飛行魔法
「いやはや!これはピンチだな!」
こちらへと降り注ぐ銃弾を僕を引っ張って逃げるニュースベック大将閣下が何とも楽しそうな表情で声を張り上げる。
「ニュースベック大将閣下!地中まで広げている対魔法結界を解除してください!」
何故か楽しそうなニュースベック大将閣下ほど、命に危機迫る状況を楽しめない僕は必死に声を張り上げる。
「おっ?あぁ、そうか!」
「よしっ!」
分析は後。
今は、生き残るところから。
僕は地面を掘って小さな空間を作って地下に逃げ、土で蓋をする。
「おぉっ!?凄い移動法だなっ!」
「狭いですが、ご容赦を」
「い、いや……私はこれで」
人が二人。ピッタリ入るような空間にニュースベック大将閣下と詰め詰めで入っている僕はそのままその空間を横移動させて全力の逃亡をする。
「……追いかけてきてないな」
地中に逃げたところでフリース王国の兵士たちは諦めたのか、すぐに追ってこなくなっていた。
「……」
「おっ?どうした、止まって」
飛行魔法。
あれは再現できる。理解できなかったのが対魔法結界の運用方法だ。対魔法結界は結界で区切った範囲内の魔力を消滅させる魔法だ。
対魔法結界を自分たちを覆うように展開すれば、自然とその中で発動させる飛行魔法も使えなくなるはずだ。
「……体内、か?」
明らかな矛盾。
それに首をかしげる僕だったが、すぐにある結論へと至る。
「ニュースベック大将閣下はここで隠れて待っていてもらえますか?」
「……むっ?」
「ちょっと彼らを狩ってきます」
「何?」
ルノア王国内に侵入しているフリース王国の存在など溜まったものじゃない。
僕たちの後ろには物資を積んだトラックなんかも走っている。それを襲撃されるわけにもいかない。今、彼らは地面に叩き落とす必要がある。
「空気穴は作っておきますので、しばしお待ちを」
「ちょっ!何をするつもりだ!」
時間はない。
僕はニュースベック大将閣下を地中に残し、一人地上へと飛び出す。
「よしっ」
自分の想像通り、己の体内。己の皮へと沿うにして対魔法結界を発動させた結果、その内部。体内で発動する魔法が問題なく使えたことを確認し、頷く。
「何ともこれは、画期的な運用方法だな」
体内に対魔法結界を貼っている為、その内側に物理攻撃を防ぐ結界を展開したりは当然出来ず、また、身体強化魔法も厳しい。
皮へと沿うようにして対魔法結界を貼っているからね。皮だけ強化されていない状態で、身体強化魔法をかけた体で動いたら皮が全部剥ける。物理攻撃を防ぐ結界を展開したらどうなるんだって?皮一枚の下。そのすべてが結界に阻まれて消滅して、大怪我だよ。
それでも、この運用方法は画期的だ。
「飛行魔法……土魔法も混ぜるか」
フリース王国の兵士たちが無属性魔法を用いて発動させていた飛行魔法。
その魔法の構成として、最も苦労している部分が自分の体を浮かせることだった。体を浮かせることに手一杯で速度や高度を出すとか、そこらへんには苦戦しているように見えた。
「……ふぅー」
土魔法。
それは一度発動すれば、その効果は永続的に続く。掘った穴が消えることはない。
土魔法の効果を維持したまま、別の魔法を使う。魔法は一度にひとつしか使えない。そんな世界で、土魔法だけは幾つも効果を積み重ねることが出来る。
「……よしっ、出来た」
土魔法の対象は地面。さらに広げるなれば、この星そのもの───星に、干渉する。有の変換。その有の変換で出来るのは何も形を変えることだけじゃない。乾ききった大地を農業に適した肥沃な土地へと変えるなど、成分の変換まで出来てしまう。
これは、その有の変換の範囲内。僕を引っ張る星の質量だけを下げる。つまりは、重力を軽くする。
元の何十倍も軽くなった僕の体はただ少し、地面を蹴っただけでふわりと空に浮き上がる。
「……よし、行こうか」
後はそう。フリース王国が使っていた飛行魔法。その浮き上がる要素を減らし、速度に振った僕流の飛行魔法を発動させるだけ。
銃剣を構えた僕は一気に加速し、元の場所へと戻っていった。
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