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色彩搾取の灰色世界で、不器用な魔女は鉄の騎士に命を捧ぐ 〜クロマティック・ウィッチ〜  作者: w.t.
16.5章:強欲の女王、盤上の蹂躙 

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第1節:鮮血の|回転盤《ルーレット》

カラカラカラ……。


乾いた音が、静まり返った貴賓室に響き渡ります。


回転するルーレット盤。象牙のボールが、数字のポケットを弾きながら踊っています。


「――黒の24」


(ハル)が、歌うような声で告げました。


私がチップを山積みにしていたのは、「赤」のエリアでした。


「おや残念。また外れだねえ」


ハルが指揮者のように指を振ると、黒服の男が私の腕に繋がれたチューブのコックを捻りました。


チュウウゥ……。


不快な音と共に、私の血管から鮮血が吸い上げられていきます 。


ガラスのシリンダーが赤く満たされ、それが目の前で「黒いチップ」へと変換され、ハルの手元へと回収されていきました。


「っ……う、ぅ……」


指先が痺れ、視界が白く明滅しました。


これで、何回連続で外したでしょうか。


チップ一枚につき、血液が小さいグラス1杯分抜かれていく。


すでに私の体からは、致死量に近い血液が失われていました。


寒い。骨の髄まで凍りつくように寒い 。


「おい、いい加減にしろ!」


たまらず、背後で見ていたヴェールさんが叫びました。


「イカサマだ! 今の玉の動き、ありえねぇだろ! 落ちる直前に軌道が曲がりやがった!」


「人聞きが悪いねえ」


ハルは扇子で口元を隠し、冷やかに笑いました。


「ここは私の城だよ? 重力も、運命も、すべてオーナーである私に従うのが『ルール』さ」


「てめぇ……!」


ヴェールさんが短剣に手をかけようとしますが、即座に黒服たちが銃口を突きつけます。


「やめて、ヴェールさん……」


私は震える声で制止しました。


テーブルに突っ伏したまま、霞む目でハルを睨み上げます。


分かっていました。最初から、まともな勝負になるはずがないことくらい。


それでも、座るしかなかった。


「……まだ、です。まだ血は……残って、ます」


「マシロ、もうやめろ! それ以上抜かれたらショック死するぞ!」


「やめません……! リアを、返すまでは……」


私は残ったチップ――私の命の残りカスを、震える手で掴みました。


けれど、指に力が入らず、チップがカチャリと床に転がり落ちました。


「あ……」


それを拾おうとして、私の体もバランスを崩し、椅子から転げ落ちました。


床の冷たさが、頬に張り付きます。


起き上がろうとしても、手足が鉛のように重くて動かない。


「……そこまでだね」


ハルが、コツ、コツ、とヒールの音を響かせて近づいてきました。


彼は床に這いつくばる私を見下ろし、陶酔したような表情で頬を染めました。


「美しいねえ……。血を失って透き通るような肌。虚ろな瞳。今のあんたは、最高に『壊れかけ』でそそるよ」


ハルの指先が、私の顎をすくい上げました。


「チップは尽きた。……さあ、契約履行の時間だ。その身体で払ってもらおうか」


「……っ、はな、して……」


「連れて行きな。ちょうど、階下のホールで競売オークションが始まるところだ。『黄金の瞳』の隣に、この『魔女の残骸』を並べるとしよう。……セット売りなら、さらに値が跳ね上がるはずだ」


ハルが指を鳴らすと、黒服たちが私を乱暴に引き起こしました。


抵抗する力はありません。


ヴェールさんが叫ぶ声が聞こえましたが、鈍い打撃音と共に途切れました。


(ああ……だめ……)


意識が遠のく中、私はズルズルと引きずられていきました。


光溢れる、地獄のステージへと。

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