第百二十話 誰もが待つ日
第百二十話 誰もが待つ日
最後の寄進――そう呼ぶべき、確かな想いの込められた品々が、拠点に、静かに、積み重なっていく中、東海地方全体には、これまでにない、ある種の、静かな緊張感と、そして、確かな期待感とが、入り混じった、独特の空気が、漂うようになっていた。
義元本隊は、これまでの、長い議論を経て、いよいよ、東海における、新たな均衡状態を、正式に、受け入れる方向へと、その方針を、固めつつあった。そして、この決定は、単に、今川方と拠点との関係にとどまらず、東海地方全体の、これから先の在り方を、大きく、左右するものと、なりつつあったのである。
ある日、私は、拠点の高台に立ち、周囲に広がる、穏やかな田園風景を、改めて、眺めていた。傍らには、一益が、静かに、控えている。
「一益、最近、なんだか、みんな、少し、そわそわしているような、気がするんだ」私は、率直な感想を、口にした。
一益は、静かに答えた。「殿。それは、恐らく、この東海地方全体が、これから先の、大きな変化の予感を、確かに、感じ取っているからでございましょう」
私は、その説明に、興味を惹かれた。「大きな変化って、どんな……?」
一益は、慎重に、続けた。「義元様が、これまでの、尾張への執着を、正式に、緩められるという話は、もはや、東海地方全体に、確かに、知れ渡りつつございます。この決定は、これまでの、長きにわたる戦乱の、一つの、確かな終わりを、意味することになりましょう」
私は、その言葉に、深い感慨を覚えた。「そうか……。本当に、この長い戦いが、そろそろ、終わりを迎えるのかもしれないんだな」
その日の夕刻、私は、四天王を集め、この、確かな変化の予感について、改めて、話し合う機会を、持つこととなった。「みんな、この、これから先の、大きな変化に、俺たちは、どう向き合っていけばいいと思う?」私は、率直な疑問を、投げかけた。
利家が、力強く答えた。「殿。我らは、これまでと、何も、変わることは、ございませぬ。ただ、これからも、殿の御方針に従い、皆を、確かに、守り続けていくのみにございます」
藤吉郎も、続けた。「加えて、殿。この変化を、これまで積み重ねてきた、確かな仕組み――保護圏、そして、この場所に集う、多くの人々の絆を、これから先も、より、確かに、育てていく、確かな機会として、捉えるべきかと存じます」
私は、その言葉に、深く頷いた。「そうだよな……。俺は、これからも、変わらず、みんなを守ることだけを、大事にしていきたい」
数日後、拠点には、これまで以上に、様々な地域から、確かな期待を込めた、多くの言葉が、届けられるようになっていった。ある村からは、こんな言葉が、伝えられてきたという。「信照様が、この長い戦乱を、確かに、終わらせてくださる日を、我らは、心待ちにしております」
私は、その言葉に、これまでにない、深い重みを、感じることとなった。(俺は、本当に、そんな大それたことを、成し遂げられるんだろうか……)
その夜、私は、寝所で一人、この、これから先の未来について、静かに、考えを巡らせていた。窓の外に広がる、夜の静けさを見つめながら、私は、これまでの、長い日々を、改めて、振り返っていた。
(桶狭間の敗戦から始まった、あの絶望的な逃避行。それが、こうして、多くの人々の、確かな希望へと、繋がっていくなんて、本当に、想像を超えた展開だったよな)
私は、その、これまでの、確かな道のりを、改めて、噛み締めながら、静かに、これから先への、確かな決意を、胸に、刻んでいくのであった。
(俺は、これからも、みんなを守ることだけを、大事にしていきたい。この、長い戦いが、いつか、本当に、確かな平和で、終わりを迎えられるように――)
その素朴な、しかし、深い願いを胸に、私は、静かに眠りについたのだった。この、東海地方全体に漂う、確かな、静かな期待――「誰もが待つ日」は、こうして、着実に、その、確かな輪郭を、増していくこととなるのである。
翌朝、私は、お市と共に、拠点の縁側で、久しぶりに、ゆっくりとした、朝の時間を、過ごすこととなった。「兄上、昨夜は、あまり、お眠りになれなかったのですか」お市が、心配そうに、私の顔を、覗き込んだ。
私は、少し苦笑しながら答えた。「うん、色々と、考えることが、多くてな」
お市は、優しく、私を、見つめた。「兄上は、いつも、多くのことを、御自身の中で、抱えておられますね」
私は、その言葉に、少し驚きながら答えた。「そうだな……。でも、お市が、こうやって、いつも、そばにいてくれるから、俺は、なんとか、頑張れているんだと思う」
(訳:本当に、単純な言葉なんだけど、これが、俺の、正直な気持ちなんだ)
お市は、その言葉に、少し頬を染めながら、優しく微笑んだ。「兄上のお力になれているのなら、これに勝る喜びは、ございません」
私たちは、しばらくの間、静かに、朝の穏やかな空気を、共に、味わい続けていた。遠くから、鳥のさえずりが、聞こえてくる。拠点全体には、これまでと変わらぬ、確かな、平和な日常が、静かに、流れ続けていた。
「お市」私は、ふと、思いついたことを、口にした。「これから、色々なことが、変わっていくかもしれないけど、俺たちの、こういう、静かな時間だけは、これからも、大切にしていきたいな」
お市は、その言葉に、深く頷いた。「はい、兄上。わたくしも、そう、心から、願っております」
その日の朝、私は、これから先の、大きな変化への、確かな不安を抱えながらも、この、変わらぬ、穏やかな時間の中に、確かな、そして、揺るぎない、心の支えを、見出していたのだった。




