表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/8

エピローグ:最終戦争前夜

寝過ごしてしまった。。。

よくわからない感じでおわります。

山奥の村でひっそりと、隠れるように出産の日を迎えた女がいた。

彼女の名はイザベラ。

つい先程無事に子供を生み終えたばかりの彼女は、疲労と安堵から来る眠気に身を任せて夢を見ていた。

外には雲一つない青い空が広がっている。

そう、あの日のように。


--------------------


一年前、イザベラは賢者シルベールの弟子としてある活動に注力していた。

それは手に入れた研究サンプルの繁殖。

・・・早い話が子作りである。


種馬として捕まったのは勇者レオ。

勇者オーバルの父親が浮気の末に作った隠し子である。

彼の母親も既に死亡しており、その出自から山奥で人目につかないようにひっそりと暮らしていたため、シルベール達は彼を研究用サンプルとして確保することに成功した。


本当は女を何人も攫ってきて種付けさせればよかったのだが、このご時世においてはそれだけの女をバレずに確保することは難しかった。

シルベールがいずれ国王、つまり魔王ランドルフと戦う日のためにレオの存在が露見することは避けなければならなかったため、やむなくイザベラが産むという流れになったのである。


「別になんとも思ってないわよ、アンタなんて」


イザベラはレオに対して異性としての特別な感情を意識したことはない。

だが彼の見た目は彼女好みで悪くはなかったので、毎日この少年の上に跨って腰を振ることに対する抵抗はなかった。


重要なことなのでもう一度言及しておこう。

イザベラはレオに対して、異性として特別な感情を持ったことはない。


だが対するレオはそうではなかった。

幼い頃から母親に連れられて人目を避けるように山奥で暮らして来た彼にとって、イザベラは母親以外で初めて見る人間だった。

おまけにそれなりの美人である。

十代半ばのレオよりは一回り近く年上とはいえ、初めて見る年頃の女性が性的な意味も含めて身の回りの世話をしてくれるのだ。

彼が初恋をするには十分だった。


「俺は好きだよ?イザベラのこと」


イザベラに想いを寄せるレオ。

レオを研究用サンプルと性欲の対象としか見ていないイザベラ。


そんな二人の関係に変化があったのは最初に交わってから数か月後のことだった。

イザベラがレオの子を妊娠したのである。


依然としてレオに対しては特別な感情を抱くことの無かったイザベラではあったが、自分の体内に宿った命に対しても同じという訳ではなかった。

彼女は母親として自覚に目覚め、そして最大の懸念事項の存在に思い当たった。


彼女の師匠、賢者シルベールだ。


元々、彼女の子供は彼の研究用サンプルとして望まれていたのである。

これまで彼女が助手として見てきたシルベールの所業を振り返ってみても、生まれてきた子供が碌でもない扱いを受けることはわかりきっていた。

自分がその非道な行いの片棒を担いできたことに関して後悔することはなかったが、お腹の子が実験台にされることに対する恐怖に彼女は悩まされるようになる。

やがてシルベールから逃れる術を模索し始めたイザベラは、シルベールを殺すしかないという結論にすぐに達した。


・・・これが彼女の動機である。


不老不死の肉体を持ち、強力無比な破壊魔法の数々を操る魔王、シルベール。

それが彼女にとって打倒すべき最大の敵となった。


幸いにして機会が訪れたのはそのすぐ後だ。


魔王シルベールに対し、魔王ランドルフから勇者パーティへの参加と魔王ゴマーク暗殺、さらに機会次第では勇者オーバル殺害という命令が下された。

加えて、現存する勇者が世界に一人しかいないことがその直後の女神の託宣で判明したのである。


これに関して最も焦ったのはシルベールだ。

彼は対ランドルフ用の切り札として密かに確保したレオに関しては勇者であることを既に確認していた。

ということは表向き勇者だと思われているオーバルは本物の勇者ではないということになる。

実際、レオがオーバルの父親の不倫の末にできた隠し子であるのと同様に、オーバルもまた彼の母親の不義の末にできた他の男との子供をだったのである。


魔王ゴマークを殺すためには勇者レオを使わざるを得ず、加えて彼がレオを保有しているということとオーバルが偽の勇者であることの二点をランドルフに気付かれないようにする必要があった。

シルベールにとっての危機、イザベラにとっての好機が到来したのである。


魔王シルベールは勇者パーティがコルタナに滞在している間に魔王城を襲撃した後、レオを連れて魔王ゴマークを殺害する計画だった。

ただ、勇者に関しては自然な形で殺す機会が無かったということにして誤魔化そうとしていたことから、彼女はシルベールが勇者レオに対して迂闊に手を出せないと判断した。


シルベールの作戦を聞かされた彼女は早速、子供を守るための作戦を練った。

まだ性別もわからない我が子を守るためには、シルベールを裏をかいて殺し、ランドルフに勇者の血統は絶えたと思わせなければならない。


シルベールを殺さなければ彼女の子供が実験台にされる。

オーバルが偽の勇者だと判明すれば彼女の子供はランドルフに命を狙われる。


それを回避するためにイザベラが考えた作戦。

だが、それにはレオの協力が必要だった。


彼女は意を決してレオに彼女の作戦を告げた。

シルベールを殺すことへの協力、そしてランドルフの目を欺くために彼に死んでほしいということを。

イザベラから死んでほしいと言われたことにショックを受けたレオだったが、それから間もなく覚悟を決めた。


「任せとけよ」


それがイザベラに対するレオの回答だった。


惚れた女を守るため。

生まれてくる子供を守るため。


鎖につながれた檻の中で、彼は自分の命を差し出す決意を固めた。


レオの協力を取り付けた後、イザベラは一旦シルベールの指示通りに行動した。

まずは本物のメラル=コーニーとその兄を殺して遺体が見つからないように処分した。

次に街で隠れるように生きている人々の中から骨格の近い女を探し出し、その女と同じになるように自分の顔を整形した。

手術をしたのはもちろんシルベールだ。

そしてイザベラはメラルを名乗って勇者達の案内人を引き受けた。

ちなみに入れ替わる対象として本物のメラル達を選んだのはイザベラである。

王都での連続強姦殺人事件との関連を疑わせるのが狙いだった。


イザベラは、シルベールが魔王城で魔王ゴマークと魔族達を殺している間にオーバルに接触した。


自分がシルベールの開発した技術によって一時的に魔王の力を得ただけの人間だと告げられて驚いたオーバルだったが、彼女の説得を受けて最終的には協力を約束した。

魔王を倒す、という点に関しては彼も目的は同じだったからである。

勇者の力を持っていないとはいえ、その精神は正しく勇者に相応しかった。


そして勇者パーティが魔王城に到着し魔族の全滅と魔王の不在が判明した後、オーバルは計画通りに魔王城調査のための滞在を提案した。

難色を示したシルベールだったが、彼以外は本当の事情を知らなかったので押し切ることができた。

そして夜になって他のメンバーが寝静まった後、シルベールを呼出したのはイザベラだ。


レオはオーバルの装備を身に着けた。

オーバルはイザベラが用意した装備を身に着けた。


予定では魔王の間で襲撃するはずだったが、扉の前でシルベールが裏切りに気づいたためそこで交戦となった。


本当の勇者であるレオ。

本当の魔王であるシルベール。

シルベールの技術を使い、限定的ながら魔王の力を身に着けたオーバルとイザベラ。


不死の力を持った四人の戦いは、オーバルがシルベールの攻撃を引き受けている間にレオの剣がシルベールに届いたことで早々に決着した。


魔王シルベールの死を確認したレオも自分の最後の仕事を即座に実行に移す。

彼は死んだ直後のシルベールの血を飲んで自害した。


「イザベラ、愛してる。子供は頼んだ」


それが彼の最後の言葉だった。

こうして『勇者オーバルの遺体』は出来上がった。


・・・三人の作戦はこれで完了である。

そしてイザベラは、続けてすぐに彼女一人の作戦に着手した。


まずはレオの遺体を見て傷心しているオーバルを背後から刺した。

シルベールの攻撃で魔王の力を既に失っていたオーバルに抵抗することはできず、あっさりと死亡した。


「なん、で・・・?ごめん、ルーシェ・・・」


オーバルが最後に口にした女の名前が僧侶ルーシェであったことには、流石のイザベラも魔法使いシルヴィアに同情した。


そして彼女は城内の他の人間たちも処分しに取り掛かった。

最初に手に掛けたのは魔法使いである。


本当は戦士か僧侶を殺そうと考えて部屋に向かったのだが、その二人は僧侶の部屋で激しく求めあっていた。

僧侶は処女を装って勇者と清い付き合いをしていたが、実際には密かに戦士と麻薬を使った肉体関係有りの付き合いをしていたことは既に調べがついていた。


レオとイザベラの心のつながりはレオからの一方通行。

だが体の関係は相思相愛でバッチリ、子供もできた。


オーバルとルーシェの心のつながりもオーバルからの一方通行。

だが体の関係は一切なく、ルーシェは他の男とつながっていた。


最初にこのことを知ったとき、イザベラはレオよりも悲惨な男がいることに正直驚いたものである。

・・・だからと言ってどうというわけではなかったが。


ちなみにパイプからの吸引では満足できなくなった僧侶が注射器による薬物接種を初体験していたのは偶然だったが、この二人が盛っているであろうことはイザベラにも予想出来ていた。

廃人のような喘ぎ声を上げる僧侶ルーシェと、その上で一心不乱に腰を振る戦士アドン。

ここで殺すと後の偽装工作が面倒になりそうだったので後回しにすることにした。


僧侶の部屋は城の西側。

東の部屋にいる魔法使いを殺そうと再び魔王の間の前に向かった時、そこには既に魔法使いがいた。

オーバルの遺体の前に座り込んで呆然自失となっている魔法使いの顔を、イザベラは気付けの振りをして力いっぱい殴った。

その後、なだめる振りをして魔法使いの部屋で毒入りの紅茶を飲ませて殺害した。


イザベラは再び僧侶の部屋に戻ったが、二人の行為はまだ続いていたので終わるのを待った。

服を着て部屋を出ようとドアを開けた戦士アドンに風魔法を叩きつけて吹き飛ばしてから頭を貫いて殺害。

さらに部屋の中で未だ朦朧としたままの僧侶も首を絞めて殺した。


目標を全員殺し終わった彼女は、次に偽装工作に取り掛かった。


シルベールの遺体は服を脱がせて玉座に置いた。


オーバルの遺体は、まずシルベールの部屋で体内の血を部屋中に巻き散らした。

そして血を拭きとった後、地下の焼却炉で焼いた。


アドンの遺体は一度戦士の部屋に持っていき、さらに傷つけて部屋に血を撒いた。

ここでも血を拭きとってから、再び僧侶の部屋に移動させて頭を割って中身を飛び散らせた。


ルーシェの遺体は体を拭いて服を着せた。


魔法使いの遺体はオーバルの隣に寝かせて手を組ませた。

彼女の部屋でシルヴィアとメラルが二人で寝たかのように枕を二つ並べた。


これで魔王城の偽装は完了だ。


あとはでっち上げの遺書を持って魔王ランドルフの所に行き、わざとマークされた後で整形のモデルになった女の方を殺させた。

自分の顔を整形でさらに変えてから、偽名を使って何食わぬ顔で山奥の村に移り住んだのである。


--------------------


眠っていたイザベラは突如として悪寒に襲われて目を覚ました。

窓から見える空はまだ青いままだ。


「あら、お目覚め?」


イザベラは窓とは反対方向から聞こえた声に驚いて振り返った。

どこかで聞いた声ようなだと思いながら。


「なんで・・・、あなたが・・・」


そこにいたのは魔法使いシルヴィアだった。

魔法使いらしいとんがり帽子に黒いローブを纏い、右手にはペンより少し長いぐらいの杖、左手には白い布で巻かれた『何か』を抱えていた。

イザベラにはそれが何かはすぐにわかった。


・・・生まれたばかりの彼女の息子だ。


手元に武器になりそうなものは無い。

そして疲労困憊で碌に動かせない自分の体に、人質に取られた子供。

彼女はシルヴィアに対して驚愕と敵意の視線を向けることしかできなかった。


「あら、何その幽霊でも見たみたいな顔。ああ、お産婆さんならそっちで眠ってるわ。・・・もう起きることはないけど」

「あなたは死んだはずじゃ・・・」


イザベラは魔法使いに飲ませた毒の分量を間違えてなどいない。

むしろ十分過ぎるほどの毒を盛ったし、それで魔法使いが死んだことをしっかりと確認した。

イザベラは目の前のシルヴィア=ネクロが賢者シルベールと同等レベルの魔法の才を持った人物であったことを思い出す。


「まさか、ネクロマンス・・・?」


それは御伽噺の中にのみ存在する、伝説の魔法の一つ。


「さあ、どうかしら?何にしたって、あなた達の考えなんてお見通しってこと。だいたい、オーバルとは子供の頃からの付き合いなのよ?あれがあいつの死体じゃないことぐらいすぐにわかるわ。ていうか、あのニブちんはそもそも勇者じゃないし」


イザベラは彼女の最後の一言に目を見開いた。

シルヴィアは気が付いていたのだ、オーバルが本当の勇者でないことに。


「そんな・・・、どうやって・・・」


本当の勇者であるかどうかは勇者と魔王の血を混ぜてみればわかる。

だが彼女にそんな機会は無かったはずだ。

シルベール、ゴマーク、ランドルフ、いずれの魔王の血も手に入れることはできなかったはずだ。


そしてオーバルにはシルベールによって一時的に不死に近い力が与えられていた。

不完全ながら、間違いなく人外の力である不死を持ったオーバルが勇者ではないとなぜわかる?


「それをあなたに教えると思う?」


シルヴィアはイザベラの心中を見透かすかのように答えた。

右手の杖を静かにイザベラに向ける。


「先に喧嘩を売ったのはあなたよ?この子が生まれるまで待ってあげただけ感謝することね」

「・・・その子をどうするつもり?」

「知ってどうするの?大事な勇者の血統だもの、ありがたく使わせて貰うことにするわ」


一瞬の静寂。


イザベラは我が子を取り戻そうと、力を振り絞ってベッドから勢い良く飛び上がろうとした。


ドンッ!!!!


容赦なくシルヴィアの風の刃が彼女に叩きつけられる。

ベッドごと切断されたイザベラの体が床に転がった。


再びの静寂。


「ふん、オーバルとヴィンセントが世話になったわね」


彼女の腕の中で何も知らずに眠り続ける子供を抱え、シルヴィアは静かにその場を立ち去った。


魔法使いシルヴィアがイザベラへの復讐を完了して彼女の子供を連れ去った頃、別の土地でも同じようにひっそりと出産を終えた女がいた。

彼女の名はドロシー=カタロニア。

今はクレア=ハントと名乗っている。


「ほら、元気な女の子だよ」

「よかった・・・」


無事に生まれたばかりの我が子を産婆から渡された彼女は、目に涙を浮かべていた。

彼女にとって出産はこれで三度目だったが、自分で望んで産んだのは今回が初めてだ。


彼女はこれ以前に産んだ二人の子供。

一人目は魔王シルベール。

二人目は魔王ゴマーク。

どちらも父親は魔王ランドルフだが、別に彼女自身が望んで産んだわけではない。


魔族内において、サキュバスであった彼女の地位は低く、後継者を望むランドルフのために生む道具として使われただけだ。

サキュバスに生まれたとはいえ、彼女は元来それほど性に奔放な性格ではない。

二人の魔王を産んだことで魔族内での彼女の地位は向上したが、それと引き換えに彼女は胸の内に自己嫌悪を抱えながら生きることになった。

性行為も出産ももう嫌だ、それが彼女の本音だった。


その感情に変化が現れたのはここ十年。

彼女は人間の男、ヨハン=ハントに恋をしていた。

ドロシーが魔族であることなどまるで知らない男。

彼の自然体で力の抜けた態度に接している間、彼女は悩みを忘れることができた。

魔族であること隠しつつ、それとなく口実を作っては彼と一緒に時間を過ごす。

彼女の人生において初めての乙女らしい日々。


だがそれもある日終わりを告げた。

ヨハンが監視リストに入ったのである。


王宮内は魔王ランドルフを頂点に、魔族がその正体を隠して支配している。

そのことに気づく可能性があり、かつ懐柔できないと判断されたものが密かに入れられるのが監視リストだ。

そこに名前が入った人間は、魔族の支配に気がついたと思われる行動を取った時点で暗殺が実行される。


そして魔王城での調査中、ヨハンは国王ランドルフが魔王である可能性に気がついてしまった。

この時点で彼の殺害は決定したのである。


魔王ランドルフの恐ろしさはドロシーの心と体に染み付いていた。

故に逆らうことなど考えられなかった。

どの道、彼女がやらなくとも別の誰かが彼を殺す。

あの魔王が彼を見逃すことなど考えられなかった。

彼女は自分の手でヨハンを殺害することを決断した。


ナイフでもなく、魔法でもなく、彼女自身のサキュバスとしての能力のみで精を絞り尽くして殺すという方法を選んだのは、あるいは彼女のささやかな抵抗だったのかもしれない。

同時にそれはその夜の彼女にできた精一杯の愛情表現だったと言っていい。

ドロシーは全力でヨハンを愛したし、ヨハンとて戸惑いつつもそれに応えた。

少なくともその夜だけを切り取ってみればそう悪いものでもなかったのである。


かくして、ドロシーの初恋は自分の手でヨハンを殺すという形で幕を降ろした。

・・・そう、これで全てが終わってしまったのだと彼女は思っていた。


だが数ヶ月後、一人密かに泣く日々から脱しつつあった彼女の体に変化が起こる。

ヨハンの子を妊娠していたのである。


寿命によって死ぬことのない魔族は人間に比べて繁殖能力が低い。

生殖以外の目的でも性行為を行うサキュバスはその中でもさらに低い部類に入る。

ヨハンが同じ魔族、特に生殖能力の高いインキュバスであったのならともかく、人間である彼の子を一晩の関係で孕むことなどまず考えられなかった。

だが彼が死に至るまで交わり続け、文字通り一滴残らず精を擦りとったことが功を奏したのか、その一晩だけの関係で彼女は実際にヨハンの子を宿した。


人間と魔族のハーフ。


このまま魔王ランドルフの下にいれば、この子供がどのような扱いを受けるかわからないということに彼女はすぐに考えが及んだ。

ヨハンを殺した後悔に苛まれていた彼女は一人でヨハンの子を育てていくことを決意し、密かに王都から姿を消したのである。


今、ドロシーは生まれたばかりの我が子を抱いて窓から空を見ている。

外には雲一つない青い空が広がっていた。

もしかしたら、それは彼女の決意に対する女神からの祝福だったのかもしれない。

あるいは、やがてこの世界に訪れるであろう明るい未来を歓迎していたのかもしれない。


シルヴィアの腕に抱かれた男の子。

ドロシーの腕に抱かれた女の子。


こうして同じ日に生まれた二人の男女はやがて出会い、世界を巻き込んだ魔王ランドルフとの最終戦争に臨むことになるのだが、それはまた別の話だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ