決定事項
「……正気か?」
父上の執務室。
面会の約束を取り付け、そこにやってきた僕が告げた言葉に対し、父上は疑問の言葉で返す。
「えぇ、本気ですよ。僕が今戦争に参加します」
そんな父上に対し、先ほど告げたこととまったく同じ言葉を繰り返す。
「駄目だ」
僕の言葉を受け入れた父上はにべもなくすぐ却下の言葉を口にする。
「土属性持ちのお前が戦場に立ったところで何になる?」
「既に戦争は新しいものへと変わったのでしょう?」
「……ッ」
駄目な理由として語った父上の言葉を僕はすぐさま退ける。
「魔法は過去のものとなった。でしたら、土属性であっても問題はないでしょう。どうせ、使えないのですから。土属性も、火属性も同じでしょう」
「……むぅ」
僕の言葉に父上は押し黙る。
「むしろ、僕こそが適任と言えるでしょう。僕の商会は数年前から軍事の方にも手を出しています。製造から流通まで。傭兵たちにも顔が利きます。動きやすさで言えば僕が一番であるとさえ言えると思いますが?」
「……」
僕の言うことに間違いはない。
その確信でもって告げている僕の言葉に対し、父上は押し黙り続ける。
「……シーアのためか?」
その果てに、父上が口にするのは目的についてだった。
「えぇ、僕が戦争に行けば、ウィルアード侯爵家の面目は保ちます」
「お前がシーアの前から居なくなることが、シーアのためになるとも思えんが」
「死ぬつもりはありません……それに、父上もわかるでしょう?今のシーアお姉さまは精神的な余裕がありません」
「……居なくなる方が辛いのでは?」
「婚姻に出すのであれば、そう変わらないと」
「……アイゼンが、寝たりきりだ。私の息子はお前しかもう居ない」
シーアお姉さまの話から僕の行いを止めることは不可能と察した父上はすぐにその話をすり替える。
「これまで居ないもの扱いしてきたのは父上の方でしょう?……はは、任せますか?僕にとって唯一の家族を犠牲にして生き残った家を。親戚筋は、いくらでも要ると言うのに」
だけど、その話で僕を押し留めようとするのはいくら何でも都合がよすぎるだろう。
「……」
それにしても、目の前の男にも自分の子供を自分の後継にしたいという欲があったんだね。父上が散々土塊と見下していた僕をすんなり当主にしようとするとは思っていなかった。
だけど、それのためにわざわざ僕が自分を曲げてあげるつもりは無い。
「……いいだろう。認める。好きにしろ」
「えぇ、好きにさせてもらいます」
「すぐさまお前が戦場にいけるよう手筈を整えよう。一週間ほどは待て」
「あぁ、要りません」
「……何?」
「初期攻勢の失敗。それを隠すために敷かれた箝口令。それは何とか突破しました。既に僕の商会の人間から最前線の状況は聞いています」
「……何だと?何を勝手なことを」
「今、僕がもっとも必要とされているところに行くつもりです。一週間経ってからでは遅すぎます」
土魔法を活かすのなら、攻撃に回っているところよりも今、防御に回されるところだろう。
「僕はある地点における敵の反撃作戦の可能性を掴みました。そこの救援に行くつもりです」
「……自ら、危険地帯に?」
「それを止めてこそ、貢献となるでしょう」
「……過信、しているつもりか?それであるなら……」
「してませんよ。では、失礼します」
時間はかけられない。
僕の手勢が必死こいて集めた、唯一の情報。それを活かせる瞬間は僅かだ。
父上との会話は最小限で打ち切り、僕は執務室を後にするのだった。
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