第百十八話 誰の天下か
第百十八話 誰の天下か
布団の軍議によって、今川方との、これからの関係についての、確かな方針が定まった後、拠点には、これまで以上に、静かな、しかし、確かな平穏が、しばらくの間、続くこととなった。しかし、その平穏な日々の中でも、四天王をはじめとする、拠点の主要な人々の間では、これから先の、この場所の在り方について、これまで以上に、深い議論が、続けられるようになっていたのである。
ある日の夕刻、私は、四天王が、拠点の一室で、これから先の、保護圏の未来について、真剣に、話し合っている様子を、偶然、目にすることとなった。私は、その場に、そっと、加わることにした。
「みんな、何を、そんなに、真剣に、話し合っているんだ?」私は、興味を惹かれて、尋ねた。
利家が、少し驚いた様子で答えた。「殿、これは、これから先の、保護圏の、確かな未来について、話し合っておりました」
私は、その言葉に、興味を惹かれ、さらに、尋ねた。「どんな話を、していたんだ?」
一益が、慎重に答えた。「殿。正直に申し上げますと、我らの間でも、この保護圏の、これから先の、確かな方向性について、少しずつ、異なる考えが、生まれつつございます」
私は、その説明に、深い興味を覚えた。「どんな風に、違うんだ?」
藤吉郎が、丁寧に答えた。「ある者は、この保護圏を、さらに、より広く、より確かな、統一された勢力へと、発展させていくべきだと、考えております。またある者は、これまでのように、緩やかな連携を保ちながら、それぞれの、自主性を、これからも、大切にしていくべきだと、考えております」
私は、その説明に、深く考え込んだ。「そうか……。みんな、それぞれ、この場所のこれからを、真剣に、考えてくれているんだな」
私は、その場で、率直な想いを、四天王に、伝えることにした。「俺は、正直、天下がどうとか、統一された勢力にするとか、そういう大きな話は、あまり、考えていないんだ。ただ、みんなが、これからも、安心して、平和に暮らせるようになれば、それでいいと思ってる」
(訳:本当に、単純な想いなんだけど、これが、俺の、正直な気持ちなんだから)
利家が、その言葉に、深く感じ入った様子であった。「殿の御心は、まことに、一貫しておられますな」
一益も、続けた。「殿。それがしも、殿の、その、変わらぬ御心こそが、この場所の、まことの支えであると、確信しております。されど、殿。この保護圏が、これからも、確かに、その平和を、守り続けていくためには、我らも、様々な、可能性を、考え続けねばなりませぬ」
私は、その言葉に、深く頷いた。「そうだよな……。俺は、大きな決断を、下すのは、正直、苦手だけど、みんなが、そうやって、真剣に、考えてくれているのは、すごく、心強いことだよな」
その日の夕刻、私は、この会議を後にしながら、一人、静かに、この保護圏の、これから先の未来について、深く、考えを巡らせていた。(俺は、これから、どんな形で、この場所を、守り続けていくことになるんだろうな)
数日後、私は、お市と、久しぶりに、拠点の縁側で、静かな時間を、過ごすこととなった。「お市、実は、この間、四天王のみんなと、これから先の、この保護圏の未来について、話し合う機会が、あったんだ」
お市は、興味深そうに、耳を傾けた。「どのような、お話でございましたか」
私は、その内容を、丁寧に、お市に、伝えた。お市は、しばし、静かに、考え込んだ後、優しい声で、答えた。
「兄上。わたくしは、どのような形であれ、兄上が、これからも、御自身の、その、変わらぬお心を、大切にし続けてくださるならば、それが、きっと、この場所にとって、最も、確かな未来であると、信じております」
私は、その言葉に、深く、救われる想いがした。「そうだよな……。俺は、これからも、俺らしく、みんなを守ることだけを、大事にしていきたいんだ」
お市は、静かに、微笑んだ。「兄上らしさこそが、この場所の、まことの、揺るぎない、支えにございます」
私は、その言葉に、深い安堵を覚えながら、その日の、穏やかな夕暮れの時間を、静かに、過ごしていったのだった。
その夜、私は寝所で一人、これまでの日々を、改めて振り返っていた。桶狭間の敗戦から始まった、絶望的な逃避行。それが、こうして、多くの人々の、確かな未来を、共に、考えるようになるとは、まさに、想像を超えた展開であった。
(誰の天下か――そんな問いに、俺自身は、明確な答えなんて、正直、持っていない。でも、俺は、これからも、変わらず、みんなを守ることだけを、大事にしていきたい)
その変わらぬ決意を胸に、私は、静かに眠りについたのだった。この、拠点内部における、静かな、しかし、確かな議論は、以後も、物語の、重要な、そして、静かな通奏低音として、その意味を、さらに、深めていくこととなるのである。
翌朝、私は、改めて、四天王を集め、この日の話し合いの続きを、行うこととなった。「みんな、昨日の話、色々と、考えさせられたよ」私は、率直な想いを、口にした。
一益が、静かに答えた。「殿。それがしも、あの後、改めて、考えを、巡らせておりました。結局のところ、我らが、いかなる方向へ進もうとも、それは、殿の御心を、確かに、実現するための、手段に過ぎませぬ」
私は、その言葉に、深く頷いた。「そうだよな……。俺は、大きな野心とか、統一とか、そういうことより、本当に、みんなが、これからも、平和に、暮らせるかどうか――それだけが、大事なんだ」
藤吉郎も、続けた。「殿。それがしも、殿の御方針に、改めて、確かな確信を、抱くこととなりました。この場所は、これからも、殿の、その素朴な御心を、確かな中心として、育ち続けていくことでございましょう」
私は、その言葉に、深い安堵を覚えた。「本当に、みんなが、そんな風に、思ってくれているなら、俺は、これからも、安心して、この場所を、大事にしていけるよ」
その日の午後、私は、拠点の高台に立ち、周囲に広がる、穏やかな田園風景を、改めて、眺めた。多くの人々の、様々な想いが、静かに、しかし確かに、この一つの場所に、集まり続けている――その事実に、私は、改めて、深い感謝の念を、抱いていたのだった。
(俺は、これからも、この場所を、大切に、守り続けていきたい。それが、俺にできる、唯一の、そして、確かなことなんだから)
その素朴な決意を、改めて、胸に刻みながら、私は、その日の、穏やかな一日を、静かに、過ごしていったのだった。




