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不遇だった土魔法、実は戦争の役に立つ~土魔法使いに転生してしまった僕の、思わぬ成り上がり戦記~  作者: リヒト


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着任

「失礼いたします」


 先ほど、ノックした扉を開け、僕は部屋の中へと入る。


「本日よりこちら、東部方面司令部へと着任いたしました。ウィルアード侯爵家のノア・ウィルアード准将であります」


 王都から東方までの長い列車を乗り継ぎ、僕は東部方面司令部にまで出向してきていた。


「おぉ……君が、待っていたよ」


 そんな僕を出迎えてくれたのは一人のまだ若い女性だった。

 腰にまで伸びた燃えるような赤い髪にこれまた同じように赤い瞳を持ったその女性の背丈はかなり高く、180センチ近くはあるだろう。

 その上、お堅い軍服の上からでもわかるほどにグラマラスな体型をしていた。


「西部での活躍をよく聞いているとも。凄まじい活躍をしたようだな。流石、と言っておこう。まだ若いだろうに」


「お褒め預かり光栄にございます。ニュースベック大将閣下」


 彼女こそが東部方面の総大将であるニュースベック大将閣下だった。

 

「ですが、お若いのはそちらもでしょう?」


「はっはっは!三十が見えてきてしまった私に年齢の話題は厳禁だぞ?……まだ、私は独身なんだぞ?」


「……」


 僕はそっと目を逸らす。

 独身云々は置いておいて、三十での大将就任。

 十五で准将な僕が言えたことではないが、ありえないくらい若い。

 それも、ニュースベック大将閣下は女性だ。未だ男尊女卑的な価値観も残っている中でのこれは異例中の異例だ。


「ニュースベック大将閣下の名声に関しては辺境の大貴族たるウィルアード侯爵領にまで強く届いています。新大陸の独立戦争において多大な活躍をなさり、彼の国で植民地を広げていたフリース王国を新大陸から叩き出すという快挙をなされた、と」


 その裏にあるのは絶対的な功績。

 長らく本国での戦争はなく、ヌルイ出世競争しかなかったルノア王国内で、絶対的な功績をあげた才女であると共に、公爵家の生まれだったニュースベック大将閣下だけに許された大出世だ。

 ニュースベック大将閣下は二十四歳にして准将にまでなっているからね……あれ?と思うと、十五で准将になっている僕が異例過ぎるな?


「数年前の功績だ。そのおかげで……まぁ、それのせいで婚期も逃したんだが。どうだ?私に婿入りとか?」


「年齢が倍近いですが、大丈夫ですかね?」


「……えっ?倍?……いや、そっか。十五歳だもんね。あっ、そ、そう……成人と同時に結婚した昔の妹……あの時のあの子から倍!?わ、私はそんなに年を……!?こ、子供を私は産めるのか!?」


「……」


 あぁ、マズイマズイ。

 なんか地雷踏んだっぽい。


「……うぅん!まぁ、良い!私のことよりも、だ!君!君も挨拶したまえ!」


「なんっ!?」

 

 どうしようか。そう僕が悩んでいた中でニュースベック大将閣下が勝手に立ち直り、ずっと部屋に置かれている地図にかじりついていた別の女性の首根っこを掴み、僕の前にまで持ってくる。


「せっかく新任の准将がこちらに着任してきてくれたのだ。早く挨拶なさい?」


「……何ですか?まだ餓鬼じゃないですか」


 僕の前に連れてこられた女性は堂々たる態度でこちらを侮辱する。


「お初御目にかかります。エマ第二王女殿下。私はノア・ウィルアード。先日、准将に任官されました。未だ十五歳の若輩者でありますが、よろしくお願いいたします」


 その侮辱をさらりと流し、僕は挨拶の言葉を口にする。

 目の前に立っているこの人こそ、これから僕の直属の上司となる第二王女殿下である。その年齢は未だ二十歳。だが、昔から神童としてもてはやされた彼女の能力は疑う余地もない。


 その上、天は二物を彼女に与えた。

 肩の高さで短く揃えられた金髪。

 何も書かれていないキャンパスのように真っ白な肌の上で輝く宝石のような蒼い瞳。

 しなやかで美しい肉体。

 能力だけではなく、美しさまで彼女は持っていた。


「……十五?十二とかではなく?」


 そんな人から見下された視線を向けられるのはちょっとだけゾクッとするよね。


「そう言いたくなる気持ちもわかりますけど、流石に未成年で戦場に立つのは問題でしょう」


「だとしても十五は若すぎると思いますが」


「まぁまぁ!年齢どうこうはいいじゃないか!君も若いだろう?」


 僕に食ってかかっていたエマ第二王女殿下の肩をニュースベック大将閣下が掴む。


「……」


 若い。

 そう言われたエマ第二王女殿下の表情が分かりやすいくらいに歪む。

 彼女の階級は中将。

 これに関しては何かの功績があってのことではなく、完全に王女という生まれあってのものだ。


「一つの戦場の最高司令部にしては驚異的な若さと言えるな。平均年齢何と21歳だ」


「……臭いですよ。ニュースベック大将閣下」


 肩を掴み、ぐっと近づいてきたニュースベック大将閣下に対し、エマ第二王女殿下はこれまでの話とは一切脈絡なく、ただストレートな言葉のパンチを放つ。

 

「なぁん!?急に何だ!……た、確かに水浴びはしばらくしてなかったかもしれないが……そんな臭くないだろう!なぁ!ウィルアード准将!」


「……」


 僕はすっと目を逸らす。

 内心では正直に言おう。この部屋に入った時からちょっと酸っぱい匂いがしていた。


「ぬぅあぁぁああ!……くぅっ!若い男の子にそんな反応されるのはちょっと傷付く……っ。水浴びしてこよう」


「……まぁ、そんなお気になさらないでください」


 年齢的に思春期真っ盛り。この世界に生まれてからというもの、前世で覚えていた性欲というものを忘れていたのだが、ここ最近はそれを思い出してきているところもある。

 まぁ、つまり何だ。

 ご褒美と言えるところもあるのでそんな期待しないで欲しい。


「ニュースベック大将閣下はお美しいですから。そう、気にはならないですよ」


「おぉ!では、別にもう水浴びなんて……」


「あっ、でも水浴びはお願いします」


「……はい」


 物事には限度があるのだ。

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