心配事
「ニュースベック大将閣下は何故、こちらに?」
「私の率いていた部隊は勝ちが決まってしまったのでな。ローシャ帝国は迂闊にも対魔法結界を最前線にしか貼っていなかった。そこをついた」
「あぁ、なるほど」
突然、第三軍の元にまでやってきたニュースベック大将閣下。
その人を出迎え、僕たちは一度、司令部へと集まっていた。
「こちら、粗茶になります」
「うむっ、ありがとう」
席についているニュースベック大将閣下に僕と、エマ第二王女殿下。
その三人へとローレンス少将閣下が紅茶を配る。
「すみません……本当は僕がいるべきなんですが」
僕の階級は准将で、ローレンス少将閣下よりも下。
お茶くみは僕の役回りだろう。というか、お茶くみの役回りが将のくらいを持っている人間に回ってくることが凄いのだが。一番下が准将ってどんな空間だよ。
「いえ、御三方がこの東方の中心ですから。私はあくまで西方から人間です」
「それを言ったら自分もですよ」
僕だって西方から東方に移動してきた人間だ。
「西方での貴方は階級章も持たない人間でしたね。カーネル大佐の元で指揮を執っていた貴方の命令をどう扱うか、こちらも毎日頭を抱えていた記憶があります」
「ふふっ、その節はお騒がせしました。ですが、役には立ったでしょう?」
「えぇ、間違いなく」
「そう断言してもらえたら嬉しいです」
「それでは、自分は部下の配置に戻りますので」
「はい。お願いします」
ローレンス少将閣下が頭を下げて天幕から退出し、残されたのが僕たち三人だけになる。
「……まさか、君たち二人が仲良くしているとは」
「またそこですか?」
そして、再びニュースベック大将閣下は僕たちを見て初めに口へとしたことを繰り返す。
「何といっても……あんな、土塊と呼んだ会話をしていたのだぞ?私は君たちを二人にしたことを心苦しくだなぁ?ウィルアード准将が倒れたとの報告を受けた時、絶対に君たち二人の不仲が原因だと思ったが」
「失礼ですね!?私だって学びます。目の前で彼の力を見れば、評価を改めます」
「我々も一介の将ですから。うまくやりますよ」
「……どの口が。私を無視して最前線に出て撃たれた人が何を言っているのでしょうか?私のことなど無視していたではありませんか。あれでうまくやっていたつもりなのですか?」
「……お戯れを」
ほぼゼロ距離にまで詰め、すぐ耳元で僕への詰問を続けるエマ第二王女殿下に苦笑で返す。
「……いや、本当に仲良いな?」
それを見るニュースベック大将閣下はほとほとあっけに取られていた。
「うぅん……まぁ、仲が良いのはいいことだ。これなら、二人に仕事を振りやすい」
「もう次の動きが決まっておいでなので?」
「うむ。此度の勝利で理解した。今戦争の活路は西方ではなく、東方こそにある。新兵ならびに予備役を東方に配置し、大規模侵攻作戦でもってローシャ帝国を完全に屈服させる」
「これからニュースベック大将閣下は王都の方に?」
「あぁ、近頃戦略を決める会議を私抜きで始めるつもりらしいのでな?乗り込んで人員を分捕ってくる。君たち二人にはその間に旧ポルン王国領の確実な占領をお願いしたい。既にある程度の人員は見繕い、こちらに来るよう手配している。それらをうまく使ってくれ。私が率いていた第二軍の一部も流用できるだろう」
「……なるほど」
まぁ、自然な流れだ。
ただ、……いや、本当にただ、何時どのタイミングでニュースベック大将閣下は根回しを完了させていたんだ?自身が王都に帰る為の準備に、会議への参加申請。人員の確保から配備まで。
成功するかもわからない作戦行動をしている最中にこれらを終え、なおかつすべてが間に合うよう動くなど、どんな頭があれば出来るんだ……?訳がわからん。
「会えてよかった。私はもうすぐ王都へと飛び立たねばならん。私の唯一の心配事ものぞかれた。期待しているぞ?」
「「ハッ」」
「うむ。では、私も第三軍の様子を見てまわろう。ついて参れ」
「「ハッ」」
軍隊らしく、上官への返答はYESのみ。
立ち上がったニュースベック大将閣下に続いて僕とエマ第二王女殿下も立ち上がるのだった。
ご覧いただきありがとうございました。
ここより少しスクロールして広告の下にある『☆☆☆☆☆』から評価することが可能です。
ブクマ登録、いいねも合わせて評価していただけると幸いです。
また、感想は作品を作る上での大きなモチベとなります。
感想の方もお待ちしておりますので、気軽にお願いします。




