航空兵
「開発していた重力魔法をこんな使い方するとは思わなかったな!」
身体強化魔法を使い、地上を駆け抜けるよりも速く。
航空機とそう変わらない速度で空を駆け抜ける僕はその爽快感に思わず笑みを漏らす。
「……見つけた」
ルノア王国の空を我が物顔で飛んでいるフリース王国の兵士たちを見つけた僕は更に加速する。
『……ッ!?横から誰か来るぞっ!?』
『ルノア王国兵ッ!?』
一気に加速し、ぐんぐん距離を詰めていく僕に気づいたフリース王国兵は困惑しながらもその手にある銃をこちらへと向けてくる。
「当たる訳にはいかないからね」
放たれた弾丸を僕は一気に高度を引き上げることで回避する。
『馬鹿なッ!?』
「……いや、これ普通に怖いな」
間違いなく速度は僕の方が上だ。
その上で、銃弾は僕よりも早い。この広大で何の遮蔽物もない空で己の身を晒すのはリスクだな。運悪く弾丸が一発頭を打ち抜いてそのまま終わり、なんてことも考えられるのだから。
高度を引き上げ、太陽を背にした僕は銃口を構える。
「……現実的じゃないか」
銃弾に当たらぬよう僕も動いているし、逆に向こうも動いている。
こんな状況で確実に当てる自信はないな。当てられる要素が運しかない。僕が一発を撃っている間に、フリース王国の兵士は数の利を生かし、僕よりも多くの弾を放つ。
銃での打ち合いは僕が不利だ。やはり、狙うは当初の想定通りに接近戦。
「狙いは……一瞬で」
フリース王国兵が銃を一発外す。
その後すぐに彼らは手際良くボルトを引き、弾を再装填。
再び銃口を僕へと向け、そのまま引き金を引く。その間、僕は銃を構えるのではなく、彼らに向かって太陽を背中に加速し、距離を詰めていく。
目をくらませる太陽の光。八の字を描くように飛ぶ僕の回避行動。
向けている銃口はたった二つだけ。それで、僕を撃ち抜くことは困難で───事実、僕を撃ち抜くことはできなかった。
「───今」
銃を一発撃った。
今、この瞬間だ。僕は一気に爆発的な加速で一人のフリース王国兵との距離を詰め、その腹を己の手にある銃剣で斬り裂く。
『ありえっ!?』
臓物をまろびだすフリース王国兵は魔法の維持に失敗し、そのままゆっくり地面に落ちていく。
『このっ!』
『こんな近い距離で銃口を向けられてもそう怖くはないよ』
すぐ隣で再装填を終えた銃口を手で弾いた僕は懐から短剣を取り出し、その首筋に迷いなく差し込む。
「お、あぁぁあ」
ルノア王国の人間も、フリース王国の人間も悲鳴に言語的な差異はそうない。
首を短剣で刺され、血を口から漏らすフリース王国兵の体から力が抜けていく。銃声が一つ響く。
『さようなら』
飛んでいたフリース王国兵はたったの二人だけ。
首を刺され、かすれゆく意識の中でなおも戦意は失わず、引き金を引いたことは見事だった。だが、その肝心の銃の銃口は僕を向いていなかった。
短剣を抜き、その脳天に拳を一つ。空から地上へと打ち落とす。
「念の為」
地面に落ちていくフリース王国兵の二人を空中から確実に撃ち抜く。
「強いけど、弱いな。航空兵。まともな防御手段ないのが厳しいな」
使った弾は五発。
銃の性能の問題もあり、確実に一発で仕留めるのは至難の業だ。
「……戻るか」
魔法航空兵、とでも名付けようか。
それをどう評価するべきか。その評価を一旦棚上げした僕はとりあえず、置いてきてしまったニュースベック大将閣下へと戻っていった。
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