々横をちらと見てみると、

廊下の壁面にいくつもの絵画が掛けられているのが確認できる

絵画は扉と扉の間に必ず1枚はあり、

その内容は動物に人物に風景画に抽象画に……

まぁ数え切れないくらい様々な題材があったが

1個だけ、たった1個だけ不可解な絵があった


黒塗りの絵画だ

金箔をあしらって豪華に彩られている額縁

に似つかわしくない一面を埋め尽くす黒……

まぁそれも1秒にも満たない時間しか見てなかったので

もしかしたら誤認かもかも、だが

これが落ち着いたらもう一度見に戻ってみよう


脳内で壮大な推察大会を開催しているうちに、

前方に大きく開けたエントランスらしき空間が広がってきた


「目の前にあるのがこの家の玄関な!」


なんかお気持ち程度の解説を入れてくれたが、

僕には彼女に着いていくのに必死すぎて上手くは聞き取れなかった


そうして両者エントランスに足を着けた瞬間、

急に女の子が左に大きく旋回し


「開け!!」


と甲高く叫んだ

そうするとあら不思議、

玄関の大扉が1人でに開いたのだ


原理はよくわかんないが

多分アラジンの『ひらけごま』と似た感じであろう

こういうのも魔法だとできてしまう、

ってのが僕の妄想魂に火をつけてくれる


「魔法の稽古って……!

外でするんかい!!」


いままでほんの少しだけ後ろにしおれていた

女の子の兎耳が

日光をふんだんに浴びたおかげなのが

きちんと垂直に立っていくのが分かった


考察大会優勝者の僕からすると、

この女の子の耳は自身の体力ゲージの役割を果たしているのだろう

なんていったって、兎耳がピンと立った途端

女の子の走るペースが一段と速くなったのだから


「いやごめんごめん!!

待ってくれ! 

ちょっとペースダウンしてほしいな〜って……

ダメ!? ダメかな!?」


絶対にこの女の子に僕の決死の嘆願は届いている 

絶対にだ

でも無視している 

変わらない歩幅で、より早くなった足の回転で、

僕のことをわざと振り払おうとしているのか、とさえ思わせる


その片方が一方的に無視するという

前代未聞の1人押し問答を、爆走中に少しの間だけ繰り広げる

そんなこんなで太陽に照らされながら花畑の上を走ってたら

開けた広場とその中央に聳《そび》え立つ噴水に到着した


「ほーい!! 着いたよ! 

ここが家でいっちばん広々としたところだからね!!!

気にせずに魔法の特訓できる、ってわけ!」


女の子は散々走ったのに息切れの一つもせず、

ニカニカした笑顔のままで僕の前に立ちはだかっている


「はぁはぁ…… 

はっふーはっふーはっふーはっふーはっ……

ちっと……ちっくと座らせてく……れ」


澱《よど》みのない鼠色をしている石畳に

僕はそのまま身を預けて倒れ込んだ

流石は魔法というべきか、

ルナーシュ様の治癒魔法のおかげで足への痛みはほぼなかったが,

まだノータッチの胴体は普通に激痛だった


「あんた……

えっと……プラティとか言ってたっけな

なんでさ……なんで急に僕を魔法の訓練なんかに!?」


先刻の爆走移動の記憶が

濃厚すぎてまたもや名前があやふやになっている

僕にとって目の前の相手の名前が思い出せないというのは、

大学のサークル内ではよくあることだ

だから僕が名前を思い出すまでの気まずさにはある程度慣れてはいたが……

名前を忘れた相手が兎耳の幼女、というあまりにイレギュラーな状況で

僕は瞬間、戦慄《わなな》いてしまった


「俺様って毎日、正午にここで魔法の特訓してるんだけど、

一緒にしてくれる人が今まで1人もおらんかったのだ!!

だからフウマをこの噴水広場に召喚して、

魔法を高め合う上での好敵手《こうてきしゅ》になってもらうぞ!」


「はぁ……? こいつまじで……

えーーと! プラティさま!! 

あのぅ胴体がクッソ痛いのですけど……

治癒魔法とかなんかってありますか?」


搾りかすみたいな力を全て出し切り、

体を180°ひっくり返してなんとか仰向けにはなれた


「え〜? 出来るけどさぁ……

俺様、気を紛らわす程度の治癒魔法しかかけらんないぞ?」


「構わないから! 構わないからお願いします!!」


「あぁもう分かった、分かったよ!!」


彼女は僕の目の前にまで歩み寄り、横座りをする

そして僕の灰色の服をはぐり、おへそあたりにそっと右手をかざす

お腹の脂肪を軽く握り込む


「ほい、じゃあ……」


プラティさまは一瞬手に力を込める

そうしたら先ほどまでの痛みがすーっと引いていった

変わらず動くと痛むのだが、

ひとまず今の爆走による激痛は収まった……っぽい


僕の強張《こわば》った表情が痛みの弛緩とともに緩まっていくと、

それに合わせてプラティさまの顔色がより一層明るくなる 

どうやら僕を猛スピードで連れ出したことに完全に悪意はなかったらしい

……正直それが一番迷惑なのだが


***


「謝ってください!!

すっごい痛かったんですよ!」


「はい……ごめんなさい」


突き出した要求をプラティさまは素直に飲み込み、謝罪をしてくれた


「まぁ……結果痛みは尾を引かなかったので良しとさせていただきます」


「まーじでありがたいっす

病人を無理に連れ出して怪我をさせるって……

冷静に考えたら、師匠に八つ裂きにされるようなヤバい行為でしたぁ……

フウマにお願いなんだけど、

師匠に会ったら追加の怪我はなかったって

言ってくれないかな?」


プラティさまは顔を俯《うつむ》かせたまま

ボソボソと僕にお願いをする

彼女は表面上は気丈に振る舞っているが、

やはりよういう拗ねたりするのは、年相応といったことろか


「わかりましたよ……

っていうかこれ以上の激痛、僕は山登りの時に先行体験済みなんで!!

全然モーマンタイです!」


お願いの受諾に喜び顔をあげる1人の女の子に向かって

右手を伸ばし,グッドサインを決める

まぁ本音を言ってしまうと

どこが無問題だ,とは思うが


流石に年下の女の子に対して

ぐちぐちと痛かったことへの文句を垂れ流し続ける……

なんてことはできないから、ここですぱっと終わりにしたかった

というのが僕の腹の内だ


「えーそれでは改めまして魔法の御指南、ご鞭撻

宜しくお願いします!」


僕は仰向けから勢いのまま胴体を起こし、

石畳の上で正座をして教えを乞う

この石畳は広場の中央にある巨大な噴水を囲うように敷かれており、

燦々《さんさん》と光る太陽の熱によって温度が上昇している


すると僕の熱意を受け取ってくれたのか

プラティさまは意気揚々と話をし始めてくれた


「承った!! 

それではただいまよりこのプラティ様による魔法講座を行う!」


「はい! お願いします!」


「ではまず初めに……フウマ!! 

これまでの人生で、魔法についてはどれくらい学んできた?」


「あ……いえ!! 全くです!」


流石に自らの無知をこうも堂々とひけらかすのは、恥ずかしいものがある

この世界で魔法はどれほどの人が使えるものかは知らない

けども少なくとも子供の頃、

学校の学習の一環で魔法に触れることぐらいはありそうだ

是非とも僕が《《無学なアホ》》判定を受けるのだけは

不本意且つ納得できないので、勘弁してほしいところだが……


「そうか!! 俺様と同じ境遇なのだな…………

まぁいい! そんなフウマのためにも1から教えてしんぜよう」


プラティさまは人差し指を僕に向かって勢いよく突き出す


「まず! 魔法のいろはの《《い》》!!

魔法は……半分が才能である!!!


プラティさまは人差し指を僕に突き刺し、声高らかにそう宣言する

内容の残酷さとは裏腹に

その声色は愉快と元気が入り混じっているようだ


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