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【本編完結】 少女クロスボウ小隊〜部隊を率いたのは魔を狩る者と恐れられた男だった〜  作者: 犬尾剣聖


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番外編① 戦う牛肉


番外編を4話書いてみました。

4日に別けて投稿予定です。


よろしくお願いします。








 今日は第一ワルキューレ小隊の久しぶりの休暇の日である。

 少女達は夕べからソワソワしっぱなし。

 朝、正面門が開かれると我先にと外出許可証を握りしめて門から走り出ていく。

 休暇とあって少女達の服装はいつもとはちょっと違う。

 重いクロスボウは持っていない。

 さすがに小剣くらいは持って行くようだ。


 門の外には少女らがチャーターしたらしい馬車が数台待ち構えており、少女達はそれぞれの馬車へと乗り込んでいく。

 その馬車の行き先は全て同じで、ヘブンズランドであった。

 

 ロックヒルから一番近い街であり、ヘブンズランドは最近急成長を遂げた街だというのも理由の一つだ。

 元々最前線で働く関係者の家族などを住まわす為の街だったのだが、人族の勢力が広がったために一気に人口が増え、それに伴い娯楽施設も充実してきたという訳だ。

 付近にはまだ手付かずの土地が多く残っていて、狩場や開墾や資源採集等とやらなければいけないことが多くある。

 それには人材が必要で、その人々が安心して住める街が必要だったのだ。

 幸いな事にサンバー伯爵の配下には、国でも一、二を争うほどの優秀な工兵部隊が揃っている。

 それで近くにサンバー伯爵部隊の駐屯地も出来て、ヘブンズランドは急速に発展していった。

 

 特別休暇はその街で時間を潰そうと、少女らが出かけるのは自然な流れだった。

 逆に言えば、そこしか行くところがない。


 馬車の列がヘブンズランドの街に到着するや否や、荷台から一斉に飛び出す少女達。

 中には乗り物酔いで苦しそうな少女も多数いるが、そんな少女らも皆に抱えられて地面に降り立った。


 そして思い思いのグループに分かれて街中へと消えて行く。


 しかし一つのグループだけがここにまだいた。


 その中でも特に元気な猫少女、周囲からはミイニャと呼ばれている。


「美味しいもの食べまくるにゃ!」


 そう言って大きく両手を空に伸ばしている。

 それに対して栗毛の毛並みのウサ耳少女が答える。

 この小隊の中でもかなり小柄な部類のウサギ族の獣人である。


「私は耳にピアスつけるんだ~」


 どうやら長いウサギのような耳に穴を空けてアクセサリーを付けたいらしい。

 この獣人少女はサリサと言い、皆にはサリダンという愛称で呼ばれている。


「サリダン、ガチで言ってるの?」


 心配そうにそう言ったのはアカサと呼ばれているヒューマン少女。


「当り前じゃん。私、決心したから。今日こそはピアスつけるの」


「前もそんなこと言ってて、耳に穴を空ける道具見て、脱兎のごとく逃げ出したじゃ~ん」


 少女達から笑いが漏れる。

 するとサリダンは明後日の方へ視線を移して言った。


「あ、あの時は調子が悪かったから……きょ、今日はきっと大丈夫よ」


 サリダンの決心は固いようだ。

 たぶん……


 そこでアカサは話を別の少女に向けた。

 一見お嬢様風の外見の金髪ヒューマン少女にだ。

 美少女といっても過言ではない、美しい顔立ちをしている。


「ねえねえ、金メッケはどうするの?」


 すると金メッケと呼ばれた少女、本名メイケはうつむき加減でぼそっと言った。


「……私、ボ、ボルフ隊長に……お土産を――」


 言い終わらない内にアカサが叫び出した。


「ああああ、ずっる~い。自分だけそんなもん買おうとしてたんだ~。じゃあ、私も買おうっと」


 思春期の少女達らしい会話であった。

 しかし、また別の少女が口を開く。


「剣を研いでもらいたいんだけどさ、鍛冶屋はあるのかな。ついでに珍しい剣とか見てみたいかな」

 

 そう言ったのは呪符が掛かっているらしい武器を手に、刃こぼれを気にするヒューマン少女。

 ラムラという名前らしい。


 そのラムラの願望を否定する意見が出る。


「……ラムラ、それって……無理かも」


 金メッケだ。

 

「無理って何?」


「……呪符の武器、扱うの……魔法道具屋だって、聞いた……ことある」


「えええ、マジか。そんなのもっとでっかい街へ行かないとダメな奴じゃん」


 残念ながらこの辺境の街には、魔法道具屋なんてしゃれた店などない。

 あるのは鍛冶屋や武器防具屋だ。


「みんな何してるにゃ、こんなとこで時間がもったいないにゃ。早く行くにゃ」


 ミイニャのこの一言で「それもそうだね」と少女達は歩き出した。

 歩きながらサリサが言う。


「たまに真面な事言うよね、ミイニャって」


 するとアカサがそれに追随する。


「そう、そう、普通のアホじゃないよね。なんていうか、捻りの効いたアホってうの?」


「それって褒めてるにゃ?」


 一同大爆笑だった。


 このミイニャ、ラムラ、サリサ、アカサ、メイケの五人で休暇中は行動するらしい。

 五人は少女クロスボウ部隊の初期メンバーである。




 街に到着すると早速お目当ての場所へと急ぐ。

 お目当ての内のひとつの闘技場である。

 もちろん領主公認の闘技場で、魔物同士の対戦や人対魔物の戦いを見せる場所だ。

 その闘技場で試合がある時は露店が多数出店するので、それらも彼女らのお目当てでもあった。


 すでに両手に蒸したガジャイモと、焼きモロコスを手にしているのはミイニャである。

 それを交互に頬張ほおばりつつ、小走りで闘技場の中へと入って行く。


「ね、ね、どっちに賭ける?」

「ええ~、どうしようっかな~」

「どう見てもこっちが勝つに決まってるだろ」

「……私、こっち」

「こっちはマズそうにゃ」


 どうやら闘技場での勝者を当てる賭けの闘技券を買うらしい。

 試合はミノタウロス対ヒルジャイアントだ。

 

 少女達達は結局ヒルジャイアントに賭けた。

 だがミイニャただ一人、ミノタウロスに賭けるようだ。


「あのミノタウロス、マズそうだけどヒルジャイアントよりはましそうにゃ。だから勝つにゃ」


 と、良くわからない理由でミノタウロスが勝つと思ったらしい。

 それより「旨いか、マズいか」の判断で全て決める事に誰も突っ込まない。

 慣れたものである。


 闘技場は二十メートル四方ほどの円形で、五メートルほどの高さの壁で囲まれ、その壁の上に客席が作られている。


 五人の少女達は一番手前の席に陣取ると、キャッキャ言いながら試合開始の合図を待つのだった。


 入場ゲートの鎖が引かれると、ガタンガタンと音を立てて頑丈そうな扉が開く。

 中から出て来たのは身長三メートルはあろうかというヒルジャイアント。

 防具は着けておらず腰巻だけ、手には木製の巨大な棍棒で金属のスパイクが幾つも打ち込まれている。


 反対のゲートからは、身長二メートルほどのミノタウロスが入場して来た。

 見た目は体のデカい牛系の獣人にも似ている。

 そして少し派手目の戦装束を身にまとい、両手持ちの戦斧を肩に担いでいる。


 闘技場の中央に近づくと、ミノタウロスが走り出す。

 戦斧は右腰側へ引いた構えだ。

 

 一方ヒルジャイアントは慌てることなく、ゆっくりとした動作で歩きながら棍棒を構える。


 すでに戦闘は始まっているのだ。


 二匹の魔物が交叉する。


 右腰からすくい上げる様に戦斧を振り上げるミノタウロス。


 それに対してヒルジャイアントは棍棒を前に突き出した。


 そのたった一振りで勝負はついてしまった。


 ヒルジャイアントの棍棒は空を切る。


 逆にミノタウロスの戦斧はヒルジャイアントの左脚を切り裂いたのだ。

 

 その一撃でヒルジャイアントはグラリとバランスを崩す。

 そしてドオッと砂埃を上げて倒れ込んだ。


 そうなってしまったら勝負は着いたも同然だ。


 観客から次々に「殺せ!」との歓声があがる。

 その声に応えるように、ミノタウロスが倒れて苦しむヒルジャイアントに近づく。


 ミノタウロスはヒルジャイアントの横で立ち止まると、その血で染まった戦斧を振り上げた。


 そして無情にも、必死に起き上がろうとするヒルジャイアントの首へと、その戦斧は振り下ろされた。


 そこで観客のボルテージは最高潮に達した。


 その時、少女達はこの盛り上がりに圧倒されていた。

 しかしその中で一人の少女がつぶやいた。


「ミノタウロスで牛すき鍋したいにゃ」


 それに対して他の少女達は沈黙で返したのだった。












始めは少女達の日常を書くつもりでしたが、ちょっと方向が変わってきました。

日常を書いてても面白くなかったので……


主人公は少女達です。


時系列が本編と違いますが気にせず読んでください。





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― 新着の感想 ―
[一言] 多分…ミノタウロスは美味しくないんじゃないかなぁ…
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