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不遇だった土魔法、実は戦争の役に立つ~土魔法使いに転生してしまった僕の、思わぬ成り上がり戦記~  作者: リヒト


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独立

 むち打ち。

 その単語の恐ろしさは日本人だった僕にはそう、ピンとくるようなものではない。ムチと聞いても出てくるのはせいぜいSMグッズくらいなもの……だが、刑罰に使われるそれは想像を絶するものだ。

 一打ごとに皮膚は裂け、その衝撃は表面だけにとどまらず、内側へと鈍く重い痛みとして響いていく。最初の数打では赤く腫れ上がる程度であっても、回数を重ねるにつれて表皮は次第に耐えきれなくなり、やがて裂傷となって開き始める。裂けた箇所からは血がにじみ出し、それが次の一打によってさらに広がり、傷は深く刻まれていく。


「……この、現代でむち打ちするなどっ。正気とは」


 それをしようというエマ第二王女殿下が語る論理は理解出来るものだ。

 しかし、まともな良識を持った人間なら抵抗を覚えるだろう。

 ……。

 …………僕とて、その意図は理解できるのだ。


「非道であるとは理解しています。しかし、大事なのは構図です。ポルン王国で不貞行為に走った愚か者をその国の法で裁く。それは当たり前に許されるべき権利であり、それが覆されるべきでないことは同意していただけるでしょう」


「それは何も過去の法律である必要は」


「我々に、ローシャ帝国の法へと従え、と?」


「……ぐっ」


 そうだ。ルノア王国軍がローシャ帝国の法に従うわけにはいかない。

 見え方が悪い。ポルン王国の法だからこそ、従う意味が生まれるのだ。


「……我々は、ポルン王国は過去の国家だ。過去の国の法律に従う必要はない」


 果たして、この地域にとって再びポルン王国として再出発することは最善と言えるだろうか?

 ルノア王国が治安維持並びに後方の安定のためにポルン王国という形を利用したいだけ、というのはヤーキーズ国王陛下たちにも透けているだろう。

 だからこそ、これまでいたローシャ帝国軍下の文官たちをそのまま登用し続けるのを許されるとは思えないだろう。実際に許すつもりもない。これからの統治の為、ルノア王国から多くの人を招き入れることになる。

 ほぼ属国のような立場に置かれてしまうことは想像に難くない。


「我々に独立の意図はない。今更、そのようなことが出来るような力もない」


 ルノア王国に媚びへつらい、ただルノア王国の為に内部へと抱えたローシャ帝国の残党の戦いの為、いたずらにポルン王国が消耗していくだけ。そんな独立を望まないという選択肢は当然、取り得るものだった。

 ルノア王国の直轄地になれば、本国と同じ待遇を希望出来る。属国よりかは良いだろう。

 占領地になるのなれば、その治安維持を行うのはルノア王国軍であり、ポルン王国の民ではない。


「そうでしたら……申し訳ありませんが、我々はここポルン王国内で自国軍の統制を取り切るのは難しいかもしれませんね。ポルン王国として、しっかりと犯罪者に処罰を下してくださるのでしたら、問題なく統制を取れるのですが」


 だが、占領地になる。

 その選択肢が孕む絶望をエマ第二王女殿下は容赦なく叩きつける。


「……ッ」


 エマ第二王女殿下の本懐は王族仕込みの政治力の高さだ。

 今、彼女はヤーキーズ国王陛下へと二つの選択肢を突きつけたのだ。独立をするか、それともルノア王国の兵士たちの魔の手に旧ポルン王国の人間が晒されるのを容認するのかを。


「その……言葉の真意は」


「聞きますか?……聞かせるも、何も。言葉通りではありますが」


 ルノア王国軍だって柔じゃない。旧ポルン王国が処罰に動かなかったくらいで、統率が取れなくなるなんてことはない。その上で、エマ第二王女殿下は統率が取れないと言った。

 つまり、統率を取らず、自由にさせるという宣言なのだ。


「……我々に、選択肢をお与えになるつもりは?」


「この世には答えを聞くべきではない問いもあるとは思いませんか?」


 最も、今回の件はそう政治力が求められるものではないが。

 どうせこちらが上の立場。ある程度は押し付けられる立場なのだ。ヤーキーズ国王陛下が否と言えるだけの余地はそうなかった。


「貴方にも国を愛する気持ちがおありでしょう?」


 ローシャ帝国は旧ポルン王国領の統治をおこなう際、かつての王族にそう酷い待遇を与えなかった。

 だからこそ、ヤーキーズ国王陛下はこうしてかつての王家の継承者としてエマ第二王女殿下の前に座れているのだ。そうであってしまうからこそ、彼にもこのポルンを愛する気持ちを強く、持っていた。


「わかりました……今後とも、よろしくお願いします」


「はい。よろしくお願いしますね」


 故に、ヤーキーズ国王陛下は力なく頷くことしかできなかった。

 ……別に、エマ第二王女殿下は何も悪いことはしていないのだけどもね。ただ、必要なことをした。僕が未だ、この世界の貴族というものになり切れていないだけで。


「(……僕も)」


 勝利の為───果たして、僕は何処まで受け入れるだろうか?

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