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不遇だった土魔法、実は戦争の役に立つ~土魔法使いに転生してしまった僕の、思わぬ成り上がり戦記~  作者: リヒト


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お菓子

「お、おい……あれって」


「ニュースベック大将閣下だっ。つまり、隣にいるのは……っ」


「あんなに、幼いのか……ウィルアード准将閣下って」


 王都の街並みへと出てきたニュースベック大将閣下の格好は軍服そのままで姿を隠そうという仕草は見せなかった。

 それに合わせるように僕も軍服を身につけ、王都の街並みを歩いていた。

 

「……うぅん、少し落ち着かないですね」


 王都に住む人たちは僕のことを始めて見る人がほとんど。

 自分が出している数々の媒体で語られる英雄ノアを、等身大の姿で見る彼らはこちらを遠巻きに眺めながら様々な言葉を交わしていた。

 その視線が、どうも僕の居心地を悪くさせていた。


「こういうのは堂々と胸を張っているのが吉であるぞ?」


「わかってはいますが……」


「そんなことよりも西方に行く前の物資調達。拳銃などの装備は大丈夫か?」


「えぇ、そこら辺の装備は自分の商会に用意させていますので」


「よし、流石だな。それじゃあ、そうだな。チョコでも買いに行こうか」


「……チョコ、ですか?」


「あぁ、そうだ。戦場に行ってしまえば、チョコなんて嗜好品は手に入らないからな。ここで買い、戦場に持って行くほかない」


「……そうですが」


「ウィルアード准将は買わないと?私は娯楽品をもっていっているぞ。あぁ、当然自分でもてる範囲だぞ?己の嗜好品で補給を圧迫し始めたら訳ないからな」


「そう、ですね」


 戦場に、チョコなんて持ち込もうと思ったことすらない。


「真面目すぎるなぁ、ウィルアード准将は。肩に力が入り過ぎている」


「これでもそろそろ戦地に初めて足を踏み入れて一年が経とうとしているのですが」


「だからこそ、そろそろ戦場を楽しんでもいい頃だ。あそこで息抜き出来るようなものを一つでも用意しておくのは大事だぞ?」


 ……戦場で楽しむことを、か。

 そもそも、そんなことを考えたことすらなかったな。


「ウィルアード准将は何のお菓子が好きか?」


「……チョコはあまり好きじゃないですね」


「えぇ!?」


「苦くないですか?あれ」


「どう考えても甘いだろう!あれが苦いのであれば、何が甘い判定になるのだ!?」


「カカオの苦さ苦手なんですよね」


「であれば、何のお菓子が好きなんだ?」


「……グミ、ですかね?最近、ルノア王国で生まれた」


「おぉ!あれか……あれを?子供の噛む力を向上させるとか」


「好きなんですよ」


 この世界のグミはまだ本当に生まれたばかりで、その味は前世のものと比べると雲泥の差だ。

 でも、純粋にグミそのものが懐かしいのもあって、かなり好きだった。グミが生まれた時、ウキウキで買いに行ったのを覚えている。

 うちの商会の人間から、ノア様も噛む力を鍛えないとですねぇ~と、子ども扱いされたのも忘れない。


「ふっ、良き顔をするではないか。それじゃあ、まずはグミを買いに行こうか。私もウィルアード准将と同じものを買うとしよう!」


「えぇ」


 僕はニュースベック大将閣下の言葉に頷き、グミを買いに向かおうとする。


「あっ、シーアお姉さま」


 そんな、僕の視界の端にシーアお姉さまの顔が映る。

 

「……何で、そんなところに?」


 視界の端。

 街中にある僕の商会系列の小さな商店の窓からひょっこりと、シーアお姉さまの顔半分が伸びてこちらを見つめていた。


「むっ?君のお姉さまが?」


「はい。……すみません」


「あぁ、久しぶりの再会であろう?そこに水を差そうとはしないさ。行ってあげると良い」


「ありがとうございます。お買い物につきましては……」


「また明日でも良い。我々の出立は明後日を予定している。今日は何処で寝る?私の家に戻ってくるか?」


「いえ、王都にも邸宅は構えておりますので」


「……そうか」


「明日の朝、またニュースベック大将閣下の邸宅にお邪魔させてもらいますね」


「ッ!うむ!待っておるぞ!」


「それでは、今日のところは失礼いたします」


 僕はニュースベック大将閣下へと一礼し、シーアお姉さまの元へと向かう。


「……誰?」

 

 シーアお姉さまのいた商店へと入ってきた僕に対し、彼女はまだ窓の外に視線を向けたまま疑問の言葉を口にする。


「ニュースベック大将閣下だよ、僕の上官で」


「ニュースベック。あぁ、あの人……あの人、まだあんなに見た目若々しいんだ。もう、三十だよね?」


「いや、まだギリギリ29歳じゃなかったかな?」


 勝手にもう三十代扱いしている自分がいるけど、まだ二十代のはずだ。


「でも、誕生日はもうすぐでしょう?」


「まぁ、そうだね」


「……なら、いいや」


 シーアお姉さまは窓から視線を外し、僕を見る。


「久しぶり。シーアお姉さま」


「……えぇ、久しぶりね」


 僕の言葉に対し、シーアお姉さまは穏やかな笑みを浮かべて頷く。


「あぁ……ようやく会えた」


「ちょっ!?」


 シーアお姉さまは僕へと近づき、そのまま力強く抱きしめる。

 いきなり抱き着かれた僕は少し、赤面してしまう。


「……本当は、一番に私の元に来てほしかった」


「ごめん。ニュースベック大将閣下に呼ばれて王都に戻ってきているから」


 僕を抱きしめるシーアお姉さまは少し僕を離し、その右手をそっと僕の顔に置く。

 シーアお姉さまが触れたものは僕の肌じゃなかった。


「……これは、何?」


 シーアお姉さまが触れたのは僕の左目を覆う眼帯だった。

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