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色彩搾取の灰色世界で、不器用な魔女は鉄の騎士に命を捧ぐ 〜クロマティック・ウィッチ〜  作者: w.t.
16.5章:強欲の女王、盤上の蹂躙 

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第2節:二つの至宝

まばゆい光が、私の閉じた瞼を無理やりこじ開けました。


そこは、地下都市の欲望を煮詰めたような巨大なホールでした。


円形劇場のステージ。


私は黒い服を着た男たちによって、ゴミ袋のようにその中央へ放り出されました。


「……ぐ、ぅ……」


失血で霞む視界。指一本動かせない倦怠感。


けれど、強烈なスポットライトと、地鳴りのような歓声が、私を現実に引き戻します。


客席を埋め尽くすのは、仮面をつけた富豪たち。


彼らの視線は、ステージ上の「商品」に突き刺さっています。


私の目の前には、黄金の鳥籠がありました。


その中で、豪奢なドレスを着せられたリアが、膝を抱えて震えています。


「……マシロ、おねえ……ちゃん?」


リアが顔を上げ、私を見て泣きそうな声を上げました。


ボロボロのローブ。泥と血にまみれた姿。


助けに来たはずの私が、無様に転がされている。


「さあ、紳士淑女の諸君! 今夜のサプライズだ!」


(ハル)の声が、マイクを通して響き渡りました。


彼はステージの袖で、私の腕から抜き取ったばかりの「血液の入ったシリンダー」を掲げてみせました。


「まずは、この希少な魔女の血! 一滴で万病を癒し、若返らせる奇跡の霊薬だ。……だが、それだけじゃない」


ハルが扇子で私を指しました。


「この『器』そのものも、極上だと思わないかい?」


その言葉に、最前列にいた派手な服の男――おそらく大富豪の一人が、食い入るように身を乗り出しました。


男は、自分の指先が灰色に死にかけていることさえ忘れ、恍惚とした表情で私を指差しました。


「……待て。なんだ、そいつは。左右対称の完璧な骨格、陶器のような肌……。おい、ライトをもっとこいつに当てろ!」


パッ、と暴力的なまでの光が私を追加で射抜きました。


下卑た視線が、一斉に私をなめ回します。


「信じられん。あの銀髪のガキも極上だと思っていたが……こいつは別格だ。地下ここに流れてくるような代物じゃない。……地上の、それも色彩の塔の最上層に飾られていてもおかしくない『完成品』だぞ」


男の口角が、醜く吊り上がりました。


「予定変更だ! その血まみれの娘もセットにしろ。傷つけるなよ、その肌に一筋でも傷がついたら、お前らの命で償わせる。……銀と白。二つ揃えて『姉妹の女神』として競りにかける。これはオーラム・ヴァレー始まって以来の伝説になるぞ!」


客席から、地鳴りのような歓声と口笛が沸き起こりました。


彼らの目に映っている私は、もはや人間ですらない。ただの、高く売れる「ガラス細工」。


(……ああ。また、これだ)


血の気が引いた頭の中で、冷たい思考だけが研ぎ澄まされていきます。


どいつもこいつも。


私を、部品として、資源として、商品としてしか見ない。


私は、あなたたちの所有物じゃない。


私は、アイゼンの、アイゼンだけの――。


ゆらり。


私は、震える膝に力を込め、立ち上がりました。


「……いいですよ」


私は、ふっと微笑みました。


それは慈悲でも諦めでもなく、完膚なきまでに目の前のすべてを「否定」するための笑み。


「私を『商品』として扱いたいなら、どうぞ。……その代わり、その身に余る強欲ごと、皆様をまとめて灰にして差し上げます」


カルミナのように、いいえ――“母様”のように、私は淡々と告げました。

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