地下道
ローシャ帝国に与えた損害はあまりに大きい。
戦争開始よりたった一か月でローシャ帝国は元あった軍の半分を吹き飛ばしたわけだ。歴史上稀に見る大損害だ。
だが、そんなローシャ帝国が晒す隙に付け入れるほどルノア王国には兵力の余裕はなかった。もう、カツカツだ。そもそもとして、二正面作戦を抱えている国だからね。余裕などある訳もない。
旧ポルン王国領内のローシャ帝国の殲滅から、占領まで。色々とやらなくてはならない。本当にもう……カツカツで。
頼れるはずの同盟国たるオースティン帝国側も大損害を受けており、態勢の立て直しに必死だった。
普通に戦争の発端となった自国内の反乱分子の殲滅にさえ、失敗しているからな。あの国はもうズタボロだ。東方戦線でにらみを利かせる三か国は三者三様に大きく動けなかった。
「行くぞ、行くぞ……!」
そんな中で、僕は魔法を使って地面を掘りながら真っすぐ進んでいく。
「しょ、正気なのですか!?」
「危険すぎます!?」
銃を片手に突き進む僕の後ろをついてくる複数人の兵士たちが正気を疑ってくる。
「はぁー?もう既に歩き出してんだから四の五の言ったところでもう遅いよ」
だが、彼らは僕の後に続いて歩いてしまっている。
今更何を言うか、って感じだ。
「僕と一緒に旧ポルン王国領の首都!ワルミールを陥落させるんでしょ!」
「だから、それが無理だって!?」
僕が今、掘っている穴はワルミールから少し離れたところに張っている自陣営から、ワルミールの地下に通じる地下道だった。
僕が何をしようとしているか。
それは簡単。地下道でもってワルミールに侵入。その上で城門を占拠し、そのまま解放することで一気に占領してしまおうという腹つもりだった。
「無理かどうかはやってみないとわからないし、何なら結構成功率あるって話だったでしょ?」
「いや、確かにそう悪い作戦だとは思いませんが……まさかウィルアード准将閣下まで最前線に出てくると思っていなかったですし、何より!まさか、エマ第二王女殿下に無許可だとも思っていませんでした!」
「いや、あの心配性へと伝えたら絶対反対されるに決まっているじゃん」
「だから、問題なのでしょう……!?というより、ウィルアード准将閣下も割と無理をしていますよね!?そんな無茶して最前線にまで出て来なくともっ」
「……いや、無理しているのは日ごろだから。前線に暗い空気感をもたらさない為に頑張って明るく務めているんだよ」
「……なんか、申し訳ありません」
僕だって色々と大変なんだ……ほんと、前世は平和な日本で暮らしていた僕が何でこんな風に前線へと立つ羽目になっているんだ……無理を、している自覚はある。
でも、無理をしなきゃこんな世界でやっていけない。
無理をしないとシーアお姉さまを守れないのだ。死ぬ気でやるほかないんだ。
「うぅん!暗黒面に落ちるのは夜寝る前の時間だけって決めているから。もっと明るい話をしよう?」
「あの、本当に無理をしているなら言ってくださいね?」
「こんな無駄話をしている間にもうワルミールの城門付近まで来たよ。準備は大丈夫?」
「……はい?」
「いや、というかついてきている間、ずっと思っていたんですが、どうやって位置関係を把握しているので?」
「ん?そんなの見ればわかるじゃん」
「……はい?」
「何を言って?」
「城門の夜間警備兵は三名。寝ている者たちは全部で十五名かな?三名を闇討ちするのが一番。というか、それが出来ないともう逃げるしかないね」
「ど、どうやってそんなことまで事細かく情報を?」
「ふぅー」
周りの困惑をさておき、僕は息を吐き、呼吸を整える。
こういうのは動き出しが大事だ。動き出しの一歩目を強く踏み出さなきゃ、何時だって大胆な行動をとれない。
「さっ、行くよ。准将をほったらかしにしないでよね?」
「あっ!?ちょっ!」
僕は魔法を使ってワルミールの城門の内部へと続く穴を開け、そのまま一気に飛び出していった。
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