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不遇だった土魔法、実は戦争の役に立つ~土魔法使いに転生してしまった僕の、思わぬ成り上がり戦記~  作者: リヒト


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崩壊

「あの愚か者めがぁッ!」


 怒号が響く。

 王都の一角。ニュースベック公爵邸の中に響き渡ったその怒号は大きかった。


「調子に乗りおって!カーランドぉっ!だから、あいつは元帥なんて器ではないのだ!あれにあんな」


 自身の執務室でニュースベックは先ほど届いた一報を机の上にたたきつけ、拳を振り下ろす。


「……お嬢様。そう、大きな声は出さず」


「ふんっ!」


 大ぴらに聞かれては不味いことを叫ぶニュースベックをメイドは窘める。


「愚か極まりない。功を焦り、攻勢を仕掛けるとはっ……」


 御前会議で定められた兵の振り分けとしては、予備役が西方。新兵が東方というものだった。

 それをカーランドは西方での戦果でもって再考させようとしたのだろう。

 新兵が正式に配備されるよりも前の戦果を求め、準備が完全に整わない状態でカーランドは西部で再びの攻勢計画を始動。

 未だ予備役の配備も予定の半数しか終わっていない状態での始動だった。


「そもそも新兵がこちらへと派遣される手筈になったのだから、新兵が来ることを前提とした攻勢など中止にするのが当然であろうに」


 攻撃目標はフリース王国の要塞都市。

 既にある兵と予備役で相手国の重要拠点を落とすと共に前線を押し広げ、広がった戦線を新兵で埋めるという当初の作戦計画が今の状況でそのままうまく行くわけがない。

 それなのにも関わらず、功績でもって再び新兵の配備を西部に出来ることを前提とし、カーランドは作戦計画を当初のものから何も変更せず行ったのだ。

 その結果、ルノア王国西部方面軍は、新兵の配備が東方へと行われる前に戦果を挙げなければならないという勝手な制限時間を己に課しての作戦行動をするしかない状況になってしまった。


「しかも、だ!」


 無茶な作戦行動に踏み入ったという愚かな選択肢を取ったという時点で万死に値する愚かな行為なのだ。


「まさか、相手の攻勢を受けても辞めないとは!」


 要塞都市攻略戦の最中、フリース王国はソール河畔にて攻勢作戦を開始した。

 ソール河畔での戦線において、フリース王国は優勢に立った。とはいえ、ルノア王国軍の塹壕線も強固。そう簡単に崩れるわけがない。

 戦力を集中させていた要塞都市攻略を諦め、ソール河畔へと援軍を出せば最低限の被害で攻勢を耐えられただろう。

 だが、功を求めるカーランドは要塞都市攻略を続けると愚考を敢行。結果、ソール河畔にて、ルノア王国軍は敗北を重ね、そのまま戦線が崩れた。


「……クソ、誰が、安定させた戦線だと思っているのだっ」


 ルノア王国軍の西部戦線は崩れた。

 1つの穴が空き、そこから流れ込んでくるフリース王国軍を止められていない。

 今、ノアが必死に繋いだ西部戦線は崩壊の危機にあるとさえ言えた。今になってカーランドは要塞都市攻略を諦め、ソール河畔へと援軍を出したが、もう後の祭りだ。


「……ちぃっ。どいつも、こいつも私の邪魔ばかりだなっ!!」

 

 状況をまとめればまとめるほど、怒りがこみ上げる。

 一度、メイドに窘められたこともあって飲みこんだ怒りがニュースベックの中で再び燃え広がる。


「さっさと東方に戻るつもりだったのが、全然戻れんではないか!」


 東方戦線の最高司令官はニュースベックであり、現場面で最も大きな戦果をあげたのはノアだ。

 その上で、今、その二人はあまり功績を立てないよう頭を押さえられている。

 ノアの急な伸長を軍上層部は警戒している。そして、ニュースベックの方は自身が今いる公爵家そのものから睨まれているのだ。

 

 ニュースベックには二人の兄がいる。

 だが、その兄二人は英雄と呼ばれるニュースベックの影に隠れてしまっていた。

 それを兄二人も、そして父さえも危惧していた。当主を継ぐのは男であって、女のニュースベックではない。これ以上の功績を挙げない為、これまた彼女も家の方から頭を押さえつけられていた。

 無駄に与えられた仕事のせいで、御前会議が終わった後もニュースベックは東方へと帰れていなかった。


「むぅ……やっぱり私は婿に行かんとな」

 

 彼女はニュースベックの名を捨てる必要があった。


「ふへへ……」


 そこまで考えたニュースベックの表情が少し───いや、ガッツリと歪む。


「お嬢様。自身の御年齢をお考え下さい」


「う、うるさぁい!」


 その表情から長らくニュースベックに寄り添った彼女のメイドが何を思ったか、察するのは一瞬だった。


「おほんっ!」


 完全に崩れた空気感を立て直すため、ニュースベックはわざとらしく咳ばらいをひとつ行う。


「ノアを呼べ。私が穴埋めしよう」


 そして、ニュースベックはキリっとした顔つきで真面目に命を下す。


「おやめください。お嬢様が口にすれば、最悪の下ネタに聞こえてしまいます。私は何と言えばいいのですか?穴を埋めるのは逆でしょう?とでも言えばいいのですが?」


「のぉい!今、真面目に戻っただろうがっ!」


 ただし、一度ギャグに流れた場の空気が戻ることはなかった。

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