変革の理由
初めにあったのは防御魔法の発展だった。
革新的な防御魔法。魔力の一切を通さなくさせる防御魔法の登場がこれまであった戦いの在り方を根本から変えてしまったのだ。
魔法は魔力を持って発動する。
魔力を通さない壁をどんな魔法も突破出来ないのだ。ありとあらゆる攻撃魔法が無効化されてしまった。
広範囲を焼きつくす炎の魔法はたった一つの魔法で無効化され───そして、魔力の乏しい落ちこぼれの為に作られた銃の返り討ちにあった。
これまであった魔法の打ち合いは一瞬にして廃れ、代わりに全員が物理攻撃の打ち合い。つまりは銃の打ち合いに変わった。これまで、魔力の乏しい者の最低限の自衛道具という扱いでしかなかった銃が戦争の主役に躍り出た。
そんな技術革新から数年。
銃火器の技術は急速に発展し、機関銃や大砲など、数多くの兵器が生まれることになった。
「はぁー、それを知らずに突進を繰り返すなんて愚かでしかないねぇ」
だが、そんな現実をルノア王国が身に染みて知るのに一か月かかった。
ここ百年。大国同士の争いがなかった。あったのは小国同士の鍔迫り合いだけ。その小さな戦争では既に魔法が使われなくなり、銃火器が使われていた。
であるからこそ、ルノア王国を初めとした大国は銃火器の研究に務めると共に、大量生産も始めていたのだ。
新しい戦争を、大国は知識として知り、国家の態勢を。
だが、現実として受け止めていなかった。根柢の意識だけは変えられていなかった。貴族たちはこれまでのように華々しく魔法を使い突撃を敢行し、数多くの戦場を渡り歩いていた傭兵の手によってハチの巣にされた。自分たち優れた、本当の貴族であれば問題などという根拠のない自信があったのだ。
「んまぁ、僕も知らんかった側だが」
その自信を持っていた側でもある僕は苦笑する。
言い訳させてもらうのならば、対魔法結界に関してふたつの誤解があったのだ。
集団で使うことで自分たちのいる一帯に、巨大な円形状に展開できると思っていなかったこと。そして、個人で使うために使用時間に限界があると思われていたのだが、複数人で使うことで魔力消費を分散でき、無制限に使い続けられたのと。
それまでの小さな戦争において、この両者が求められていなかった為に実行されていなかったそれらは当たり前のようにすんなり使えてしまったのだ。
「言い訳でしかないけど」
戦争を知らなかった大国が戦争を体験するのに一か月かかった。
ルノア大国にとって幸運だったのは、敵国が自分と同じ大国であり、自分たちとまったくもって同じミスを行っていたことだろう。
互いに大量の被害を産んだだけで、趨勢は変わらなかった。
「はぁ……」
そして、今。戦場は貴族たち含め、使い慣れないスコップを片手に塹壕を掘り、銃を構えて打ち合うだけの地獄と化した。
「ため息が止まらないですね」
ひとりでぶつぶつと呟いていた僕に対し、となりに座る男が声をかけてくる。
「……そりゃ、まぁねぇ」
戦争に行く。僕がそう決意してから、行動に移すまでは非常に早かった。
父上に相談したその日のうちに領地を出発。
少しの旅の果てに僕は前線近くにまでたどり着き、一兵卒に紛れて最前線へと向かう馬車に乗っていた。
「さっさと終わらせて帰りましょう」
僕の隣に腰掛ける男は何とも呑気なことを口にする。
「いや、長くなるだろうよ」
第一次世界大戦はクリスマスまでには終わらなかった。
こっちのもそうだ。
「いやいや、そんなことないさ。新聞でもそう言われてて……」
長くなる。
そう告げた僕の言葉を男が否定した瞬間。
「前線が吹き飛んだ!」
外から叫び声が聞こえてくる。
「……はい?」
「行くぞ」
「はっ!?」
もう、最前線に着いたようだ。
当初の目的地から道半ば、外からいきなり聞こえてきた声に隣の男が困惑している間にも僕は、迷うことなく自分たちが乗せられている馬車の荷台を覆い隠していた布を勢いよく開けるのだった。
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