↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の知ってる戦国時代と違う! ~歴史知識が通じない世界で、優秀すぎる家臣たちが天下を目指す~  作者: チャプタさん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
71/125

第七十一話 戦わない勝ち方

第七十一話 戦わない勝ち方


義元本隊による、最大規模の掃討戦が、実質的に失敗に終わった後、拠点には、これまでにない、確かな安堵の空気が流れていた。しかし、その一方で、四天王の中には、この戦いの結末に、複雑な思いを抱く者もいた。


ある日、利家が、私のもとを訪れ、率直な想いを打ち明けた。「殿。此度の戦、我らは、一度も、正面から今川方と刃を交えることなく、勝利を収めました。されど、それがしは、正直なところ、少し物足りなさを感じております」


私は、その言葉に、少し驚きながら答えた。「物足りない……?」


利家は、続けた。「これほどの大軍を相手に、我らは、避難と、兵站の圧迫だけで、勝利を収めたのでございます。それがしのような武士にとっては、正面から敵を打ち破ってこそ、真の武功と申せましょう。されど、此度の戦いでは、それがし自身、槍を振るう機会すら、ございませんでした」


私は、その正直な想いに、深く考え込んだ。(利家の気持ちも、分からなくはないよな。武士として、正面から戦って、成果を上げたいっていう想いも、きっと、間違ってないんだと思う)


私は、慎重に言葉を選びながら答えた。「利家、俺は、正直、戦い方に、こだわりはないんだ。ただ、誰も死なずに、みんなが、また、普通の生活に戻れる――それだけが、俺にとっては、一番大事なことなんだよ」


(訳:本当に、単純な理由なんだけど、死ぬ人がいないっていうことが、俺にとっては、何よりの勝利なんだ)


私は、続けた。「死ななきゃ勝ちなんだ。それでいいんじゃないかな」


その一言に、利家は、しばし、深く考え込んだ様子であった。彼の脳裏には、これまでの、数々の戦の記憶が、去来していたのであろう。正面から敵を打ち破ることに、確かな誇りを見出してきた彼にとって、この言葉は、これまでの価値観を、大きく揺さぶるものであった。


「死ななきゃ勝ち……」利家は、その言葉を、噛みしめるように繰り返した。「なるほど……。それがしは、これまで、武功とは、敵を打ち破ることのみにあると、そう考えて参りました。されど、殿の仰る通り、誰も死なずに、目的を達成する――それもまた、確かな勝利の形なのやもしれませぬ」


私は、その様子を見て、少し安堵しながら続けた。「利家、お前の武勇は、これまで、俺たちを、何度も救ってくれた。それは、絶対に、忘れちゃいけない、大事なことだと思う。ただ、それを、いつも使わなきゃいけないってわけじゃないと思うんだ」


利家は、深く頭を下げた。「殿の御言葉、この利家、心に刻みまする。真の強さとは、力を誇示することではなく、必要な時に、必要な形で、それを振るうこと――この理を、改めて、学ばせていただきました」


私は、その言葉に、少し照れくささを覚えながらも、素直な喜びを感じていた。(利家が、こんな風に、考えを深めてくれるなんて、正直、思ってもみなかったよ)


この会話は、四天王全体の間でも、静かに、しかし確かな変化をもたらすこととなった。一益は、この変化について、他の家臣たちに、こう語っていたという。


「殿は、決して、戦そのものを、否定しておられるわけではない。ただ、いかなる形の勝利であれ、誰かの命が失われることを、何よりも、避けたいと願っておられるのだ」


数日後、私は、拠点の広場で、利家が、若い兵たちに、槍の稽古をつけている姿を目にした。彼の表情には、これまでとは、少し異なる、穏やかな充実感が、浮かんでいるように見えた。


「利家、稽古、頑張ってるな」私は、声をかけた。


利家は、笑顔で答えた。「殿。この技を、実際に振るう機会が、少なければ少ないほど、それは、まことに、良きことなのでございましょうな」


私は、その言葉に、深く頷いた。「そうだよ。お前たちの力は、いざという時に、みんなを守るためのものなんだから」


その夜、私は寝所で一人、この日の会話を、静かに振り返っていた。(利家の考え方も、少しずつ、俺の想いに近づいてきてくれているのかもしれないな)


その素朴な感慨を胸に、私は、静かに眠りについたのだった。「戦わない勝ち方」――この新たな価値観は、こうして、四天王それぞれの心に、確かに根付いていくこととなるのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。