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俺の知ってる戦国時代と違う! ~歴史知識が通じない世界で、優秀すぎる家臣たちが天下を目指す~  作者: チャプタさん


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第六十六話 武田家の興味

第六十六話 武田家の興味


尾張の魔王という評判が、東海一円に広まりつつあった頃、遠く甲斐の武田家では、この不可思議な存在に対する興味が、さらに深まりつつあった。以前、密かに派遣された間者からの報告は、「本性を隠しているのではないか」という、疑念混じりの内容であったが、その後も、様々な形で、信照についての情報が、武田家に集まり続けていたのである。


ある日、武田家の重臣の一人が、居城の一室で、これまでの情報を、改めて整理していた。彼の傍らには、これまで集められた、信照に関する、様々な報告書が、山のように積まれている。


「これまでの報告を、改めて見返してみると、実に興味深い」重臣は、独り言のように呟いた。「戦えば必ず勝つわけではないが、決して大敗もせぬ。奪わず、支配せず、それでいて、確実に勢力を拡大していく。しかも、その者自身は、常に、居眠りをしているだけのように見える」


重臣は、しばし考え込んだ後、続けた。「これは、単なる、無能な若者の幸運が、たまたま続いているだけなのか。あるいは、我らの理解を超えた、まったく新しい形の統治者なのか」


この議論は、武田家の家臣団の間で、密かに、様々な意見を呼び起こすこととなった。ある家臣は、こう主張した。「あの者は、恐らく、深い策略を、決して表に出さない、稀代の智将にございましょう。表向きの無為は、すべて、演技にございます」


別の家臣は、異なる見解を示した。「いや、それがしは、むしろ、逆のように思われます。あの者は、本当に、ただ、その場その場の状況に、素直に反応しているだけであり、その素朴さこそが、周囲の者たちの、深い忠誠を引き出しているのではございませぬか」


この議論は、なかなか結論を見ないまま、続けられていった。やがて、この議論は、武田家当主の耳にも届くこととなった。当主は、しばし、家臣たちの議論に耳を傾けた後、静かに、こう告げたという。


「いずれの見方が正しいかは、まだ、分からぬ。されど、いずれにせよ、この者、決して侮ってはならぬ存在であることは、確かであろう」


この言葉により、武田家では、信照という存在を、単なる噂話としてではなく、確かな脅威、あるいは、興味深い可能性として、注意深く見守っていくという方針が、改めて確認されることとなった。


拠点においては、私は、こうした武田家での深い議論など、まったく知らぬまま、日々の平穏な生活を、続けていた。ある日、一益が、遠く甲斐からの、さらなる情報を、私にもたらした。


「殿、武田家では、殿についての議論が、いまだに続いておるようにございます。ある者は、殿を、稀代の智将と見なし、また別の者は、殿の素朴さこそが、真の魅力だと考えているようにございます」


私は、その報告に、思わず苦笑した。「え、俺のこと、そんなに真剣に議論されてるのか。正直、ちょっと、恥ずかしいな」


(訳:どっちも、正直、当たっていないような気がするんだけど……。俺は、ただ、単純に、怖がりながら、その場しのぎで生きてるだけなんだから)


一益は、静かに続けた。「殿。この議論そのものが、殿の御高名が、いかに広く、そして深く、諸国に浸透しているかの、確かな証にございます」


私は、その言葉に、複雑な思いを抱いた。「そうか……。俺、そんな大層な議論の対象になるような人間じゃないと思うんだけどな」


その夜、私は寝所で一人、遠く甲斐の武田家での議論について、改めて考えていた。(俺のことを、そんな風に、真剣に分析してくれる人たちがいるなんて、正直、まだ、実感が湧かないよ。でも、もし、いつか、そういう人たちと、直接、話す機会があったら、どんな風に、話せばいいんだろうな)


その素朴な想像を胸に、私は、静かに眠りについたのだった。武田家における、この密やかな興味と分析は、いずれ、後の展開において、より重要な意味を持つことになるのだが、この時の私は、まだ、その未来を、正確に予見することはできなかったのである。


その頃、武田家当主は、家臣たちに、静かに、こう命じていたという。「敵と決めつけず、見極めよ。この者、いずれ、我らにとって、無視できぬ存在となるやもしれぬ」


この一言は、後の東海地方の勢力図に、確かな影を落とすこととなる。しかし、それは、まだ、先の話であった。

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