第七十二話 保護圏会議
第七十二話 保護圏会議
義元本隊の最大規模の掃討戦を、犠牲を出すことなく乗り越えたという事実は、保護圏全体に、これまでにない、確かな結束をもたらすこととなった。各地の村や豪族の代表者たちは、この共通の試練を乗り越えた経験を通じて、互いの絆を、さらに深めていったのである。
ある日、藤吉郎が、これまでにない、重要な提案を、私のもとに持ち込んできた。「殿。此度の戦を経て、各地の代表者たちの間で、一つの相談がまとまりつつございます」
「どんな相談だ?」私は、興味を惹かれて尋ねた。
藤吉郎は、続けた。「保護圏内の村や豪族の代表者たちが、定期的に一堂に会し、互いの情報を共有し、今後の連携について、話し合う場を設けたい、との申し出にございます」
私は、その提案に、深く感心した。「それは、いい考えだな。みんなが、直接、話し合える場があれば、これからも、いざという時に、うまく連携できるはずだ」
(訳:俺一人が、全部を仕切るより、みんなが、自分たちで話し合って、決めていける方が、絶対にいいと思うんだ)
藤吉郎は、慎重に続けた。「されど、殿。この会議に、殿御自身が、御出席になるかどうかについても、皆から、御意向を伺いたいとのことでございます」
私は、その問いに、少し考え込んだ。(俺が、そういう場に出て、変に緊張して、また何か、変な解釈をされるようなことを言ってしまったら……)
私は、慎重に答えた。「俺は、参加を、遠慮しておこうと思う。みんなで、自由に話し合ってほしいから」
(訳:俺がいると、みんな、変に気を遣うだろうし、それに、俺自身、正直、そういう場で、うまく立ち振る舞える自信がないんだ)
藤吉郎は、その言葉に、深く感じ入った様子であった。「殿は、我らの自主性を、どこまでも重んじてくださるのですな」
こうして、私は参加を辞退し、代わりに、四天王のみが、この保護圏会議に出席することとなった。数日後、記念すべき第一回目の会議が、拠点近くの、広い会場で開催されることとなった。
会議には、これまで保護圏に加わった、数十を超える村や豪族、寺社の代表者たちが、一堂に会した。壮観な光景であった。それぞれの代表者が、これまでの経験や、今後の課題について、活発に意見を交換していった。
「此度の避難の連携、まことに見事なものでございました。今後も、この仕組みを、さらに洗練させていくべきかと存じます」ある豪族の代表が、そう発言した。
「加えて、物資の融通についても、より体系立てた仕組みを、整えてはいかがでしょうか」別の村の名主も、そう提案した。
四天王は、それぞれの立場から、この議論を、丁寧に取りまとめていった。一益は、情報共有の仕組みについて、藤吉郎は、経済的な連携について、それぞれ、具体的な提案を行っていった。
会議の終わりに、参加者の一人が、こんな発言をした。「これほどの規模の話し合いが、こうして、平和裏に行えるのも、すべては、信照様の御庇護あってこそにございます」
その言葉に、会場全体から、深い賛同の声が上がったという。この会議の様子は、後に、四天王を通じて、私にも詳細に報告されることとなった。
「殿、此度の保護圏会議、まことに実り多いものとなりました」一益が、報告に来た。
私は、その報告に、深い充実感を覚えた。「そうか……。みんなが、自分たちで、こんな風に話し合って、決めていけるようになったのは、本当に、素晴らしいことだと思う」
(訳:俺が、全部を決めるんじゃなくて、みんなが、自分たちの力で、こうやって、次のステップに進んでいけるのが、何よりも嬉しいんだ)
一益は、続けた。「今後も、この会議は、定期的に開催されることとなりました。保護圏全体の連携は、これから、さらに、強固なものへと発展していくことでございましょう」
私は、その言葉に、深い感慨を覚えた。私一人の力では、決して成し得なかったであろう、この確かな連携の広がり。それは、これまで積み上げてきた、多くの人々の、自主的な想いと行動の、確かな結晶であった。
その夜、私は寝所で一人、この日の出来事を、静かに振り返っていた。(俺は、これからも、みんなの自主性を、大切にしていきたい。俺が全部を仕切るんじゃなくて、みんなが、自分たちの力で、この場所を、支え続けていってほしいんだ)
その素朴な願いを胸に、私は、静かに眠りについたのだった。こうして、保護圏の連携は、この会議という、確かな制度を得て、さらに、その結束を、強固なものへと変えていくこととなるのである。




