第百十九話 最後の寄進
第百十九話 最後の寄進
保護圏の未来について、四天王と共に、深い議論を重ねる中、拠点の蔵には、これまでにない規模の寄進が、依然として、着実に、届けられ続けていた。しかし、この頃、藤吉郎は、これまでとは、少し異なる、確かな変化を、この寄進の性質の中に、見出すようになっていたのである。
ある日、藤吉郎が、これまでにない、感慨深い表情で、私のもとを、訪れることとなった。「殿、御報告いたしたきことが、ございます」
私は、その様子に、興味を惹かれた。「どんな話だ?」
藤吉郎は、丁寧に、これまでの寄進の記録を、整理した帳面を、私に示した。「殿。此度、この帳面を、改めて、見返してみましたところ、興味深いことに、気づきました」
「どんなことに?」私は、その帳面を、覗き込みながら、尋ねた。
藤吉郎は、続けた。「かつては、寄進の多くが、避難させていただいたことへの感謝、あるいは、庇護への謝礼として、送られて参りました。されど、此度は、その性質が、少しずつ、変わりつつございます」
私は、その説明に、深く興味を惹かれた。「どんな風に、変わっているんだ?」
藤吉郎は、丁寧に、続けた。「近頃の寄進の多くは、『これから先も、共に、この場所を支えていきたい』という、確かな、前向きな想いを、込めて、送られてくるように、なって参りました」
私は、その言葉に、深い感慨を覚えた。「そうか……。みんなが、単に、感謝の気持ちだけじゃなくて、これからも、一緒に、この場所を、育てていきたいって、思ってくれているんだな」
(訳:本当に、これは、すごく、嬉しい変化だよな)
藤吉郎は、深く頷いた。「まさに、その通りにございます。この変化は、殿がこれまで、一貫して、貫いてこられた御方針――力による支配ではなく、共に、支え合う、確かな在り方――が、いよいよ、多くの人々の心に、深く、根付いてきたことの、確かな証にございましょう」
私は、その説明に、深い誇らしさを覚えながらも、なおも、複雑な感慨を抱いていた。「そうか……。俺、そんな大層なことを、意図していたわけじゃないんだけどな。ただ、みんなを守りたいって、それだけの想いだったのに」
その日の午後、私は、拠点に集まった、様々な寄進の品々を、実際に、改めて、見て回る機会を得た。米俵、反物、そして、様々な、心温まる手紙が添えられた、多くの品々が、そこには、確かに、並べられていた。
私は、ある一つの手紙を、興味深く、手に取ってみた。それは、遠く、伊勢の、ある村から送られてきたものであった。
「信照様。我らは、これまで、幾度となく、あなた様の御庇護に、助けられて参りました。此度の寄進は、その感謝の証であると同時に、これから先も、我らが、あなた様と共に、この、確かな平和を、築いていきたいという、確かな決意の、証にございます」
私は、その手紙に、深い感動を覚えた。(本当に、みんなが、こんな風に、俺たちと、これからも、一緒に、この場所を、支えていこうって、思ってくれているんだな)
私は、この手紙を、大切に、胸にしまいながら、静かに、拠点の外を、歩いていった。田畑では、農民たちが、忙しく、日々の作業に、勤しんでいる。街道では、商人たちが、活発に、行き交っている。そのすべての光景が、私にとって、これまでにない、深い、確かな喜びを、もたらすものであった。
その夜、私は寝所で一人、この日の出来事を、静かに振り返っていた。(俺は、これからも、みんなの、この確かな想いに、しっかりと、応え続けていきたいな)
その素朴な決意を胸に、私は、静かに眠りについたのだった。
翌朝、私は、藤吉郎と共に、この、これまでの寄進の記録を、改めて、整理する機会を持った。「藤吉郎、これから先も、こういう風に、みんなの想いが、こもった寄進が、続いていくといいよな」
藤吉郎は、深く頷いた。「殿。それがしも、そう確信しております。この、確かな循環こそが、保護圏の、まことの、揺るぎない力にございます」
私は、その言葉に、深い充実感を覚えながら、これまでの日々を、改めて、振り返っていた。桶狭間の敗戦から始まった、絶望的な逃避行。それが、こうして、多くの人々の、確かな、そして、温かな想いへと、繋がっていくとは、まさに、想像を超えた展開であった。
(本当に、これから、どうなっていくんだろうな……。でも、俺は、これまでと変わらず、みんなを守ることだけを、大事にしていきたい)
その変わらぬ決意を胸に、私は、その日の、新たな一日を、静かに、始めていったのだった。
その日の午後、私は、お市と共に、この、様々な地域から届いた寄進の品々を、改めて、丁寧に、整理する作業を、手伝うこととなった。
「兄上、この品々の一つ一つに、それぞれの村の方々の、確かな想いが、込められているのですね」お市が、感慨深げに、そう呟いた。
私は、その言葉に、深く頷いた。「本当に、そうだよな。一つ一つ、大切に、扱っていきたいよな」
お市は、丁寧に、一つの反物を、手に取りながら、続けた。「この反物、まことに、丁寧に、織られておりますね。恐らく、多くの時間と、心を込めて、作られたものなのでございましょう」
私は、その反物を、興味深く、眺めながら答えた。「本当に、こういう、みんなの、心のこもった品々を見ると、俺も、改めて、この場所を、大切にしていこうって、強く思うんだ」
お市は、優しく微笑んだ。「兄上のそのお心が、これからも、多くの方々の、確かな支えとなることでございましょう」
私たちは、その後も、しばらくの間、共に、これらの品々を、丁寧に、整理し続けていった。作業の合間、私は、ふと、お市に、率直な想いを、打ち明けることにした。
「お市、こうやって、みんなの想いに、触れていると、俺、改めて、この場所を、絶対に、守り抜きたいって、強く思うんだ」
お市は、その言葉に、深く頷いた。「兄上のその御決意、わたくしも、確かに、共に、支えて参りたいと存じます」
私は、その言葉に、深い感謝の念を抱きながら、その日の、穏やかな、そして、確かな充実感に満ちた時間を、静かに、過ごしていったのだった。




