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俺の知ってる戦国時代と違う! ~歴史知識が通じない世界で、優秀すぎる家臣たちが天下を目指す~  作者: チャプタさん


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第二十四話 尾張北部の願い

第二十四話 尾張北部の願い


保護圏という仕組みが、拠点周辺の村々に少しずつ根付き始めていた頃、これまで距離を置いていた尾張北部の豪族たちからも、次第に接触が増えるようになっていた。北部は、南部に比べて今川方の影響力がまだ強く残っており、これまで拠点との関わりを持つことに慎重であった地域である。


ある日、拠点に、これまでとは明らかに格式の異なる使者が訪れた。立派な装束を纏い、丁寧な口上を述べるその姿は、これまでの村の名主や小豪族の使いとは、一線を画していた。


「それがし、尾張北部にて代々続く豪族、佐々家に仕える者にございます。当家の当主より、信照様への御目通りを願う書状を、お預かりして参りました」


私は、その書状を受け取りながら、内心で緊張を覚えていた。(佐々家……確か、この時代、尾張北部で一定の勢力を持っていた豪族だったはずだ。そんな家が、わざわざ使者を寄越すなんて)


書状には、丁寧な言葉で、今川方の圧力に苦しむ現状と、拠点への協力を求める旨が記されていた。私は、その内容を四天王たちに伝え、対応を協議することにした。


「佐々家は、これまで今川方に従いつつも、内心では強い不満を抱いていたと聞き及びます」一益が、情報網を通じて得た知識を披露した。「今川方からの過酷な要求に耐えかね、ついに我らを頼ることを決意したのでございましょう」


私は、その説明を聞きながら、複雑な思いを抱いていた。(また新しい勢力が加わるのか……。正直、これ以上、責任が増えるのは怖いんだけど)


軍議の場で、私はためらいながらも、正直な想いを口にした。「北部の豪族が、我らを頼ってくれるのはありがたい。でも……俺たちが、彼らを完全に統治するなんて、無理だと思う」


(訳:これ以上、面倒事を抱え込みたくない。でも、困っている人を無下にはできないし……)


利家が、少し不思議そうに問うた。「殿、それはどういう意味でございましょうか」


私は、必死に言葉を選びながら答えた。「統治するんじゃなくて……自分たちで治めてもらえばいいと思う。俺たちは、ただ、今川の圧力から守るだけでいい」


その言葉に、居並ぶ面々が、しばし沈黙した。やがて、一益が静かに口を開いた。


「なるほど……。殿は、佐々家の自主性を重んじ、あくまで『保護』の枠を超えぬようにと、そう仰せなのですな」


「あ、うん、まあ、そういうことになるかな」私は曖昧に頷いた。


藤吉郎も、深く感じ入った様子で続けた。「これぞ、殿が一貫して貫いてこられた御方針。力ずくで支配するのではなく、あくまで民の、そして豪族の自主性を重んじる――この姿勢があればこそ、これほど多くの者たちが、殿を慕うのでございましょう」


私は、その解釈に、内心で複雑な思いを抱きながらも、もはや訂正する気力もなかった。(正直、そんな崇高な理念じゃなくて、単純に責任を負いたくないだけなんだけどな……)


数日後、佐々家の当主自らが、拠点を訪れることとなった。四十絡みの、堂々とした体躯の武士である。彼は、拠点の様子を興味深そうに見回しながら、私の前に進み出た。


「信照様には、初めてお目にかかりまする。佐々成宗と申す者にございます」


私は、努めて重々しく応じた。「よく参られた。何か困りごとがあると聞いている」


成宗は、深く頭を下げた。「恥を忍んで申し上げます。当家、これまで今川方に従属して参りましたが、その要求は年々過酷なものとなり、もはや家中の存続すら危ぶまれる有様にございます」


私は、その言葉に、胸の奥が痛むのを感じた。(史実じゃ、こういう戦国時代の豪族の苦しみって、資料でしか読んだことがなかった。でも、目の前にいる人は、本当に苦しんでいるんだ)


「成宗殿、我らにできることがあれば、力になりたい」私は、素直な気持ちを口にした。


「有り難きお言葉にございます。されど、それがし、一つだけ確認させていただきたく存じます。信照様は、我ら佐々家を、御自身の家臣として組み込むおつもりでございましょうか」


私は、その問いに、正直に答えた。「いや、そういうつもりはない。あなた方は、あなた方のやり方で、これまで通り家を治めてほしい。俺たちは、ただ、今川の圧力から守る、それだけだ」


成宗は、驚いた様子で目を見開いた。「まことに……。それは、まことでございますか」


「ああ。統治とか、そういうのは、正直、俺には無理なんだ。だから、任せる」


(訳:本当に、無理だから。だから、自分たちでやってほしいんだ)


成宗は、しばし呆然とした後、深々と頭を下げた。「信照様の御心、まことに広大にございます。他の者どもは、力を貸す代わりに、必ず何かを求めて参ります。しかし信照様は、ただ守ることだけを、お望みになる……」


「これほどの御方に、今後は当家も、忠誠を尽くして参りたく存じます」


こうして、佐々家もまた、拠点の保護圏に加わることとなった。彼らは、これまで通り、自らの領地を自らの手で治めながら、必要な時には拠点からの支援を受けるという、緩やかな連携の形を選び取ったのである。


その日の夜、私は寝所で一人、今日の出来事を振り返っていた。(俺、本当に何も特別なことは言ってないんだけどな。ただ、面倒だから任せる、それだけだったのに)


しかし、その素朴な本音が、また一つ、拠点の評判を高める結果となっていた。北部の豪族が加わったことで、保護圏はさらにその範囲を拡大させることとなり、尾張全域における拠点の存在感は、日を追うごとに、より確かなものへと変わりつつあったのである。

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