調査隊隊長の失踪
この辺から自分でも書いていてよくわからない感じになります。
昼下がりの午後。
国王ランドルフは自室で本を読んでいた。
静かな部屋にノックの音が響く。
「入れ」
「失礼致します」
「ドロシーか」
入ってきたのは魔王城の調査から帰還したばかりの調査隊隊長ドロシーだった。
ヨハンには見せたことのない冷たい空気を纏っている。
その彼女が金髪を揺らして王の近くに跪いた。
「どうだった?」
「はい。勇者オーバル、ゴマーク様共に死亡。さらにシルベール様もお亡くなりになられました」
「シルベールのやつもか。勇者とゴマークの始末は成功したのだな?」
「はい。シルベール様は当初の予定通り、勇者を利用してゴマーク様の暗殺に成功したようです。ゴマーク様の遺体は寝室の隠し部屋の奥にありました」
寝室の隠し部屋、というのは魔王の寝室の下にあった大量のエロ本が隠された部屋のことである。
魔王ゴマークの遺体はその一番奥に隠されていた。
実際にそれを確認したのは彼女と寝室を担当した隊員の二人だけだ。
「ですが、その後勇者を始末する際に失敗し同士討ちとなったようです。懐柔しきれなかったのか、あるいは手を読まれたのか、その辺りまでは詳しくわかりませんでした」
「あやつのことだ。調子に乗って詰めを誤ったのだろう」
「・・・どうやら勇者に協力した者がいたようです。それによってシルベール様は亡くなってしまったと思われます」
国王ランドルフは眉間に皺を寄せた。
「・・・誰だ?」
「シルベール様の弟子イザベラです」
「イザベラ?聞かん名だな?そもそも、奴に弟子がいたというのも初耳だ」
「表には出しておりませんでしたので。シルベール様の表向きの顔は破壊魔法学の権威。どうやら違法な実験、特に倫理的に問題になる類の実験のために使っていたようです」
「裏の仕事をやらせていたのか?なるほど、道理で聞かんわけだ」
国王はドロシーの方向を向くことなく、本に視線を落としたままで顎髭を撫でた。
彼女の方も視線を床に落としたままだ。
「状況証拠からの推測になりますが、イザベラはシルベール様が勇者を懐柔する際に手足として動いた後、ゴマーク様の死亡を確認してから今度は勇者にシルベール様が魔王であることを伝えて戦わせたと思われます。その結果が相打ちかと」
「駒を信用しすぎるとは、やはり詰めが甘かったようだな」
「その後、残りの者たちも処分して偽装工作を行った後、陛下の前に姿を現したものと思われます」
「・・・ということは事の顛末を知っているということになるな?」
「はい」
本のページをめくろうとしていたランドルフの指が止まる。
「監視は続けてさせているはずだ。・・・後で処分させるか。他に息のかかっていない者の中でこの件を知っている者はおらんだろうな?」
「大丈夫です」
「ならいい。ご苦労だった、下がってよいぞ」
「はっ」
退室していくドロシーに対し、手元の本から一切視線を逸らすことなく国王、否、魔王ランドルフは思案した。
後継者にと考えていたシルベールを失ったのは痛いが、これで勇者の血統は完全に絶えた。
彼の口元に自然と笑みが浮かんでくる。
これで自分の命を脅かすものはもういない。
ついに完全な意味での不死の存在になったのだと。
一カ月後、コルタナの街に隠れるように住んでいた一人の女が覆面の男たちに拉致された。
拉致した男たちは彼女の顔に整形の痕が無いことを確認した後、首を絞めて殺害してから遺体に重りを巻き付けて海に沈めた。
彼女の顔は、数か月前に国王ランドルフに勇者パーティの全滅を伝えに来た女にそっくりだったという。
調査隊隊長のドロシーが行方不明になったのは、そのさらに一ヵ月後のことである。
王宮内にある彼女の部屋には私物を含めてほとんどの物が残されており、その中からいくつかのメモが見つかった。
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●シルベールによる、勇者オーバルを利用した魔王ゴマークの暗殺及びシルベールと勇者の同士討ちについて
当初の予定通り、シルベールは自分自身が魔王であることを伏せたままで勇者オーバルの懐柔に成功したと思われる。
シルベールは勇者パーティが魔王城に到着するよりも前に転移魔法で魔王城を襲撃し、ゴマーク以外の魔族を全員殺害。
ゴマークを動けなくした状態で魔王寝室の隠し部屋に監禁してから、再び転移魔法で勇者パーティに復帰、一緒に魔王城へと移動した。
死亡している魔族達を発見した勇者パーティが魔王城に宿泊するように誘導した後、勇者を連れて魔王寝室の隠し部屋に行き魔王ゴマークの殺害を完了するも、その後に勇者と交戦し相打ちとなって死亡。
二人の交戦は、シルベールが勇者を処分しようとしたために起こったのか、あるいか勇者がシルベールも魔王であることに気が付いたために起こったのかは不明。
だが、同士討ちの場所が魔王の間の前であったことから、どうやらイザベラがシルベールの正体を事前に勇者に漏洩させていた印象が強い。
シルベールは油断した勇者を魔王の間で襲撃し、死ぬ前に種明かしをしようとしていたと推測される。
(これに関してはあの子の性格からしてまず間違いない。)
にもかかわらず何もなく魔王の間を出るところまで進んだということは勇者が隙を見せなかったということになる。
味方であるはずの賢者を警戒していたということはシルベールの正体にも気が付いていた可能性が高い。
●シルベールとオーバルの同士討ちの後のイザベラの行動について
勇者パーティの後から魔王城に潜入したイザベラは両者の相打ちを確認した後、残りのメンバーの殺害に着手した。
まずは僧侶であるが、戦士が僧侶に薬物を注射してレイプした後で殺害した。
戦士は僧侶の次に今度は魔法使いをレイプしようとして彼女が男であることに気が付き、中断して再び僧侶をレイプしようと部屋に戻ったところを殺した。
戦士にレイプされかかった魔法使いは傷心し、思いを寄せていた勇者の死もあって自害。
最後に残った本物の案内人メラルは、賢者が魔王であることを隠すためにシルベールの部屋で殺害した。
その後、偽装工作を行い、魔法使いを犯人に仕立て上げてメラル=コーニーとして王宮へ姿を現した。
本物のメラル=コーニーは城の地下の焼却炉で処分された。
*義理の兄が行方不明になっていることを確認した。おそらく義理の兄も隠蔽のために処分されたと思われる。
●イザベラの動機について
不明。
王宮が既に魔族に支配されていることに危機感を抱いていた可能性が高い。
イザベラ自身は人間。
陛下が魔王であることにも気が付いた様子。
急いで消す必要がある。
●魔法使いの性別について
過去に弟ヴィンセントが死亡したことになっているが、おそらく実際に死んだのは姉シルヴィアの方。
姉の身分証明書を使って姉に成りすましていたと見られる。
目的は勇者オーバルに近づきたかったからで間違いない。
●副隊長ヨハンについて
国王陛下が魔王であることに気が付いたため処分した。
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最後の副隊長ヨハンに関するメモだけは筆跡が大きく震え、ところどころに水滴で濡れたような跡が残っていた。




