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色彩搾取の灰色世界で、不器用な魔女は鉄の騎士に命を捧ぐ 〜クロマティック・ウィッチ〜  作者: w.t.
16.5章:強欲の女王、盤上の蹂躙 

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第4節:崩れ行く黄金

私たちの指先が、同時に黄金の被膜に触れようとした、その時。


「――いい加減にしろ、このバカ共がッ!!」


ヴェールさんの怒声が、頭蓋の奥で反響しました。


彼はふらつく足取りで私の前に立ち、私と結晶の間に割り込みました。


彼は迷うことなく、抜いた短剣の柄で、リアの手を弾き飛ばしました。


バシィッ!


「あうっ……!?」


リアの瞳が揺れ、伸ばしかけた指先が、ほんの少しだけ引っ込みました。


同時に、ヴェールさんは私の肩を乱暴に掴み、平手打ちを食らわせました。


「ヴェールさん……邪魔を、しないでと言ったはずです」


私が冷たい視線を向けると、ヴェールさんは肩で息をしながら、汚れた手で自分の額を乱暴に拭いました。


彼の顔は、過剰な魔力にあてられて、いつにも増して土気色です。


けれど、その瞳だけは、この場で唯一「正気」の色をしていました。


「邪魔しなきゃ、お前ら二人揃って『色相』の化物バグに成り果てるんだよ! マシロ、その目を見ろ。鏡を見たことがあるか? 今のお前、あのクソったれな『執行官』どもと、同じ顔してやがるぞ!」


「『奪う』のは、俺みたいなゴミクズの仕事だ。……お前がそれをやったら、アイゼン(あいつ)が戻ってきたとき、どんな顔して迎えればいいのか分かってんのか!」


アイゼン。


その名前を呼ばれた瞬間、私の右腕の拍動が、一瞬だけ止まりました。


その名前は、血を流しすぎて冷え切った私の心臓に、無理やり火を灯す呪文のようでした。


「……っ。アイゼン、は……」


右腕の拍動が、不気味に静まり返ります。


視界を染めていたどす黒い赤が、ゆっくりと引いていきました。


私は自分の指先を見つめ、それから震えるリアを見ました。


私の魔力にあてられ、命を吸うことに恍惚としていた彼女の瞳が、今は恐怖に凍りついています。


(私は、何を……)


危うく、私は自分を「モノ」として扱った男たちと同じになるところでした。


いいえ、それ以上に醜い、カルミナと同じ「支配者」に。


「ヴェールさん、どいてください。……これは、私が終わらせます」


私は、今度は「赤」ではなく、自分自身の意志を込めて右手を伸ばしました。


リアの黄金(血統)が形を許し、私の選択「器の意志」。


その二つが揃い触れることを許した瞬間、脈打つ黄金の結晶は、牙を剥くのをやめ、吸い込まれるように私の掌へと収まりました。


ズズズ……ッ!


直後、供給源を失ったカジノの装置が火を噴き、建物全体が地鳴りを立てて崩落を始めます。


「あ、ああ……私の城が……!」


瓦礫の中で、(ハル)がへたり込んでいました。


極彩色の着物は汚れ、自慢の扇子は折れています。


彼は崩れ落ちる黄金の天井を見上げ、引きつった笑いを漏らしました。


「ハハ……。とんだジョーカーを引かされたもんだ。……全部チップ(命)に変えてでも奪い取る、か。まさか本当にやりやがるとはねえ……」


その姿は、強欲の果てに残る虚無そのでした。


「おい、感傷に浸ってる暇はねえぞ! ハル(あいつ)は放っておけ、逃げるぞ!」


ヴェールさんがリアを抱き上げ、私の腕を掴みました。


私たちは崩れ落ちる「強欲」の瓦礫を背に、闇の中へと駆け出しました。

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