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俺の知ってる戦国時代と違う! ~歴史知識が通じない世界で、優秀すぎる家臣たちが天下を目指す~  作者: チャプタさん


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第八十話 天下の魔王

第八十話 天下の魔王


京にまで、その評判が届くようになった頃、拠点には、これまでの日々の積み重ねを、改めて実感させる、様々な出来事が続いていた。しかし、そんな中でも、私自身の日常は、意外にも、変わらぬものであった。連日の緊張と、押し寄せる責任の重さに、私は、これまで以上に、精神的な限界を感じることが、多くなっていたのである。


ある日、拠点の広場には、保護圏の各地から、代表者たちが、これまでにない規模で、集結していた。京での噂が広まったことを受け、この機会に、改めて、今後の方針を、確認するための会議が、開かれることとなっていたのである。


私は、その会議の開始を前に、これまでにない重圧を感じていた。(京まで噂が届くなんて、正直、俺には、まだ、実感が湧かない。この会議で、みんなが、どんな話をするのか、考えるだけで、胃が痛くなりそうだ)


会議が始まる直前、私は、これまでの疲労が、一気に押し寄せてくるのを感じた。頭が重く、視界が微かに歪む。(もう、限界だ……。これ以上、この重圧に、耐えられない)


私は、その場で、ついに、意識が朦朧とするのを感じた。誰かが、私の名を呼ぶ声が、遠くから聞こえてくるような気がした。しかし、私は、その声に応える気力すら、もはや残っていなかった。私は、その場で、静かに、深い眠りへと落ちていったのである。


会議の場は、突然の私の様子に、一瞬、動揺の色を見せた。しかし、四天王たちは、すぐに、いつもの解釈へと切り替えていった。


「殿は、この重大な局面において、あえて、深い熟考に入られたのだ」一益が、落ち着いた声で告げた。「我らは、殿の御下知を待つのではなく、これまでの殿の御方針を胸に、自らの判断で、事に当たらねばなるまい」


こうして、私が意識を失っている間、四天王を中心とした会議は、私の与り知らぬところで、着々と進められていった。集まった保護圏の代表者たちは、これまでの経験を踏まえ、今後の連携について、活発な議論を交わしていったのである。


数時間後、私は、ようやく意識を取り戻した。目を開けると、拠点の一室に、静かに横たわっている自分に気づいた。傍らには、心配そうな表情を浮かべた、お市の姿があった。


「兄上……。お目覚めになられたのですね」お市が、安堵の声を漏らした。


私は、ぼんやりとした頭で、身を起こした。「会議は、どうなったんだ?」


利家が、その場に現れ、誇らしげに報告した。「殿、御安心くだされ。殿の御沈黙の間、保護圏の代表者たちは、これまでの絆を、さらに確かなものへと、深めることができました」


私は、その報告に、複雑な思いを抱いた。(俺が倒れている間に、みんなが、ちゃんと物事を進めてくれていたのか……)


一方、この会議の様子は、集まった代表者たちを通じて、それぞれの地域へと、詳細に伝えられていくこととなった。誰かが、感慨深げに、こう漏らしたという。


「殿は、我らがおらねば、東海は乱れると、そこまで案じておられるのだ。されど、その御心を、決して表に出すことなく、あえて、静かに構えておられる」


この言葉は、瞬く間に、保護圏全体に広まっていった。「天下は誰を望むか」――そんな言葉が、各地の代表者たちの間で、静かに、しかし確かに、囁かれるようになっていったのである。


私は、その頃、こうした評判の広がりなど、まったく知らぬまま、ただ、体調の回復に努めていた。ある日、私は、藤吉郎に、率直な想いを打ち明けた。「なあ、藤吉郎。俺、正直、最近、疲れることが多くなった気がするんだ」


藤吉郎は、心配そうな表情を浮かべた。「殿。御無理はなさらないでくださいませ。この藤吉郎ら四天王が、いる限り、殿一人が、すべてを抱え込む必要はございませぬ」


私は、その言葉に、深い感謝の念を抱いた。「本当に、ありがとう。みんながいてくれるから、俺は、こうして、まだ、頑張れているんだと思う」


その夜、私は寝所で一人、これまでの日々を、改めて振り返っていた。桶狭間の敗戦から始まった、絶望的な逃避行。それが、こうして、東海一円、そして遠く京にまで届く評判へと、繋がっていくとは、まさに、想像を超えた展開であった。


(俺は、天下とか、そんな大それたものは、望んでいない。でも、いつの間にか、俺の存在そのものが、天下という舞台の一部になり始めているのかもしれないな)


その素朴な、しかし、確かな感慨を胸に、私は、静かに眠りについたのだった。こうして「尾張の魔王」は「天下の魔王」と呼ばれ始め、第3部後半は、新たな、より大きな局面へと、その幕を、静かに開いていくこととなるのである。


――第3部後半・完――

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