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異世界の歩き方!  作者: Sakaishi-Nihonshi
第2章, 信頼関係構築イベント
11/33

平和という名の休戦期間①

「え?

えっと、いや……

あなたこそどちら様ですか?」


相手の強硬な態度に若干の恐怖を覚えながらも、

僕は相手に名を問うた

すると男はドアの前から一瞬にして、

ベットに寝ている僕の目の前にまで歩み寄ってきた


「あぁ? そりゃこっちの台詞だよ 

なんだてめぇ、まさか不法侵入者か!! 

どうやってここまで来た! 

言わねぇとぶっ殺すぞ!」


話が通じない 

僕は初対面なのに

敬意を持たずにタメ口で話す人が総じて苦手だ

この人はその最たる例かもしれない


「どうしたもこうしたも,目覚めたらここにいたんですよ!

じゃあなんなんですか!

僕は寝ながらここまで歩いてきたんですか!?」


新たに降って湧いた誤解を解くため必死に弁明する

ここで何か無実の罪を着せられて

とんとん拍子に死刑とかになったら、

流石に笑えなくなるのでそりゃあ必死だ

中世の世界観だから、ワンチャンそれがあり得るかもしれないのだ


「ん? 

……てめぇ、もしかして姫さんが言ってた《《恩人》》ってやつか?」


男は怪しげに僕の体の隅々を観察していく

左手で自身の顎を軽くつまむ

加えて、腰を少し跼(かが)めて僕の顔を凝視してくる


「え、えぇ 

多分ですけどそうですよ 

気を失う直前、ある女性からお礼を言われたのはあやふやですが……

覚えています」


そう言った瞬間

男は右手で腰をあてがったまま、

顎をつまんでいる左手を

僕の左肩にぽんと置いてきた


「そのある女性ってのが姫さんだよ笑 はっはっは! 

だったらてめぇは俺にとっても恩人だ!

なんだよ!!

そうなら最初からそう言えってもんだよ!」


男の頬は緩み、上を向いて高らかに大笑いする

下からこの男のことを覗き込むと、

男の顔にはニキビとかシワなどの現代人の美容の天敵は全くなく、

透き通った肌が日光を反射している

この男も”異世界住民はみんな美形”というお約束を

忠実に守っているようだ


「そっかそっか、確かに姫さんが言ってたな

『今日からある男が怪我の治療のため、ここに数週間滞在する』って

……んじゃ、短え間かもしれんが宜しくな!!」


男は笑顔のまま、握手を求め手を突き出してきた

目には輝きを帯びており

さっきの敵意をむき出しにしていた男とは

まるで別人のようだ


「あ、あゝ こちらこそ宜しくお願いします 

ところであなた様のお名前は?」


固い握手を交わしながら僕は男に問いかける


「ああ? 俺の名前?? 

テリウム、テリウム・エーギルだ あらためぇて宜しく

それで、てめぇのなまえh…………」


「笑笑……

そうかいテリウム様

……いやテリウム!!

耳の穴かっぽじってよーく聞けや!

僕はな!

お前みたいな敬意を欠いて、礼儀知らずで無礼で横柄な奴が

大っ嫌いなんだよ!!! 

いいか! お前はゴミだ!!」


右袖を肘までまくり手を一本の棒のようにピンと伸ばして

人差し指を突き出す

それにしても……すっきりした

貯めた鬱憤(うっぷん)を人に向けて一気に解放することって

こんなに気持ちがいいんだ!


「はぁ!? なんだてめぇ! 

こっちが下手に出てりゃ良い気になりやがって

本当に殴られてぇのか?!」


「さっきのが下手??? 笑わせるんじゃねえよ! 

どんな立場かは存じ上げねぇけど、お前相当やばいぞ?」


「ああいいぜいいぜ! 

そんなに大口を叩くんなら望み通り殴り合いじゃ!!」


「こんなボロボロの病人と、か?? 

いいよやってやるよ

たとえ怪我しとっても、お前みたいなチンチクリンに負ける気は毛頭ねぇよ!!」


男__テリウムは腰を少し曲げて両手でファイティングポーズをとる

それに合わせて僕も被っている毛布を

勢いよくはぐり、体を起こし右腕をブンブン回す

正直に言うと、

怪我のせいで腕を回すのはクソ痛いが……

ここで変にビビって引き下がるなんて

ダサいこと、僕にできるわけない!


***


あわや殴り合いのその刹那、

さっきと同じ扉が軋みながらやおら開いていく

若干の怒りを纏(まと)いながら現れたのは……

いつぞや僕を助けてくれたあの少女だった


「「あ」」 


「あのさぁ……2人ともなにをしてらっしゃるの???」


***


少女は

部屋の隅に置かれていた1つのロッキングチェアを

僕が寝ているベットの横まで引きずって持ってきた

音を立てずにゆったりと座ると、椅子の背もたれに体を預ける


服装は前に会った時の白衣からは勿論着替えており

少し水色がかかった綺麗でお淑やかな

ドレスを身につけている

服にそんな派手な特徴はない……露出度も低いし、


まぁ強いて言えば両肩が見えているという

中々に前衛的なファッションをしているだけだ

ただ、普段から大学のキャンパス内でこういうキラキラした女子を

腐るほど見てきた僕にとってはさほど驚きもない


それよりも仰天したのはこの少女の美しさだ

前回まではあまりにも怒涛の展開すぎて

じっくりと顔を見る機会はなかったのだが、

いざ拝ませてもらうと……

あまりにも綺麗な顔立ちで思わず見惚れてしまった


くっきりとした二重で、

瞳孔はエメラルドグリーン色で煌びやかに輝きを放つ

少し白みのかかった肌は肩にかかっている白髪と非常にマッチしている


浮かべる表情には常に小学生みたいな幼さと

キャリアウーマンみたいな聡明さが混在しているようだ

少女がする笑顔には

どんな女性嫌悪民でも思わず

頬が緩んでしまうほどの破壊力がある


***


「………はぁ

それはテリウム、あなたが悪いわよ 謝りなさい」


あの少女にいましがた起きたことの顛末(てんまつ)を全て話した

少しだけ僕だけがよく映るように脚色をしてしまったが……

後でテリウムに謝ってでもおこう


それを聞き終えた少女はテリウムの方を向き

諭すように言う

それにも同様に、たっぷりとつめこんだ優しさと慈愛に溢れている


「……すまねぇ」


あいつは小さく頷き謝った

恐らくこの男はこの少女の召使いか何かなのだろう

少女からの謝れと言う命令に反抗の1つもせずに

ただ無条件に従ったのだから


「ていうかあなたも!

テリウム如きにいちいちイラつかないでちょうだいよ

ドア開ける前ちょろっとだけ会話聞こえてたけど、

こーんなのでムカついてたら今後苦労するわよ」


少女は笑いとほのかな怒りを混ぜて

僕の方を見る


「ご忠告感謝です……

よく考えれば、

部屋に入っていきなり知らない人がいたら

驚くし、そりゃあ口も悪くはなりますよね……

以後気をつけます  イィッッッッ」


ベットの上で少女に向かって軽くお辞儀をしてみたら

普通に傷口が傷んでしまった 

目線を下に降ろし、体を見てみると

僕は灰色の患者衣を着ていた

その下には前回と同様に包帯がぐるぐる巻きにされている

包帯には泥や血とかの汚れが一切ないから、

きっと誰かが新たに貼り直してくださったのだろう


「あまり動かないでちょうだいね 

一応、両脚にはありったけの治癒魔法をかけたから多少は無理できるけど……

他の部分はなーんにもしてないから,

ここ2週間は安静にしとって!

って……これ言うの2回目な気がするけど笑 

今回は守ってよね!!」


少女の声色から怒りはとうに消えていた

再び優しさと慈愛を帯びて僕に問いかける


「承知いたしました 今回は絶対に守ります」


これは本当だ 

……今のところは

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