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異世界の歩き方!  作者: Sakaishi-Nihonshi
第2章, 信頼関係構築イベント
14/33

同郷の仲間

***


「いやーそれにしても

あの奴隷商人ってそんなビックな奴だったんですね!?

聞いた時、正直びっくりしてしまいましたよ」


僕は椅子から立ち上がり、

かつて僕自身が大いに荒らしてしまった

ベットシートを綺麗に整える

そして、軋ませながらもロッキングチェアを前後へ揺らす

ルナーシュ様の方を向き、感想を口にする


「__? えっとね…… 

そのビック?ってなんなの?」


ルナーシャ様は首を横へかしげて、

人差し指同士をトントンと押し当てる


「ふぇ? ど、どういうことですか?

英語がわからないのですか?」


降ってわいた驚きと困惑により、

メイキングベットをするのを思わず止めてしまった


「だーかーら! その英語ってのも何よ!?

まさか、私をからかっちゃってるの?」


彼女はほんのちょっと怒ったような表情を僕に見せる

その彼女の顔も巨匠に頼み絵画にして出品すれば

1億はくだらないような出来となることだろう


「あ、いえ 断じてそのようなつもりは……

えでも…………

奴隷商人らを殺害する時、

私の記憶通りなら

『クウォーターアクアリウム』と、

そう仰ってましたよね?

それはこの国の言語なのですか?」


当然浮かび上がる疑問だ 

クウォーターアクアリウムは直訳でよいのなら、

4分の1の水……もしくは水槽、

そのどちらかであろう

英語が存在しない世界で、英語が魔法名に使われている……

果たして、そんな矛盾があっても良いのだろうか


「あー 確かにそれはこの国の言葉ではないわね

この国の公用語はマイア語ってやつなんだけど……

それにはそんな単語、存在しないわ」


「では、クウォーターアクアリウムとはどこの言葉で?」


「”全魔法編纂”《ぜんまほうへんさん》」


「え?」


「古今東西の魔法が網羅されてる

全魔法編纂っていう本にそう書いているの

その本はもう1家に1冊はあるくらいには出回ってるんだけど……

確かに魔法の名前が何語由来なのかは未だに謎、

って話だね」


「……え?

えっとー…… 

ちなみにその本を執筆されたのはどちら様で?」


「”ティピカル”って人ね

人類にとっての魔法の祖よ」


そう言い、ルナーシャ様はやおら席から立ち上がる

そして左にあるオークの本棚から黒の背表紙をしている本を

指でさっと取り出して僕に渡してくれた


「これね 全魔法編纂

著者はティピカルさん」


「あぁ、ありがとうございますぅ

……って 読めねぇぇぇぇぇ」


分厚い本を受け取った僕は極小さな声でそう愚痴をこぼす

見てみると、

表紙の上部には火と水と風とかを形取ったマークが

7個ほど並べられている

その下……

表紙中央には謎の文字が記載されているのが確認できた


訳が分からず

ページを開いていくつかめくってみても,

すべてが日本語でも英語でもない奇怪な文字列がびっしり列挙されている


かろうじて分かるのはその文字はどことなく

高校の頃授業で見たメソポタミア文明の楔形文字

……に似ている気がしないでもないかもしれない可能性が微量に存在することのみだ


一通り目を通したらルナーシャ様に

その本を素早く返却する


魔法の祖……か 

ってかそのティピカルも英語訳したら

”典型的”なという意味だしな

つまり……!!!

現時点で、情報ソースは人名と魔法名しかないが……

僕以外にも現実世界からこの異世界にやってきた

《《同族》》がいるかもしれない!!、かも


まぁなんともワクワクする設定ではあるのだが、

僕にとってはこの世界で生きていく術を早急に獲得することが即決だ

なのでこの設定は暫《しばら》くの間,引き出しにでもしまっておこう


「貴重なお話、ありがとうございました!」


本棚がギチギチすぎた故に

魔法書の収納に大分苦戦しているルナーシャ様を横目に

僕は感謝の言葉を口にする


「そ! 

てかさっきも言ったけど、

ティピカルさんって、この国の英雄みたいな人で

子供でもみんな知ってるわよ?

これを言うのはちょびっと罪悪感があるけど……

もうちょっと教養をつけたほうがいいんじゃない??」


「……えぇ?

あ!! そ、そうですよね!

ティピカル! 

ティピカルさんですよね!!

いやー、目を覚ました直後だったので

うっかりしてました!」


見るに耐えない苦し紛れの言い訳にも、

ルナーシャ様は「そっか!」と笑顔ではにかんでくれた


「んじゃ!

言いたいことは一通り終わったし……

さっきもいったけど、不景気下のこの国で

1から職業を見つけるのには、どんだけ早くても1ヶ月はかかるわ

だからフウマは最低1ヶ月はこのお屋敷にいることになるよ」


「え? 先ほども聞きましたよ?

それがどうかしたんですか」


「だからその間

右も左もわからず、お屋敷に住んでもらうのは

流石にフウマが可哀想だから……

この機会にお屋敷の案内をするわね!

まぁ、今は私よりもーっと詳しいテリウムはいないけど……」


「え? ルナーシュ様より詳しいんですか!?

……失礼ですが

あいつ、このお屋敷ではどのような立場で?」


想定される最悪の返答を想像してしまい

僕はブルブルとたじろいでしまう


「執事よ お父様直属の」


「……は? 

え、えっとぉ……お言葉ですが

本当にあんな言葉遣いする野郎が執事ですか?!

侯爵様の!? 務まっているんですか?」


そんな訳がない

そんなことがあってはならない、と

藁にもすがる思いでルナーシャ様に問いかける


「ええとっても!!  

本当に大事な時には礼儀正しいし、

炊事洗濯掃除とかのお仕事はもう、完璧よ!」


自信満々に胸を張っている 

自分の使用人が礼儀正しく優秀なのがよっぽど自慢なのだろう 


……正直そんなことを言われても信じることは難しい

だって,せいぜい5、6分一緒に時を過ごしただけで

あんなに僕に悪印象を与えてくれた人物だ

今となってその下馬表を覆すことは

たとえ神でもそれなりには苦戦するんじゃないかとも思う


「はぁ…… 左様ですか」


よし! このことは忘れよう!!


***


「まぁ…… 一旦この話は終わりにして……

では、気を取り直してお屋敷の案内、宜しくお願いいたします!」


「うん! 歩くのがきつかったら、そこにある杖使ってもらって?」


彼女はドアのそばに立てかけてある木の杖を指で指す

そして胸を張るポーズは変えずに元気溌剌《げんきはつらつ》に言う

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