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不遇だった土魔法、実は戦争の役に立つ~土魔法使いに転生してしまった僕の、思わぬ成り上がり戦記~  作者: リヒト


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伏兵

 大地は僕の味方だ。

 地面に魔力を通せば、遠く離れた場所で起きたことも手に取るように感触として自分に伝わってくる。


「……そろそろか」


 乾いた笛の音が戦場に突き刺さった。


「総員、整列! 横一線!」


 怒号と共に兵たちは肩を寄せ合い、隙間を埋める。背中を押され、押し返され、個々の意思は陣形の中へと溶けていった。

 銃を手に持った兵士たちが体温を共有し合う。


「横一線!間隔を詰めろ!一歩分も空けるな!」


 将校の声が張り付いたように響く。

 命令は冷静で、それに従う兵士たちも忠実。動揺もなくその命令へと従っていく。その足取りからは余裕さえも感じ取れる。


「……前進準備」


 だが、その余裕は続く言葉で、背筋が自ずと引き延ばされ、戦場の霧へと飲まれていく。


「歩調を合わせろ」


 将校は一人ひとりを見ない。

 見ているのは“線”だけだ。


「前へ───進めっ!」


 号令の命、それに合わせて隊列が動く。

 ゆっくりと、確実に。

 巨大な生物のように、ひとつの巨大な捕食者となって進んでいく。 靴音が揃い、地面を踏みしめる。


「ひっ」


 その捕食者の視線の先にいるのは僕たちの兵士───伏兵を悟らせない偽装として、殿部隊を演じるルノア王国の兵士たちだった。

 彼らはカーネル大佐が選んだ精鋭たちだ。だが、一糸乱れぬ動きで近づいてくるフリース王国軍を前に恐怖の感情を露わとする。動揺が、大地から伝わってくる。


「……ま、まだなのか?」


 それを、魔法などなくとも感じ取れるのだろう。

 僕の隣にいるカーネル大佐が早くの攻撃命令を求める。

 

「まだまだ」


 初撃が肝心だ。

 最も、効果を発揮できるのがそれだ。


「……」


「……」


「……ま、まだなのかっ。足音がもうっ」


 まだ、待つ。

 その時が来るまで。


「そろそろ───!」


「今っ!」

 

 カーネル大佐がそろそろ限界を迎えそうになった頃、先頭集団がこちらの銃の射程範囲に入った───そう、判断した僕は攻撃命令を口にする。


「……ッ!射撃よぉーういッ!」


 待ち望んだ僕からの指令。

 それを聞いたカーネル大佐は叫び、その手にあった銃を天に向かって撃つ。

 それに伴い、塹壕全体に散った将兵が命令を叫び、それに従ってルノア王国軍も動き出す。


「うわぁぁあああああああああ?!」


「て、敵兵っ!?」


 一斉に塹壕から頭だけを見せたルノア王国軍が次々と銃の引き金を引き、捕食者だと思っていた哀れな者たちへと弾丸の雨を浴びせていく。

 最初の衝撃で、フリース王国の兵は確実に崩れた。後はもう追い詰めるだけ。


「機関銃用意」


「機関銃よぉーういッ!」


 こちらの所在はバレた。

 札を隠す必要はもうない。

 僕は更に魔法を発動し、地形を変えていく。土の柵を作り、機関銃を撃つためのトーチカを次々と生み出していく。


「撃て」


「うぉぉおおおおおおおおおおおおお!」


 悠長に陣形を組み、銃を手にこちらへと近づいてきていたフリース王国軍へと複数の機関銃が一気に火を吹く。


「こ、こんなにも……!」


「結局、学びきれちゃいないね」


 魔法が駄目であるとルノア王国も、フリース王国も多数の出血でもって知った。

 だが、まだ足りない。戦略自体も変えなけば。

 

「……ふぅ」


 今だけだ。

 

 それも、効果的に活かせる機会はそう多くない。

 僕が知っていても、周りがついて来られないんじゃ意味がない。ほんのわずかな、タイミングでしか僕の知識は活きてこないだろう。その、活かせる僅かな機会が今だ。

 ……。

 …………今しかない。最大の、戦果をあげる必要がある。


「……っ」


 僕は手にある銃を構え、そのまま体を起こし、塹壕から顔を上げる。

 ……視線の先。顔をあげた、僕の視界の先に映す者。

 そこにいるのは人だ。

 敵国の、だが、人。僕の命令によって攻撃を受けた者たちが次々と血を吹き出させ、倒れていく。呼吸が、止まりそうになる。


「……ハッ」


 呼吸を落ち着かせ、引き金へと指をかける。

 敵を見定め、これまでの訓練を思い出し、引き金を引く。


「んっ」


 しばしの衝撃が僕の体を貫き、そして、僕が狙っていた敵兵が地面へと倒れる。


「……これが」


 衝撃は、感触は、全身を襲った銃の反動だけだった───初めて、人を殺した感覚は。

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