第二軍
「クソクソクソクソッ!?」
砲弾が鳴り響き、人々の声が木霊する。
そんな戦場の一角で一人の男が声を張り上げる。
「おい……死ぬなよっ!……まだっ!」
男は地面に倒れる者の肩をゆすり、必死に声をかける。
何度も、何度も、地面に倒れる戦友へと声をかけ続ける。
「……おい!」
そんな男の肩をまた、別の男が掴む。
「既にそいつは事切れている。頭に弾丸を一発。即死だ」
「だがっ!?こいつには、……こいつには、帰りを待っている奥さんがっ!?もうすぐ子供が産まれそうだと俺にっ」
「なら、お前さんが後で見舞いにでも行ってやれ。ニュースベック大将閣下のご厚意で二階級特進への報奨金は何時もよりたんまり出ている。それを持っていってやるんだな」
食い下がる男を軽く一蹴した別の男は銃のリロードを終え、再び塹壕へと頭と銃口を出し、引き金を引く。
「ちっ……ハズレやがった。おい!お前もさっさと銃を握れぇ!そろそろローシャ帝国軍の奴らが動き出すぞ!」
「……」
響く怒号。
何時、自分が目の前で倒れる戦友のようになってもおかしくない。逃げて、隠れて。それが許されるほど、軍隊は甘くない。敵を殺し、勝利する他ない。
「……クソがっ」
男は下唇を噛みしめ、怨嗟の声を漏らした後に目の前の遺体を塹壕の外へと放りだす。
「さっさと銃を構えろっ。これ以上の撤退は認められていないっ!」
ローシャ帝国第二軍の攻勢を受け、ルノア王国の中央部は既に突破された。
右翼と左翼が耐えている中、中央部だけは当初の防衛線から十キロ以上後退し、元から用意されていた第二防衛線の塹壕に籠り、ローシャ帝国軍を迎え撃っていた。
「来るぞっ!」
一度引いた中央部。
そこを突破の鍵と見て、ローシャ帝国軍は中央部へと兵を集め、攻勢の勢いを強め続けていた。
「「「Ураааааааа!!!」」」
即席の塹壕に籠っていたローシャ帝国軍の一部がそこから飛び出し、ルノア王国の塹壕へと突撃を敢行してくる。
「来た来た来た!?うてぇぇぇええ!」
それをルノア王国軍は迎え撃つ。
何発、何十発、何百発と銃より弾丸が放たれ、その半分以上がローシャ帝国軍を撃ち抜き、幾人もが地面へと倒れ、転がっていく。
「「「Ураааааааа!!!」」」
だが、ローシャ帝国軍は止まらない。
銃で完全に止められるような勢いではなかった。
「機関銃はどうなっているんだ!?」
「向こうの砲弾でお陀仏だ!」
「クソがッ!」
銃声が響き、響き、響き。
ローシャ帝国軍の兵士たちがどんどんと塹壕へと近づいてくる。
「う、うわぁぁぁあああああああ!?」
そして、とうとう塹壕から顔を出せばくっきりとローシャ帝国軍の兵士たちの鬼気迫る表情が見えるようになった頃、気の弱い兵の一人が悲鳴をあげて逃げ出そうとする。
「逃げるなぁッ!来るぞぉっ!」
それを隣にいた兵士が片手で捕まえ止め、自身のもう片方の手にあった銃の持ち方を変える。
『うぉぉぉおおおおおおおおおおお!』
『ルノアの奴らをぶち殺せぇッ!』
塹壕のすぐ前に立ったローシャ帝国軍が銃を構え、中にいるルノア王国軍へと発砲の構えを取る。
「うるせぇっ!」
そのローシャ帝国軍の一人へと、ルノア王国の兵は銃剣で首を突き刺し、地面へと倒す。
「全員叩きだせぇッ!ここで負けたら後がねぇぞぉ!」
一人は倒した。
だが、塹壕の前にまで来たローシャ帝国軍の兵士たちは一人じゃない。銃声が響き、幾人ものルノア王国軍の兵士が地面に倒れる。
「うぉぉおおおおおおおお!」
それでも、塹壕の中に隠れるルノア王国の兵士たちの数はローシャ帝国軍の兵士たちよりも多い。
至近距離では銃よりも、その先にある銃剣の方が効果的だ。
『祖国の為にぃぃいいいい!!!』
『さっきと同じように逃げちまえッ!』
塹壕の中へと転がり込んできたローシャ帝国軍の兵士をルノア王国軍の兵士たちが銃剣で立ち向かっていく。
「このっ!」
銃剣で、スコップで、石で、拳で。
塹壕の中に入り込んできたローシャ帝国軍をルノア王国軍は外へと叩きだしていく。
数の理はまだ、ルノア王国軍にあった。
「指揮官ッ!?撤退の許可をッ!ローシャ帝国軍の兵士たちが塹壕から全部出てきやがった!?」
だが、ローシャ帝国軍の突撃は終わらない。
第一陣が無事に塹壕の中へと入り込めたのを確認したローシャ帝国軍のほとんどが塹壕から飛び出し、突撃を始めていた。
それを迎撃出来る余裕はルノア王国軍になかった。ただ、自分たちの横にいるローシャ帝国軍を殺すので精一杯だった。
「まだだ!?撤退の許可は出ていない!砲兵だ!砲兵!うちの軍ごと打ち込むんだ!ここを突破されるわけにはいかない!」
「正気ですか!?」
未だ、ローシャ帝国軍が入り込めていないルノア王国の塹壕の後方部にいる指揮官たちの中にも焦りが強くなった頃。
「「「……ッ!?」」」
1つの砲弾がこちらへの突撃を行っていたローシャ帝国軍を吹き飛ばす。
その砲弾は攻撃が来るはずのない。突撃を行うローシャ帝国軍の真後ろからであった。
「な、何が!?」
それは、一発や二発ではなく、次々と打ち込まれ、ローシャ帝国軍の突撃の足を止める。
「ハハッ!右と左の奴らがうまくやりやがったんだ!」
ニュースベック大将から作戦のすべてを聞いていた大佐の階級章をつける男が叫ぶ。
「計画通りに右と左を突破し、包囲網を作りやがった!今度は俺らが攻勢を仕掛ける番だァっ!」
大佐の叫び声。熱狂。
それに答えるように、ローシャ帝国軍の真後ろへとルノア王国軍の影が忍び寄っていた。
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