反対
決意は固めた。
僕も戦地に向かう。父上からの認可も得たそれは既に決定事項だった。
「ど、どういうこと!?」
だけど、それをシーアお姉さまに伝えた時、彼女は猛烈に反対の意を示してきた。
「だ、駄目よ……!認めないわ」
「今、ウィルアード侯爵家の人間は戦場に誰も立っていません。この国難に誰も戦場に立たないなど」
「だからといってノアが行く必要はないのよ!……あ、貴方はまだ若いわ」
「既に十五。成人にはなっています」
この国での成人は日本よりも早く十五歳。既に僕も成人した立派な男だった。
「他の国じゃ十八で成人なの。この国でだって一人前は十八になってからという見方も強いわ。現に十五で戦場に立つなんて……」
「少ないですが、ないわけでもないですよ。問題なく出れます」
「……あ、貴方は土塊なのよ……!ノアに! ノアに務まるわけないじゃない!」
「務めてみせましょう」
「……無理よ。嫌よ……許さないわよ……っ!」
シーアお姉さまの
「……は、ハハ」
そして、嗤う。
「の、ノアの……ノアの四肢を焼けば、私の元に居てくれるかしら?……ねぇ、そうよ。私が一生守って、二人でならどこまでも……!」
感情の発露。
具体的な魔法はなく、ただ感情のままに荒れ狂うように魔法が発動し、炎が僕の元へと向かってくる。
「……ふぅ」
だけど、その炎はひとつの魔法だけで全て僕へと届くまでに露と消える。
人を焼き尽くすのに十分な、かつては必殺とされ、戦場で輝いた炎は何も残さなかった。
「……あっ」
魔法が消えていく。
それを、シーアお姉さまは呆然と見つめる。
「……対、魔法結界。これは確かに強力だね」
「あっ、いや……これは……!」
消えていく魔法を呆然と見つめていたシーアお姉さまの表情が変わっていく。
呆然から困惑に。困惑から呆然と。後悔と罪悪の色。シーアお姉さまの表情がドンドン青ざめ、瞳に涙が溜まっていく。
「ちがっ……そんなつもりじゃ!の、ノアを傷つけようなんて……!そんなこと!」
「大丈夫だから……僕は気にしていないよ」
震えるシーアお姉さまを僕は優しく抱きしめる。
「大丈夫だから。僕は大丈夫……シーアお姉さまが帰ってきてくれたように、僕もちゃんと帰ってくるから」
「うぁ……うぅ、ごめん。ごめんっ!」
初めて、謝られた。
ずっと、自分が偉い。自分が正しいと胸を張り、僕の前に立ち、ずっと強かった姉が、今、僕の手の中で腕を失って震えている。
「……大丈夫だから」
そんな姉を、これまでしてもらったことを返すように強く抱きしめる。
「……わ、私のせい、よね?」
また、震える声だった。
「私の、婚約話があるんでしょう?ウィルアード侯爵家の、立場を守るため、少しでも優位にするため、仲間を作ろうと……その、代わりなのよね?」
「……」
「わ、私のせいでノアが……守るって、そう、誓ったのに」
「……」
「あ、あんな可愛かったのよ?……誰よりも可愛かったのに、誰も愛そうとしていなくて。それなのに、……ノアは、私にはずっと笑いかけてくれて。私が守らなきゃって……お姉ちゃんとして、ずっと前に居なきゃって!私が愛してあげて、守って上げなきゃって……!」
「……愛してくれてありがとう」
「わ、私は……!」
「今度は僕が守ってあげるから。今までの分も含めて、僕が必ず」
「……ごめん。ごめん、強いお姉ちゃんで居られなくて、守ってあげられなくて。弱くて……!」
「大丈夫。シーアお姉さまは、ずっと強い自慢のお姉ちゃんだから……だから、待ってて。必ず帰ってくるから」
戦場で、ずっと戦おう。
家族を守るために。僕が戦う間、シーアお姉さまは守られるのだから。
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