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不遇だった土魔法、実は戦争の役に立つ~土魔法使いに転生してしまった僕の、思わぬ成り上がり戦記~  作者: リヒト


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見回り

 僕が監禁されていることに関するデメリットはしばらくの間ないはずだった。

 既に勝ち戦。僕が功績を立て過ぎると自分の伸長を快く思っていない上層部に睨まれてしまうので、戦闘外の統治なんかでは僕よりもエマ第二王女殿下に力を発揮してもらった方がいい。

 ここから僕の力が必要になることもそうない。

 だからこそ、ひとまず監禁を受け入れてもいいと思っていた。


「……流石に避難だ」


 だが、ちょっとあれだよね。

 昨日の夜のことを思い出すと、それはなかったことにするしかない。


「……僕だって男の子なんだからなっ」


 二十歳の女性と、十五歳の男子の同衾とか、許されるわけもないよね。

 ドッキドキの夜を過ごした次の日の朝。

 エマ第二王女殿下がどうしてもやらなくてはならない業務の為に僕を閉じ込めていた家屋を出た後、僕はサクッと監禁から逃れていた。


「いくら何でも、手枷を僕のところの商会製にするのは迂闊だよね。常に隠し持っている針金二本で縛られていても開錠できちゃうよ」


 最も、僕のところの商会製じゃなくとも開錠はしてみせるが。

 もっと時間はかかるだろうけど。


「……」


 監禁から逃れた僕はとりあえずローレンス少将閣下の元に向かうことを決め、ただの一般兵に偽装しながらワルミールの街を歩いていた。


「……占領地の街だな」


 出来るだけ、野蛮な真似はしないよう言い聞かせていた。

 略奪などしないよう、する必要がないよう僕の商会が様々な物品をルノア王国軍へと卸す手筈にしていた。

 それでも、街はある程度、荒れていた。踏み荒らされている家屋があるし、民間人と思わしき人の死体も転がっている……街の占拠。出来るだけ、平和にというのはやはり無理なのだろうか。


「……ねぇ」


「……しっ」


 ルノア王国軍の軍服を着ている僕を見る市井の者たちの目は警戒の色が強かった。

 

「おい、見ない顔だな」


 そんな市井の視線を浴びながら街を歩いていた僕へと、こちらと同じようにルノア王国軍は軍服を身にまとった数人の一団が近づいてくる。


「単独行動ってのも怪しい。単独での見回りは許可されていないはずだが?俺たちの真似事……俺たちの同胞から剥ぎ取りやがったか?……答え次第では、ただじゃおかねぇが……お前は何だ?」


 数人の部隊の部隊長であろう男が僕の前に立ち、にらみを利かせながら詰問してくる。

 うーん……良いね。ちゃんと見回りが見回りとして機能している。


「あぁ、自分はウィルアード准将閣下直属の者でして」


 それに感心ながら僕はウィルアード家の家紋があしらえられた徽章を見せ、その疑問に答える。


「あの人のか。なるほどな。それは悪かった」


 それで理解してもらえるくらい、傭兵団を初めとする僕だけの手の者がこの東方方面軍には多かった。商会経由で人員を動かせてしまうからね、僕は。


「ところで、前線に出たがりなウィルアード准将閣下は何処にいらっしゃっるので?攻勢初期にしかお顔を見なかったもので」


「さぁ?どうでしょう?……前に出すぎてエマ第二王女殿下から怒られ、大人しくしているということしか知りませんが」


「全部知っているじゃねぇか!」


「自分はウィルアード准将閣下の目として、街を見てまわってこいと言われてまして。貴方たちの口から聞きたいのですが、現状。ルノア王国軍はどういった方針で動いているので?」


「上の命令はちゃんと下にまで届いていると思うぜ?軍団は三つに分け、1つは城門の管理。2つは中央に集まって、捕虜の管理や設置されたルノア王国軍本部の護衛。そして、最後に3つ目が俺たちのように街の見回りだな」


「一番人員が割かれているのは?」


「2つ目だな。頭を押さえ、手足を押さえるだっけか……?一番必要に思える3つ目にはあまり人員を割かずに極力市井の人間には普通の生活を送ってもらい、ただこの街に閉じ込め続ける。そんな方針何だろう?まぁ、既にローシャ帝国軍のほとんどが消えちまった今だからこそできる技だろうな。歯向かってくる者が大していないのに、街を見回っている奴らが多いと威圧的だからな」


「……えぇ」


 エマ第二王女殿下はそういう方針で統治しているのね。

 

「ありがとうございます。確認が取れました。自分もしばらくは見回りを続けますので。皆様も」


「あぁ!任せろって、俺たちの英雄に言っておいてくれ」


「……っ。えぇ、ウィルアード准将閣下も貴方たちがそうおっしゃっていたことを聞けば、喜ぶでしょう。それでは」


「おうよ!」


 僕は人の良さそうだったルノア王国の兵士たちと別れ、また一人で街の見回りに戻る。


「きゃぁあああっ」


 別れてしばらく。

 僕の耳へと一人の女性の悲鳴が聞こえてくる。


「……何奴っ」


 悲鳴はすぐに途切れた。銃声はなかった。殺されたわけではなく、口をふさがれたのだろう。

 僕はすぐに悲鳴が聞こえてきた方向へと走り出す。


「……ここか?」


 玄関が開けられていた一つの家屋へと僕は迷うことなく足を踏み入れ、そのまま人の気配のある部屋へと向かっている。


「……何を、しているので?」


「……ァ?」


 リビング、だろう。

 家屋の中、一番大きな部屋で一人の女性が地面へと組み伏せられていた。


「市井の者への暴力行為は禁じられているはずですが?」


 女性を組み伏せている者たち。

 それは、ルノア王国の兵士たちだった。

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