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不遇だった土魔法、実は戦争の役に立つ~土魔法使いに転生してしまった僕の、思わぬ成り上がり戦記~  作者: リヒト


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国際法

 夜のうちに開かれたワルミールの城門。


「自軍も無事に動き出してくれたみたいだね」


 それに向かって進軍してくるルノア王国軍を僕を眺める。


「えぇ、これで任務は完了ですね」


「そうだね……やらなきゃいけないことはやった。別にもうこのまま自軍が頑張ってくれることを祈るだけだけど……」


 大きな城門の開閉を管理する高所から僕は街を眺める。

 

「……夜のうちの奇襲。でも、敵兵も動くか」


 未だ、対魔法結界は街全体にまで広がっていない。

 対魔法結界は街をぐるりと囲うように建てられた壁へと添うように展開されている。


「兵舎を魔法で焼いてしまおうか。我々も出来ることはしようか。未だ、街の中心部まで対魔法結界は展開されていないよ」


「……はい!?国際法違反では!?」


 百年以上前にあった大国同士の戦争。

 対魔法結界のなかった時代の戦争は悲惨そのもの。ただ一人で街を軽く焼けてしまえるような人間が何百といて、そんな人たちが全力でやり合ったのだ。

 世界中にあったほとんどの街が消失し、人口は十分の一以下にまで下がったそうだ。

 誰も勝者のいなかった戦争の後、各国は民間施設への魔法での攻撃を禁じる国際法を満場一致で採択する共に、大きな戦争からは遠ざかった。

 

 戦争のない百年は、核の抑止力が働いていた地球と同じと言える。

 魔法の恐ろしさは核に匹敵する───だからこそ、百年もの長い間、戦争はなかったのだ。

 しかし、その百年前の記憶を持つ人間もいなくなり、また、人類は思い出したかのように戦禍を開いた。


「あくまで禁じているのは民間施設への攻撃。兵の宿舎だけを確実に打ち抜けば問題はない」


 開かれてしまった戦禍。

 その中で、まだどの国もその国際法を守っている。それを守る必要はまだあるだろう。


「グレーとも言わせるつもりはないけど。相手は既にある程度市街戦の準備をしているし」


 城門より上がっている火の手を見て、大慌てで街の中にある兵舎の兵士たちが動いている。

 戦禍は街の中に落ちた。なら、例え街の中であっても軍事施設への攻撃は許されるだろう。


「……いや、確かにそうかもしれませんが」


 僕の言葉に対し、攻撃を命じられた兵士はあいまいな態度を見せる。


「そこまでやる必要がありますかね?」


「僕が恐れ過ぎかな?市街戦なんてやりたくないのだけど。果たして、どこまで戦いが伸びると思う?」


 大枠としての街は残したい。血みどろの市街戦なんて御免被る。


「……市街戦。起きますかね?」


 確かに、このまま小さな抵抗だけで終わる可能性も十分にある。

 兵舎では既にある程度兵士たちが戦闘の準備を始めているが、それは訓練通りに非常時の動きを取っているだけだろう。戦意から来るものでもまだないはずだ。

 兵士がやる気マンマンでも、既にこの街が包囲されてから半月は経っている。戦うよりも前に上層部が折れる可能性もある。


「気にし過ぎか?それならそれでいいんだけど」


「……自分から否を言っておいてなんですが、准将閣下が自分たち一般兵にまで意見を求めることもありませんよ」


「今更過ぎやしないかい?……じゃあ、命令だ。兵舎を焼こう。念には念を。今の我々に市街戦をやっていられるほどの余裕もない。絶対的な絶望で、ワルミールの占領としよう」


 兵力が足りていない。

 未だ、落とせずただ包囲しているだけの街が十以上ある。未だ、ゲリラ作戦を取っているローシャ帝国軍が各地に残っている。

 ここで血みどろの市街戦をやっている余裕はなく、そうなってしまう可能性は極力排除するべきだ。


「兵だけを殺してよ?」


「わかっています」


 僕の命を受け、一人の兵士が魔法を発動させる。

 その手に炎の弓を顕現させ、炎の矢を射る。

 

「……派手なものだね。やっぱり」


 その火の矢が兵舎を捉えたその次の瞬間、豪炎が天にまで伸びる。


「向こうも負けていないか」

 

 兵舎が燃える中、その中にいた兵士たちも大慌てでまずは水魔法で水をかけ、その後に思い出したかのように対魔法結界で魔法を消す。


「十分な成果だ。よくやってくれた」


「有難く……」


 だが、そのわずかな間にも兵舎は半焼。寝ていた者もまだいたはずで、かなりの死者が……出ただろう。


「市街戦になっても、これでこちらへと有利は傾くはず。後のことは任せようか」


 僕は今、城門をくぐってワルミールへと入っていくルノア王国軍を上から眺めながら、体から力を抜いた。

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