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不遇だった土魔法、実は戦争の役に立つ~土魔法使いに転生してしまった僕の、思わぬ成り上がり戦記~  作者: リヒト


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航空

 シーアお姉さまに見送られた僕は昨日と同様、ニュースベック大将閣下の邸宅へとお邪魔させてもらっていた。


「……あぁ、よく来たな」


「昨日はありがとうございました。おかげで姉と家族水入らずの時間を取ることが出来ました」


 僕にとってあの時間は大切なものだった。


「それで本日は如何なさいますか?」


「……」


 僕の質問に対し、ニュースベック大将閣下は沈黙で返す。その表情は何処か固かった。


「……ニュースベック大将閣下?」


「状況が変わった。今すぐに戦地へと行こう」


「もうですか?」


「あぁ、再びフリース王国の総攻撃が始まった」


「また、ですか?鉱山地帯の奪取だけでは物足りないと?」


「戦争を終わらせるつもりだ。自国領土の解放は捨て置き、真っすぐ我らの領土を踏み荒らしに来ている」


「……」


 戦争を終わらせる。

 それには賛成だ。


「……ウィルアード准将?」


「では、チャンスですね。攻勢を押さえ、こちらが反転攻勢を仕掛ける。僕が一番最初にやったことであります」


「……そう、事はうまく行かないだろう。航空機。あれも、戦場を変えるとは思わなかった」


「航空機、ですか?」


 航空機。

 その単語が出てくるとは思っていなかった僕は首をかしげる。


「あぁ、そうだ。偵察を目的とした航空機の運用。それをフリース王国は我々の初期攻勢の時に行っていたらしい。その運用方法を見て我が国でも航空機の軍事転用を行い、偵察から砲弾の着弾地の計測等を行っていた。だが、フリース王国はその上を行った」


「……まさかそれ以外の運用方法を?」


 ……。

 …………ありえない。

 まさか、フリース王国はもうそれらの運用を超えて実戦で活躍できる航空機の開発に成功しているの、か。いやいや、嘘でしょ?

 僕の記憶が正しければ、銃を備え付けて敵機を撃てる実用的な航空機が出てきたのは戦争開始一年後のことだったはず。その形の航空機が出てくるまでは、補助的な運用がせいぜいで、互いに干渉し合うこともまともに出来ないはずだ。

 友達のミリタリーオタクが居たから、ここら辺の軍需品については間違っていないつもりだったのだがっ。


「フリース王国の、魔法使いはどうやら空を飛ぶようだ」


「……はい?」


 ニュースベック大将閣下の口から何が出てくるか。

 その言葉を想像し、恐れていた僕は次にニュースベック大将閣下の口から出てきた言葉に間抜けな声を上げる。


「航空爆撃。ただ航空機に乗り、そこから爆弾を落とすだけの簡単な試みだ。新大陸でも見られたこの攻撃の弱点は二つ。まず一つ、持ち運べる爆弾の量が少ないこと。二つ、普通に地上からの攻撃を受けて爆弾を落とすよりも前に追撃されてしまうこと。この二点があげられた」


「えぇ、そうですね」


 それはこの世界でも共通認識だ。

 相当の有利状況でなければ、航空爆撃なんかまだ成功しない。


「だが、それをフリース王国の魔法使いが解決した。対魔法結界の及ばない上空で物理的な結界を構築するのだ。それで銃弾を弾く」


「……物理的な結界。そんなのもありましたね」


「まったくだ。一体何時の時代の結界だという話だな。今では専ら結界と言えば、対魔法結界だ」


 対魔法結界一つで無効化される盾に意味はない。

 

「こちらの航空機を近づけさせ、その方に対魔法結界を貼ってもらえばいいのでは?」


「いや、どういうわけか無効化出来ないらしい」


「……何故?」


「完全に不明だ。それも含め、現場で見なければわからないな。とりあえず、我々の手元に来ている情報は空と地。その二つからの攻勢に今、現場が悲鳴をあげているということだけ。すべてを賭して、相手の攻勢を早急に止めなければならない」


「僕は準備が終わっています。いつでも出られますよ。車を我が商会の方で用意いたしますか?」


「いや、大丈夫だ。私の方で手配していた車が一日早くこちらへとついた。それに乗っていこう」


「わかりました。常在戦場を旨としております。今にも出られますが」


「素晴らしい。では、もう車に乗り込んでしまおうか……グミを買いにいけなくてすまんな」


「いえ、別に大丈夫です。シーアお姉さまと会い、勇気をもらいましたから」


「ふっ、そうか。やはり、家族は良いものだな」


 僕の言葉に頷いたニュースベック大将閣下は立ち上がり、傍らにあった己の銃を掴む。


「では、行こうか」


「はい」


 僕とニュースベック大将閣下は朝っぱらから車に向かって歩き出す。


「……ちなみに、だ」


 その、第一歩目。

 執務室から出る直前にニュースベック大将閣下は足を止める。


「はい。何でしょうか?」


「……私は臭くないか?」


「……はい?」


「いや、そのなんだ。同じ車両乗る訳で。その匂いとかがやはり」


「もしかして、エマ第二王女殿下から言われた臭いという言葉をずっと根に持っているのですか?」


「いや、彼女というよりは……うぅむ」


「別に、気になさらずともあれはお風呂に入っていなかったからのものでしょう?お風呂に入っている今であれば、何ともありませんよ」

 

 ニュースベック大将閣下の体臭は元よりキツイ方だとは思う。

 なんか、ずっとほんのり甘い匂いがするんだよね。

 平時なら別に気にならないが、それがお風呂に入っていなくて汗臭さなども加わって元の甘い体臭と加わると大変なことになるのだ。


「それなら、良かった!では行こうか!」


「……はい」


 今まで、ニュースベック大将閣下が纏っていた硬い雰囲気が和らぎ、彼女は意気揚々と歩き出す。

 ……あの、もしかしてさっきまで醸し出していた重たく、硬い雰囲気はこれからの厳しい戦場に思いを馳せていたからではなく、これから車に乗る自分の体臭を気にしてだったりします?そんなことはないですよね?うん。

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